ある会社が、南太平洋の孤島に社員を派遣しました。
一人目の使者は、ご用聞き。彼はこのように報告してきました。
「島の人間は靴を履きません。市場はありません」
会社はさらに使者を送りました。二人目の使者はセールス。彼は、このように報告してきました。
「島の人間は靴を履いていません。もの凄い市場がありますよ!」
そして会社はさらに使者を送りました。三人目の使者はマーケター。彼は、このように報告してきました。
『島の人間は靴を履いていません。そのため彼らの足は傷つき、痣もできています。部族長に「靴を履けば足の悩みから解放される」と説明したところ、もの凄く乗り気でした』①
『1足1,000円なら「島民10万人の7割が買う」とのことです』②
『初年度は口コミで2,000足売ります。全コストは600円なので、初年度売上は200万円で利益80万円。営業利益率40%です。 その後は販促を強化、5年で累計7万足、売上7000万円、利益2800万円です』③
『近隣の島々の市場規模は10倍、売上7億円です』④
『他社がいない今がチャンス。参入しましょう』⑤
3人が見ているのは、まったく同じ南太平洋の孤島です。しかし三人目の「マーケター」は、一人目の「御用聞き」、二人目の「セールス」とは違うモノが見えていることが、おわかりになりますでしょうか?
①は、現場目線の市場分析、顧客ニーズ。
②は、市場規模把握。
③は、事業の規模感。
④は、将来のビジネス機会。
⑤は、経営陣への提案です。
そしてこのマーケターのように見て考える力は、決して才能やセンスの問題ではありません。スキルの問題です。
そしてスキルの問題ですから、学べば身につけることができます。
私が永井経営塾や企業研修を行っているのも、日本のビジネスパーソンに大きく欠けていて、早急に学ぶべき最優先スキルが、マーケタースキルだからです。
そしてマーケタースキルの本質は、新たな価値を創り出すことです。
「日本は技術大国」と言われて久しいですが、世界全体で見ると、米国には追いつけず、アジアの各国に次々と抜かれています。国民一人当たりGDPも国民所得も下がり続けています。
この大きな原因の一つが、マーケター・スキルがないがために、新たな価値を創り出せないことです。
日本のあらよる職種のビジネスパーソンがマーケタースキルを身につければ、日本が本来持っている力を解放でき、日本は大きく成長できるはずです。
マーケティングを、学びましょう。
(なお上記の事例は、フィリップ・コトラー著「コトラーのマーケティング・コンセプト」(p.207)の内容を、わかりやすく修正したものです。ご興味ある方はぜひご一読を)
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