新聞で私がよく読むのが、お悩み相談コーナー。
「こんな悩みがあるのか」という驚きがあったり、回答される方の深い洞察に唸ったりして、新しい発見の宝庫です。
先日読んだ新聞で、30代女性のこんなお悩みがありました。
「父親と絶交すべきか、悩んでいます」
相談者さん曰く、実家に帰る度に「早く結婚しろ」と言われ、親戚の集まりでも晒し者になってつくづく嫌になった。そのうち殴って黙らせてしまうかもしれない。その前に絶交した方がいいかも、というご相談でした。
私も結婚は遅かったのですが、結婚する前は、同僚・上司・親戚・友人とあらゆる周囲の人々から…
「早く結婚しなきゃね」
「なんで結婚しないの?」
「なんか信念でもあるの?」
「異性へのアピールが足りないんじゃないの? 地味だしね」
と言われ続けました。
皆さん例外なく「あなたのために親身に思って言っているですよ」とおっしゃるのですが、私は言われるたびに内心で(放っておいてください〜)と思っていたので、とても共感します。
最近、やっとこれがハラスメントとして認知されるようになりました。つくづく、いい世の中になったと思います。
さて、そこでこの相談者さんのお悩みです。
一見よくある光景ですが、根深いですね。
父親は娘の幸せを願っています。
しかし「女性の幸せは結婚しかない」と信じ込んでいます。
そして娘のことを理解しようとしていません。
一方で、この相談者さんのお悩み相談からは「父親に自分を理解してもらいたい」という心の叫びが聞こえてきます。
ではそもそも、私たちは他人を理解できるのでしょうか?
「他人を理解しましょう」とよく言われますが、家族といってもしょせん他人です。いつも一緒にいる夫婦だって、しょせん他人です。
相手のことを理解する努力は、必要です。
でも相手のことを100%理解するなんて、絶対にできません。
なにしろ、自分のことだって100%理解できている人は、まずいません。
他人なら尚更ですね。
問題は、本当はあまり理解できていないのに、「私はこの人のことをよく理解できている」と考えてしまうことです。
たとえば「うちのチームの部下のことは、よく理解できている。だから発破をかけている」というマネジャーは、その典型です。
ワンオンワンをどんなに頻繁にやっても、部下を100%理解することなんて不可能です。
ではワンオンワンは意味がないかというと、全く違います。
100%理解はできませんが、理解しようと努力することはとても大事なのです。
こう考えると、相談者さんの本当の悩みは
「父親が、私のことを理解しようと努力してくれない」
ということなのでしょう。
一方で問題は、この相談者さんが父親のことをどれくらい理解しようとしているか、ということです。
「自分を理解して欲しい」というだけで、父親のことを理解しようとしていないとしていたら、実は父親とあまり変わらないのかもしれません。
この相談者さんと父親が
「実は自分は、この人のことを全く分かっていないのではないか」
と認識した時に、本当の関係修復が始まるのだと思います。
あなたは、あなたの周囲の人をどの程度わかっているでしょうか?
そして、理解するためにどんなことをしているでしょうか?
■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。