映画「シン・仮面ライダー」がヒット中ですね。
そのオリジナルが、1971年にテレビ放送された「仮面ライダー」。
当時小学生3年生の私は、本郷猛が変身する仮面ライダー1号と、一文字隼人が変身する仮面ライダー2号に夢中。この世代の男の子たちはほぼ例外なく、何かあるとみな「ヘンシン」と言いながら変身ポーズをしていました。
仮面ライダーが大ヒットした要因はいくつかありますが、個人的には、この「変身ポーズ」とライダー1号・2号の存在だと思います。
しかしこの「変身ポーズ」と1号と2号、当初の設定にはありませんでした。
大トラブルの末に編み出された、実は苦肉の策だったのです。
まず仮面ライダー制作が決定した時点で、2号の設定はありませんでした。
本郷猛(1号)を「藤岡弘、」さん(当時は「藤岡弘」さん)が演じる設定でした。
しかし放送前の第9話・10話の撮影中、オートバイの転倒による大事故で、藤岡さんはなんと全治3〜6ヶ月の重傷を負い、その後の撮影ができなくなりました。
未完成分はすでに撮影済の映像でなんとか繋いだものの、その後の話が続きません。そこで色々な案が出されました。
①本郷猛を、交代させる
②本郷猛は、死んだ設定にする
③いっそのこと、仮面ライダーを巨大化させてしまう
結局「子供たちの夢を潰すのはよくない」「(当時、再起不能と言われていた)藤岡さんの復活を待とう」ということになり、本郷猛は海外のショッカー支部との戦いに赴くことになり、後を継ぐ者として、一文字隼人の仮面ライダー2号が登場する設定になりました。
ちなみに一文字隼人役の候補には三浦友和さんも選ばれたのですが、三浦さんの所属事務所が断り、藤岡さんと同じ劇団に所属する佐々木剛さんが演じることになりました。
また当初、藤岡弘さん演じる本郷猛は、仮面ライダー1号に変身する時はバイクで加速し、その風をベルトで受けて、仮面ライダーに変身する設定でした。
しかし2号を演じることになった佐々木さんは、バイクの免許を持っていませんでした。これでは「バイクで加速して変身」ができません。
そこで編み出されたのが、あの手を大きく回す変身ポーズ。
これが社会現象になって、日本中の子供たちが変身ポーズをやるようになりました。こうして小学4年生だった私も、変身ポーズをやっていたわけです。
自分が仮面ライダーのプロデューサーで、主役の藤岡さんが事故で半年入院とか、代役がバイク乗れないという事態に直面することを想像するだけで、思わず頭を抱えたくなります。恐らく当時の製作陣も全く同じだったのではないでしょうか?
こんな時、「ヤバいなぁ。どう考えてもコレ、詰んでいるよね」と思いがちです。
しかしこんな時こそ、知恵の出しどころ。諦めなければ、解決策があるのですね。
「危機は、飛躍のチャンスになりうる」ということを、仮面ライダーのプロジェクトは教えてくれます。
■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。