実は円高ではなく、円安である


前回に引き続き、4月16日の日刊工業新聞に掲載された、早稲田大学教授・元大蔵省財務官の榊原英資さんのインタビューからの引用です。

—(以下、引用)—

–産業界には最近の円高にも警戒感があります。

「一般に今が極端な円高だという認識が欠けている。たとえば1ユーロ=160円水準は大幅な円安だ。日本の競争力なら120円くらいでやっていけるはずだ。ドルについても、いまの1ドル=100円は10年前の125円に相当する。この10年で米国は平均2.5%の物価上昇があったが、日本はゼロだった。これを計算しないといけない。日本企業は今の為替水準でも大きなメリットを受けている」

「これまでの円安は内外の金利差が生んだバブルだ。しかし米国の利下げによって金利差は縮小する。この1-2年の間に円安バブルが崩壊するだろう。夏までに90円をつけると見ている。その先は80円もありうる」

—(以上、引用)—

確かに、私達は現在の円/ドル換算値だけを見て、1ドル79円75銭を付けた1995年になぞらえて、「円高である」と思い勝ちですし、一部のマスコミでもそのように伝えています。

例えば、テレビのニュース等では、日本を旅行中の外国人旅行客が「いやぁ、こんな円高になって大変」と言っているところを取材しています。

また、株式市場では、輸出型企業の株価が円/ドル換算値に対して敏感に反応しています。

しかし実際には、日本から欧州に旅行したりすると、ユーロ高で買い物も結構厳しいようです。

「実は、円安バブルである」という洞察、さすが「ミスター円」の榊原さんらしいご指摘と思います。

榊原さんの考え方では、1ドル80円でも、実際には10年前の100円に相当する訳ですね。

さらに1995年並の円高となる80円は、現在の換算値では64円になります。これはかなり強烈ですが、榊原さんはそこまでは言及していません。

このような広い視野に立った意見は、常に把握していきたいところですね。