「安くなるかも…」→事業撤退した事例


価格戦略が一貫していることって、非常に大切ですね。最近、価格戦略の失敗が事業の失敗に繋がる、という事例を経験しました。

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私の家族が、ある海外の衣料ブランドをとても気に入っていました。品質もデザインも良いモノでした。

このブランドはデパート等の直営店で売っていましたが、一点だけ、とても気になることがありました。

価格が一貫していない、ということです。

例えば、ある直営店で正価で買った同じ日に、別の店で全く同じ商品が7割引で売られていることもありました。意外だったのは、アウトレットものではなくシーズンもので、かつ正規店だったことです。

こういうことがあると、どんなによい商品でも「買ってよかった」とは思えなくなります。「実は他の店でもっと安く売っているのではないか?」と考えてしまい、正価で商品を買う気持ちが起こらなくなってしまいます。

最近、このブランドは日本から撤退してしまいました。

魅力的な他ブランドが上陸し市場の競争が激化した、等、色々と事情があると思いますが、顧客の立場で考えると、ブランドの価格戦略が一貫していなかったのは大きな原因の一つだったのではないかと想像しています。

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恐らく各直営店舗では、仕入れ値と売れ行きをじっくりと考慮して、その店の判断で個別商品の値下げを行っているのでしょう。つまり、「局所最適」ですね。

しかし、直営店全体で統一した価格戦略を持ち、同一商品は同一価格とすべきだったのではないでしょうか?つまり、ブランド全体で「全体最適」が必要だったのではないかと思います。

例えば、「この店は時々大幅な安売りをする」と分かれば、価格に敏感な消費者(=バーゲンハンター)は買い控えて安い時期のみを狙って購入するようになります。こうすると、通常価格の期間はあまり売れずに、値下げした時期のみ売上が上がる、という悪循環になりかねません。

従って、商品の品質がよいのであれば出来るだけ価格は下げないようにし、消費者もある程度高い価格でも安心して購入できるようにすべきです。(品質が高く、消費者が高価格を受け入れることが条件ですが)

一見逆の路線であるウォルマートのようなEDLP (Every Day Low Price)戦略、つまり常に一番安い価格で提供する、というのも、実はこの考え方に沿って行われています。

「単なる安売り」で利益が低いと思われがちですが、消費者から見ると常に一番安い価格で販売しているので買い控えをすることもなく安心して購入できます。実は単品当たりの利益が1/2でも4倍売ることで利益が2倍になる高収益のビジネスプロセスなのです。

但し、過当競争の危険性が常に付きまといますので、コスト削減のために徹底したビジネスプロセス見直しを行うことが、戦略のもう一方の片輪になります。ウォルマートがRFID等の新規技術を真っ先に展開することで他社に先駆けてさらなるコスト削減を図っているのも、このためです。

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「たかが価格、されど価格」、まさに企業の生命線です。