
1990年、日本はバブルに沸きました。そしてバブルが盛大に弾けた後、多くの日本企業は「3つの過剰」を抱えていることに気付きました。
雇用の過剰…人が余っていました
設備の過剰…設備投資をやり過ぎました
債務の過剰…借金も一気に膨れました
日本企業は一転、コスト削減に突き進みました。
「仕入れ業者から徹底的に値切れ」
「昇給は凍結」
「パートは最低賃金」
しまいには
「メモは、使用済みコピー用紙の裏を使え」
「社内用の封筒も、使用済み封筒を再利用しろ」
こうしたケチケチ経費削減作戦が続いて日本経済は縮み続け、「失われた30年」で日本は貧しくなりました。
いまや日本では平均年収400〜500万円。その給与レンジの寿司職人が米国に行くと、年収2000〜3000万円稼げる、と言われています。
「ムダが多過ぎたんだ。仕方ないじゃん。他に方法なかったでしょ」
こう思うかもしれませんが、私はちょっと違う意見です。
ビジネスでは、コスト削減は常に必要です。しかしそれは、場当たり的でケチケチした経費削減を続けることではありません。
使用済みコピー用紙や封筒を捨てるのは確かにもったいないかもしれませんが、1枚数円の紙の節約に数分間の手間をかけることで、社内コストもかかります。仮に節約できても微々たるもの。
戦略的に、企業のコストを下げる方法を考えべきです。
でも「戦略的にコストを下げるって、どういうこと」と思ってしまいますよね。
経営学者マイケル・ポーターは1980年代に提唱した競争戦略で、その方法を具体的に示しています。いくつか紹介しましょう。
①規模の経済性を実現し、規模の非経済性に対処する
家賃20万円のパン屋で毎月2,000個のパンを作れば、パン1個あたりの家賃コストは100円です。そこで店長とスタッフが頑張って10,000個を作れば家賃コストは20円。8割のコスト削減です。こうしてキャパシティを最大限に引き出せる規模にしてコストを下げるのが「規模の経済性」です。
しかしこれに味を占め、「もっと作ればコストが下がる」と考えて、高給でパンを焼かないマネジャーを雇ってスタッフを管理させると、ムダな管理業務が増え、スタッフのモチベーションも低下して、効率性は落ちます。
こうして規模が大き過ぎて管理コストが増えてモチベーション低下などで効率が落ちるのが「規模の非経済性」です。
規模の非経済性は、大企業もよく見かけます。
中小企業が1日で決める案件に、大企業が数ヶ月間かけたりします。実はプロジェクトの遅れで、機会損失などの莫大なコストが発生しているのですが、多くの会社員はあまり気付いていません。
規模は大きすぎてもいけないのです。コピー用紙再利用を指示するヒマがあるのなら、もっと権限委譲してムダな管理コストを廃止し、適切な規模で業務に集中できるようにするべきです。
②習熟度を上げる
あなたは何かの作業を最初にした時と、10回目と100回目を比べると、100回目の方がより短時間で高品質な作業ができるはずです。習熟度が上がった結果です。
難しい大型案件を鮮やかに獲得する熟練セールスマンは、最初からデキるセールスマンだったのではなく、若手時代に初歩的な失敗や試行錯誤で学習を積み重ねた結果、今のスキルがあるのです。
トヨタも、トヨタ生産方式で現場で愚直な学びを積み重ね続けた結果、クルマ業界で世界一の生産性を実現しました。
このように、常に自社ならではの習熟度が上がり続ける仕組みを作ることで、全社のコストは下がります。
③様々な社内活動を繋げる
社内で別々にやっていた活動を繋げることで、全体のコストを下げられることがあります。
たとえば家具のIKEAは、顧客が自分で家具を組み立てられるように製品を設計することで、製造と流通のコストを下げました。
こうして社内の別々の活動を繋げてコストを下げられないかを、常に検討すべきです。
④ライバルとは異なる仕組みを作る
お客様に最適化して、新たなビジネスの仕組みを作れば、劇的にコストを下げられます。
通常のフィトネスクラブは、受付係や店舗スタッフがいて、着替え室、鍵付きロッカー、シャワーがあります。そこでチョコザップは「ちょこっと運動したい人たち」に特化し、普段着で運動できるようにして、スマホ認証による入店管理とAI監視カメラで無人店舗でも安全を確保して、低コストで店舗を運営できるようにしています。
場当たり的でケチケチした経費削減に頼らなくても、戦略的に考えてコスト削減を行うことで、大幅なコスト削減を実現できるのです。
確かに地道な経費削減は大切です。しかし戦略的にコストを削減する方法をまったく考えずに、ひたすら現場にケチケチ経費削減作戦を強いるだけなのは、問題ですよね。
ケチケチ経費削減だけに頼らず、戦略的にコストを削減しましょう。
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