昨日(1/13)の日本経済新聞に、元仏大統領特別顧問ジャック・アタリ氏のインタビューが掲載されています。
グローバル化について、市場経済と民主主義の二つの観点で論じている非常に骨太な内容で、読み応えがあります。以下、特に興味深かった部分を引用します。
—(以上、引用)—
「公正さの低下は市場経済のせいではない。民主主義が弱すぎるのだ。これをはき違えると、富の偏在の主犯は市場主義となり、社会が分裂し、反動が出かねない。十八世紀以降、社会が行き詰まると民主主義が全体主義に、市場経済が保護主義に乗っ取られ、大きな戦火を引き起こした。いまも、市場経済は行き過ぎだと主張し、保護主義を掲げる勢力が出てきている。これは繰り返されてきた誤りだ」
―グローバル化の強みを引き出すにはどうすればいいのですか。
「民主主義を懸命に支え、もり立て、市場経済と競合できる対等な関係を保つことだ。ふたつを不可分に結びつければ、グローバル化は世界にとって脅威ではなく、福音となる。…..」
—(以上、引用)—
「格差社会を生んだ主犯は市場経済。だから市場経済は悪なのだ」という主張は、最近よく世の中に見られます。アタリ氏は、このような主張に反論しています。
確かに成果主義的な市場経済は、富を生むのに長けたモノにはより多くの富を、そうでないものにはより少ない富をもたらします。しかし、民主主義は、このような富を再配分する機能があり、格差社会が生まれたのは民主主義が弱いからだ、という主張です。
私は市場経済、民主主義、グローバル化をこのような観点で関連させて考えたことはなかったので、非常に新鮮でした。
実際、市場経済だけを声高に批判し、本来徹底的に議論すべき民主主義の議論をおざなりにしている識者も多いように思います。
ちなみに、アタリ氏は、音楽論から資本主義論まで評論の幅は広く、交響楽団の指揮をしたこともあるそうです。
日本の経済の発展を支えた経済人にも、書をたしなんだりしていた方が多かったと聞きます。
このような深い精神性が、物事への深い洞察を生むということなのでしょうか?