先週日曜(2022/9/4)の日本経済新聞に、こんな記事がありました。
『「顔ダニ」、人間の一部に 絶滅危機回避、共生へ進化中』
なかなかショッキングな記事です。簡単に内容を紹介しますと…。
実は私たちの顔には「顔ダニ」が住んでいます。図のように、生息地は人間の毛穴。大きさ0.3ミリ。細胞の数はわずか900個。あの小さなショウジョウバエでもこの500倍ありますから、とてもシンプルな生き物です。
この顔ダニ、最小限のゲノム(遺伝子情報)しか持っていません。そもそも生き抜くための重要な遺伝子を欠いています。
なぜかというと、地上で最強生物・人間の顔での生活では、外敵がいないからです。敵は人間が追い払ってくれます。加えて食料である人間の皮脂は豊富。そこで顔ダニは、使わない遺伝子は次々と手放してしまいました。
日光で目覚める遺伝子もないし、夜の活動に必要なメラトニンも作れません。寄生先の人から拝借すればこと足りるからです。
こうして顔ダニは、人の顔という最高の生存環境に最適化していきました。進化というべきか、退化というべきか、なんとも微妙です。快適で外敵のいない環境だと、生物はどんどん退化していくのですね。
でも人間が絶滅した瞬間、顔ダニは人間の顔の外では生きられませんから、絶滅してしまいます。
なんか、色々と考えさせられます。
まず、こんな会社、時々見かけますよね。政府などの規制で守られていて、ほとんど競争がない業界は、日本にはまだ数多く残っています。こんな会社は、外敵がほとんどいない環境に最適化しています。
だから規制撤廃は、自分たちの生死がかかるわけで、強硬に反対します。
しかし世の中は全体として、常に規制緩和の方向に進んでいます。規制がなくなった瞬間、未経験の激烈な競争に晒され、たいへんなことになります。
競争が厳しい業界ほどエクセレントカンパニーが多いのも、同じことですね。厳しい競争環境では、エクセレントカンパニーに進化しない限り、生き残れません。
さて、御社の環境はどちらでしょうか?
一方で勤務先に最適化した会社員も、よく見かけます。その会社の中だけで通用する作法は完璧に身についているのですが、社外で汎用的に通じるスキルは皆無という方です。このような方は、いまの勤務先がなくなったり、色々な事情で勤務先から離れると、途端に困るわけです。
顔ダニの生き様から、考えさせられます。
ところでこの記事、読んでいるとちょっと顔がムズムズしてきますね。
■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。