「マーケティングとは、何をするものか?」と質問すると、色々な答えが返ってきます。
その中で一番多いのが、「販売促進やプロモーション」という答え。
実は、「マーケティング=プロモーション」と考えるところに、多くの日本企業の問題が現れています。これは「大量生産・大量販売」が有効だった、20〜30年間前までの高度成長期の考え方だからです。
かつてはいいものを作れば、売れました。
経済は成長していたので、需要増に追いつくことが課題でした。
大きな需要があり、ニーズも「より豊かにより多く」とシンプルだったので、いいモノを作れば売れたのです。
成功の方程式は、「顧客」に、「いいモノ」を、「確実に伝える」ことでした。
だから課題は、「『いいモノである』ということを、いかに潜在顧客に知ってもらうか?」
「マーケティング=プロモーション」と考えるのは、この時代の名残りです。
しかし今はいいモノを作っても、売れません。
経済は低成長で、需要はなかなか増えません。
技術進化で、多くの商品は必要十分な品質を持っています。
顧客はますます力を持っています。顧客の期待は高まる一方で、ニーズを満たすだけでは商品は買いません。
こんな状態で昔どおりに、「顧客」に、「いいモノ」を、「確実に伝え」ようと考えてプロモーション活動に大金を投じても、成果は微々たるものにしかならないのです。
ではどうするか?
「顧客づくり」が必要なのです。言い換えれば、「顧客が買う理由」を創造することです。
「マーケティング=プロモーション」ではなく、「マーケティング=顧客の価値を創造し、買う理由を作ること」なのです。
そして商品を求めている顧客への「プロモーション」ではなく、より賢くなった顧客との「コミュニケーション」をいかにキッチリ行い、顧客にファンになってもらうかが大切なのです。
マーケティングはプロモーションではなく、企業の目指すべき方向を指し示し、組織や製品を大きく変えるものなのです。
言い換えれば、マーケティングは、企業の販売促進部門や宣伝部門に任せればいいものではありません。
会社全体で考えていくべきものなのです。
最近私は、企業で営業の最前線にいるセールスの皆様や、研究開発部門のエンジニアの皆様に、マーケティング研修を行う機会を多くいただきます。まさに社員全員で考えるべきなのが、マーケティングなのです。この重要性をわかっている企業は、真摯に全社的な取り組みをしておられます。
企業は事業を通して社会に貢献するために存在します。だからこそこの大切なマーケティングの考え方を社員一人一人が理解し、企業活動にもっと定着すれば、企業だけではなく、社会もよりよくなるはずです。