昨日(2007/4/16)の日本経済新聞「私の履歴書」では、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長がセブン-イレブンを立ち上げた頃の話が書かれています。
戦略を冷徹なまでに徹底することの重要さが具体的に描かれており、大変勉強になります。下記、引用します。
—(以下、引用)—–
「江東区から一歩も出るな」
豊洲店の近隣にフランチャイズ店を集中させる。ドミナント(高密度多店舗出店)戦略は地域での認知度を高めるが、物流面でも小口配送が実現しやすくなる。…..(中略)
枠を外せば楽になる。しかしドミナントが実現できなければこの事業は失敗する。原則は絶対崩さない。決めた戦略は徹底する。
—(以上、引用)—–
セブン-イレブンのドミナント戦略は現在も引き継がれています。
まだ知名度が低かった設立当初に、フランチャイズ店を江東区だけで展開するという方針を徹底するのは、並大抵の努力ではできないと思います。スタート当初だからこそ、このような戦略徹底が極めて重要になるのですね。
—(以下、引用)—–
年中無休の営業のため正月の商品配送を求めたときもそうだ。業界の常識からすれば無理難題もここに窮まれりだ。一時的に倉庫を借り、正月分を確保する苦肉の案も社内で出たが私は突き返した。
これから先五百店、千店に増えたらどうするか。初めから仕組みをつくるべきで、困難でも取引先と交渉させた。
断られても諦めず、お店の主人や取引先を説得する日々を重ね、一号店から二年後の七六年五月、総店舗数は百店に到達する。
—(以上、引用)—–
最初から将来の姿を想定しそれに併せて最初から仕組みを徹底して作ったこと、その上で決して諦めない忍耐強さを持ち続けたことが、この短い文章からもよく分かります。
日本人が得意な徹底した愚直さで実行し続けることに、骨太な戦略が組み合わさることで、セブン-イレブンの歴史的な成功に結び付いたのではないでしょうか?
翻って、私達自身は当初の戦略を徹底しているのか、情に負けたり状況に妥協して戦略を曲げていることはないのか、この記事から改めて考えてみるべきかもしれません。
妥協することは、高すぎる理想を現実に合わせたり、その場にいる人達への配慮のために行うことが多いと思います。必ずしも悪いことばかりではないかもしれませんが、戦略を徹底すべき時は妥協すべきではありません。
この判断は難しいものがありますが、この辺りは、最終的には鈴木会長の個性に基くリーダーシップに拠るところが大きかったのでしょう。
記事では、百店突破の記念式典での挨拶で、鈴木会長が感極まり言葉につまって涙をこぼした様子も描かれています。このようなエピソードを聞くと、ほっとしますね。