「新しいことをやるにも、そんな人がいないよ」
「そもそも、スキルがないし」
「だいたい、失敗した場合に責任が取れるのか?」
こんな話をよく聞きます。
確かに組織やチームを預かる立場では、今の仕事をそのチームで回すだけでも精一杯。今の仕事だけでも大変なのに、その上で新しいことに挑戦なんて、ムリと思いがちです。
しかしお客さんも市場も、凄いスピードで変わり続けています。こんな状況で最大のリスクは、何も変わらないために、自分たちが取り残されて、賞味期限を起こしてしまうこと。いまや「リスクを取らないこと」が最大のリスクなのです。
たとえば馬車全盛期、自動車が生まれました。「当社の本業は馬車だ」と変化を拒んだ会社は急速に消滅しました。
写真フィルム全盛期にデジカメが生まれました。売上・利益の6割超を写真フィルムに依存してた富士フイルムは、変化を受け容れ、新たな挑戦をし、今も成長しています。一方で写真フィルム事業から脱却できなかった会社は消滅しました。
新しいことに挑戦しない限り、組織そのものが消滅してしまう時代なのです。
新しい挑戦には、必ずリスクはつきものです。
もしリスクがないとしたら、それは挑戦でも何でもありません。
何も挑戦しない段階でリスクばかりを議論し、ひたすらリスクを回避し続けていたら、新しいものは何も生み出せないし、ましては新しい価値なんて創れません。
だから真っ先に考えるべきは、まず「何もしない、やらない」「変わらない」という選択肢を捨てること。
そして「変わる」「新しいことをやる」と決めた上で、挑戦することです。
そして「こうすれば上手くいくのではないか?」という仮説を立てて、挑戦しながらその仮説を検証し、その仮説が間違っていたら、即座に仮説を修正すること。
「リスクマネジメント」という言葉があります。「リスクを徹底的に避ける」という意味に捉える方が多いのですが、本来はリスクを回避するのではなく管理するのが、リスクマネジメントです。新しいことに挑戦してリスクに出会ったら、それを避けるのではなく、正面から取り組み管理することで対応すべきなのです。
たとえば、「日本一の星空ツアー」で有名な阿智村で、拙著「そうだ、星を売ろう」で紹介しなかったエピソードがあります。
当初、「真っ暗な中でお客さんを連れて行くなってリスクだ」という声が多かったそうです。しかし実際にはそれ自体はライトアップを徹底する等で対応可能でした。実は誰も気がつかなかった最大のリスクは、雷でした。阿智村は雷多発地域。星空ツアーは真っ暗な中、15分ロープウェイで移動します。ロープウェイに落雷すると、ロープウェイは停止します。こういう状況になると乗客はパニックを起こすかもしれません。つまり真っ暗な中で乗客を乗せたまま、ロープウェイが落雷で停止するのが、最大のリスクだったのです。そこで阿智村は、雷発生30分前に雷を探知するシステムを整備し、雷を探知したらすぐに客を乗せるのを止め、すべての客が降りたらロープウェイを停止させるようにしました。つまりリスクは自分の管理下に置く。これがリスク管理の考え方です。
仮説を検証し続けて進化させ、そこで発生するリスクも管理し続けることが、学びの集積となり、それ自身が大きな差別化になるのです。
まず、「やる!」と決める。
そして、仮説を作る。
そして、その仮説を検証し続けるのです。
まずその一歩を踏み出せば、色々なことが変わってくるはずです。
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