最近はあまりありませんが、以前は「私はマーケティングを担当しています」と自己紹介すると、「あ、営業なさっているのですね」と言われることがありました。
ご存知の通り、マーケティングと営業(セールス)は、役割が違います。
実際にお客様と接して、ビジネスに繋げるのがセールスです。
例えば法人系ビジネスで考えてみると、セールスの役割は下記のようなものになるのではないでしょうか?
・お客様が抱えている課題の理解
・自社製品やサービスを組合わせて、お客様の課題解決の提案と個別要望対応を行う
・契約を締結
・製品・サービスがお客様に提供されるまで責任をもつ
一方で、マーケティングとは、非常に簡単に言うとセールスの方々の活動をよりやりやすくする仕事と言えます。
従って、マーケティングの役割は広く、下記のようなものも含まれます。
・市場の理解と分析
・マーケティング戦略の立案
・製品やサービスの開発や体系化
・製品やサービスの価格つけ
・販売方法の戦略策定と展開
・プロモーション戦略策定と実施
このような役割の違いがあるので、セールスの人と、マーケティングの人とでは、モノゴトの考え方に違いが生じてきます。
セールスにとっては、目の前にいるお客様の課題をどのように解決するかが最優先です。
例えば、「具体的にこのようなことで困っているんだ」というお客様には、現実的な課題解決策をその場で提示することが必要です。現実の問題で困っているお客様に抽象論を述べても、あまり意味はありません。
従って、セールスの人達の考え方は非常に現実的であり、概念よりも則物化したモノを求めます。
時間軸では、「現在」(今日・今月・今期・今年)に最大の重点が置かれます。
一方で、マーケティングの相手は、市場(マーケット)です。
マーケットはお客様のように目の前には存在しません。抽象的で概念的な存在です。
そもそも、「市場(マーケット)」というのは定義の仕方で様々な形になり得ます。
そのような実体がなく概念である市場(マーケット)に対して、自社の認知度を上げようとしたり、あるいは理解しようと考えるマーケティングの人達は、抽象化・構造化・モデル化してモノゴトを考えるようになります。
例えば、市場(マーケット)の代替として、特定個人を想定し、ユーザーシナリオを考えて商品を作る手法もありますが、これもあくまでモデルであり、セールスのように現実の問題で困っているお客様に解決策を提示する訳ではありません。
また、明日のビジネスを考えて計画を立てて仕事を仕込んでいますので、時間軸では、「将来」(明日・来月・来期・来年)に最大の重点が置かれます。(ただし、ビジネスの時間軸が短くなっているのに伴い、マーケティングも現在のビジネス貢献が求められています)
従って、
セールスの方々は、現実対応・即物化、現在志向
マーケティングの方々は、抽象化・構造化・モデル化、未来志向
という基本的な考え方の違いがある、というように考えると、両者の違いが理解しやすいのではないでしょうか?
お互いのこのような立場の違いを理解せずに両者が議論すると、すれ違ってしまうことが結構多いようです。
尚、セールスの中には、マーケティングの役割で挙げた項目を日々のセールス活動で実践し、戦略的に営業活動に取り組まれておられる方もいらっしゃいます。
同様に、マーケティングの中には、目の前のお客様に対する問題解決能力が極めて高い方もおられます。
このようなセールス及びマーケッティングの両面で非常に能力が高い方はなかなか得難い人材で、非常に貴重です。
トップレベルのコンサルタントは、このような方が多いと思います。
できれば、そのような人を目指したいですね。