10年ほど前に、前職でマーケティングマネージャーの仕事をしていた頃のこと。
当時の私は、社内の各事業部で策定したマーケティング戦略について、相談を受けていました。
その日も、ある事業部のマーケティング担当から、事業戦略の説明を受けました。
時間枠は30分。まず市場状況について15分。そしてその分析でもう15分話しています。
結局、数分オーバーで話を終えました。
私は質問しました。
「市場の状況と分析はよくわかりました。有り難うございました。ところで、あなたの戦略はどうなっているのでしょう?」
こう質問すると、話し終えたばかりのマーケティング担当がやや気色ばみ、(ちゃんと聞いていたんですか?)と言いたそうに、こう答えました。
「たったいま、お話しした通りですけど」
これは「分析麻痺症候群」と言われるものです。「市場のことは、完璧に理解しよう」と考えるあまり、膨大な時間を費やして情報を探しまくり、分析し、市場で何が起こっているかを把握しようとするのです。しかしそこでタイムオーバー。
本来必要なのは、「何をやるか?」です。
この人は「何をやるか?」を考えていないのです。
もし市場調査担当であれば、これは立派な仕事ですが、マーケティング戦略を策定する立場であれば、厳しい言い方になりますが、これでは何も仕事をしていないことになります。
お恥ずかしい話ですが、実はかく言う私も、マーケティングマネージャーの仕事を始めた頃は、この「分析麻痺症候群」に罹っていたことがあります。数週間かけて膨大なデータを入手し、分析するのですが、その先の「何をするか?」まで手も頭も回らないのです。
しかし本来の仕事は、分析ではありません。
本来の仕事は、戦略を立てて、実行し、成果を出すことです。
現代では、市場分析はすっ飛ばして、いきなり戦略を立てて、実行から学んでいくことが求められることすらあるのです。
分析し始めると、どんどんと深みに入るものです。
分析は分析で大切ですが、分析の泥沼には気をつけたいものです。
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