脳の領域に入る「ニューロマーケティング」


モノを選ぶとき、人は実質的な便益で選ぶのでしょうか、ブランドで選ぶのでしょうか?

一概に答えが出ない問いですが、これに回答する試みとして、11/6の日本経済新聞「マーケティング新手法―消費者心理MRI分析」で、米ベイラー大学のリード・モンタギュー教授が行った実験が紹介されています。記事から一部抜粋します。

—(以下、記事より一部抜粋)—

コカ・コーラとペプシ・コーラそれぞれのファンを集め、好きな方を飲んでいるときの脳の活動をMRIで測定したところ、

  • コカ・コーラ好きの人の場合:ブランド名を教えた場合は脳の前頭葉や海馬が強く活動していた。伏せた場合はこの現象は起こらなかった。
  • ペプシ好きの人の場合:ブランド名がわかっても、わからなくても、活動はなかった。

という結果だった。モンタギュー教授は「ペプシ・ファンは味で製品を選び、コカ・コーラ・ファンはブランドの影響をより強く受けている。それだけコカ・コーラのブランドイメージが深く浸透している証し」と分析。

脳科学を販売戦略や製品開発に生かそうとする研究は「ニューロマーケティング」と呼ばれる。脳内を観察する技術の発達とともに、ここ数年で急速に注目を集めるようになった。

ホンダは、正面から見るとまるで怒った人の顔のようなデザインをしたバイクを開発、注目を集めた。人間の脳には特別に顔を認識する神経回路「顔ニューロン」があり、顔のようなものに敏感に反応する。これを利用し、正面衝突しそうな状況で、バイクが向かってくるのを相手の運転者にいち早く気づかせ、事故を防げないか――。こんな発想が開発のきっかけ。MRIで実験の結果、バイクを認識するのが〇・一―〇・二秒早まる効果が期待できる。

—(以上、記事より一部抜粋)—

現代のマーケティングは心理学の世界まで入ってきていますが、これがさらに進んで脳科学の領域まで入りつつある、ということでしょうか?

現時点で適用されているのは個人の反応に関する実証レベルですが、コンピューター処理能力の増大に伴い、今後これが個人の集まりである市場やマーケットに適用される可能性もあります。

バイクのデザインに適用して事故を防ぐ、という健全な応用はますます行うべきですが、集団に対する操作主義的応用に繋がらないようにしたいですね。