このエントリーの最後に書いているリンク先でも何回か書かせていただいたように、世界は急速にフラット化しており、最近ますますその変化のスピードが速くなっています。
一方、このフラット化する世界の中で、日本でもフラット化が進んでいる分野もあれば、完全に取り残されている分野も多くあります。
4月16日の日刊工業新聞に、早稲田大学教授・元大蔵省財務官の榊原英資さんのインタビューが掲載されていますが、フラット化する世界の中での日本の位置づけについて、非常に洞察に富んだ内容でした。
—(以下、引用)—
–(日銀総裁の)決定の過程で、かなり混乱しました。
「『ねじれ現象』とは権力の分立。米国ではしばしば起きていて、今も大統領は共和党で議会は民主党だ。その中での調整に、福田さん(首相)も小沢さん(民主党代表)も慣れていない」
—(以上、引用)—
フラット化する世界では、政治の世界でも分かりやすさが大事です。
そのためにはちゃんとした議論ができることが前提です。
榊原さんのご意見は、以前、私が「問題は、「ねじれ国会」ではない」で書いた内容と同じ視点で、全く賛成です。
—(以下、引用)—
-製造業はどうあるべきか。
「今までのような高価格製品は新興市場では売れない。典型的なのは携帯電話だ。日本の若者に特化して開発をしてきたから高機能・高価格すぎて、全く国際的な商品ではなくなってしまった。これは日本という特殊な市場に適応した『ガラパゴス化』だ」
「インド市場を見ていると、ソニーもパナソニックも売れていない。サムソンとLGばかりだ。携帯電話以外でもガラパゴス化が起きているのではないか。自動車だって高級品ではなくなりつつある。インドのタタグループが28万円の自動車を売り出す意味を考えるべきだ。これまで日本は欧米では成功したが、今後は中国やロシアで売れる製品を作れない企業は没落する。そうした危機的な状況にあることを国のレベルで考えなければならない」
—(以上、引用)—
フラット化する前の世界では、競争はグローバル規模ではありませんでした。
従って、ある程度の市場規模(クリティカル・マス)がある日本市場内で、有力企業同士が激戦し、そこで商品を鍛えて、勝ち抜いた商品を欧米市場へ持って行くことで成功する、という戦略が有効でした。
フラット化する世界では、競争はグローバル規模です。
この市場では、強みを徹底的に活かした商品をグローバルに提供することが必要です。従って、自国の市場規模は制約にはなりません。
携帯電話で成功しているフィンランド、韓国、いずれも国内市場規模だけでは商品に必要な投資を回収できないので、グローバルで勝負せざるを得ません。
しかも勝負はリアルタイムです。国内で成功したモデルを海外に、….という時間はありません。
従って、現在は新興国も含めたグローバル市場でのリアルタイムな競争にあっており、タイム・トゥ・マーケットが勝負の分かれ目になります。
今までのやり方を続けると、急速に日本がガラパゴス化する可能性があります。
「別にグローバルで競争する必要はないのでは?」
という意見もあるかもしれません。
しかし、日本自体がグローバル経済に深く組み込まれており、フラット化する世界のメリットを享受しています。
メリットを享受する以上、上記のようなデメリットを回避するのは難しいのではないでしょうか?
例えば極端な話ではありますが、日本のガラパゴス化が進み、フラット化する世界でお金を稼げるビジネスが育たないと、食料自給率39%の日本で十分に食料が調達できず、将来的に飢餓が発生し、最悪の場合は餓死者が出る可能性もゼロではありません。
実際、食料品は高騰していますし、一部の国では輸出規制を始めています。
我々日本人は、存在する問題についてコンセンサス(空気)が得られれば、非常に速く対応し、問題を解決できる傾向があります。
そこで提案です。
日本で問題意識を共有し、課題解決を図るために、「フラット化する世界、ガラパゴス化する日本」という言葉を是非日本で流行らせて、「ガラパゴス化、回避すべし」という空気を作ってはどうかと思っているのですが、いかがでしょうか?
できれば今年度の流行語大賞が取れればベストかも。
ただ、そもそも空気というのは作るのは難しいやっかいなものではあるのですが。
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