「顧客囲い込み戦略」は、賞味期限が切れている


多くの企業が、いかにお客様を囲い込むかを考えてきました。

しかし「顧客囲い込み戦略は、既に賞味期限が切れつつある」というのが、私の実感です。

 

 

たとえば航空会社や家電量販店のポイントプログラムは、登場当初はライバルを大きく差別化し、顧客囲い込みに絶大な威力を発揮しました。

しかし「ポイントプログラムは儲かる」とわかったライバルも次々と参入してきました。その結果、お客様の選択肢は増えていきました。実際に私も、ビックカメラ、ヨドバシカメラなど、様々な量販店のポイントカードを持っていて、その都度使い分けています。

こうなると、ポイントプログラムによる差別化は難しくなってきます。そこで一部の企業は、より高いポイントを付けることで差別化を図ろうとしています。これは値引き合戦そのもので、体力を消耗させていきます。

また研究によると、ポイントプログラムで実際に「ご贔屓」になる顧客は、意外と少ないこともわかり始めています。一方でポイントプログラムで溜まるポイントはいつかは商品購入で使われるわけで、企業にとってお客様に対する負債(=借金)です。この負債額は、ポイントプログラムで成功している企業ほど膨大な金額にのぼっています。

このために、ポイントプログラムそのものを見直す企業も出始めています。

 

同様に多くの業界で、顧客囲い込みのビジネスモデルの賞味期限が切れつつあります。

銀行のATMは、1台で車が買えるほど高価なもの。しかし多くの銀行は、自社ATMを何百台・何千台も展開してきました。預金者囲い込みのためです。自社ATM大量展開で預金者を集め、預金を獲得することが、銀行の勝ちパターンだったのです。しかしマイナス金利の影響で、今や銀行は集めた預金が収益を生めなくなり、苦しんでいます。

新生銀行は当初自社ATMを380台展開していましたが、セブン銀行と提携してATM運用を委託するようになり、ついに先日、本店の自社ATMも撤去しゼロにしました。新生銀行のATM使用料はタダですが、セブン銀行への委託手数料を払っても、自社で持つよりもコストが安くなるそうです。

かつては銀行の勝ちパターンだった「自社ATMで預金者を囲い込み、預金を集めて、収益を生み出す」というビジネスモデルも、既に賞味期限が切れているのです。

 

いまのお客様には色々な選択肢を持ち、それらを自由に選ぶことができます。そんな移り気なお客様を仕組みで囲い込もうとすること自体に、ちょっと無理がありそうです。

こちらが「仕組みで顧客を囲い込もう」と思っても、お客様は「でも、私は自由でいたいし…」と思っているのです。

そもそもあらゆるものに、賞味期限があります。かつては脚光を浴びていた顧客囲い込み戦略も、既に賞味期限が切れつつある、ということなのでしょう。

必要なことは、仕組みでお客様を囲い込んでつなぎ止めるのではなく、お客様の方が常に「ぜひここにしたい」と思っていただけるように、日々魅力的であり続けること。

常にお客様にとっての価値を高め続け、新たな「お客様が買う理由」を創り続けることが必要なのです。

 

 

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