『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』が生まれるまでの経緯を連載でご紹介しています。連載バックナンバーは、こちら。
2009年のゴールデンウィーク(GW)、私は11連休でした。
しかし、会社で仕事をしているよりも体力的には厳しかった休みでもありました。
執筆開始は2009年4月末、脱稿は7月末目標なので、一見、時間は十分あるように見えます。
しかし昨年自費出版を行った経験で、いったん原稿を書き上げた後の見直しには、書き上げるのと同じ程度の時間とワークロードがかかることを痛感していました。
しかも私は会社員。平日は会社勤務です。
GWを逃すとまとまった時間はほとんど取れません。
書くボリュームを元に、実際に執筆や校正に充てられる時間を逆算してみると、GW中に原稿のかなりの部分を書き上げないと、十分な校正ができず、仕上がりの品質も満足できない、という結論に至りました。
そこで、GW中に全体の8割の原稿を書き上げることを目標として設定、GWの11日間は全て執筆活動に充てました。
せっかくの長期休暇でしたが、家族には負担をかけてしまう結果になりました。
当初、ストーリーの大枠は予め決めていたので、すぐに書き始められると考えていました。
しかし、実際に書き始めるとなると話は全く別。
最初の5日間は、何も原稿は書けませんでした。
この5日間は早朝から夜遅くまでかけて、全体の登場人物の設定や、マーケティング理論や全体の構成の見直しを行いました。
特に悩んだのは、主人公が勤務する会社の設定。
実は物語の舞台となる会社の設定は、4月時点になっても決定していませんでした。
バリュープロポジションを定義した際、「本書の価値は、法人マーケティングを物語形式で初心者にも分りやすく紹介すること」としました。
このため、法人顧客を相手にする会社を物語の舞台にする必要があります。
分りやすいことが目標なので、読者が分りにくいビジネスは選べません。
また、本書で紹介する理論が全て当てはめられ、主人公が直面する様々な課題を解決していく場面が設定できることも要件です。
さらに、私自身がある程度分っている事業分野でなければ、説得力ある物語になりません。
このような条件を当てはめられる事業分野、なかなか見つけられませんでした。
色々な会社を候補に挙げては、本書で紹介する理論をあてはめるとどのようなストーリーが作れるのか、各章の内容を検討していきました。
合計10種類近くの会社のケースを検討したでしょうか?本書のストーリーは長いため、この作業にはかなりの時間と体力を要しました。
最終的に、私がソフトウェア事業に関わっていることもあり、ソフトウェア会社を舞台にすることにしました。
しかし、一言で「ソフトウェア」と言っても、多岐の分野に分れており、一般の方々には分りにくいという難点があります。
そこで、法人市場としてイメージしやすい会計ソフトを開発・販売する会社として設定しました。
私自身は、会計ソフトウェア・ビジネスに直接関わったことはありません。
しかし、本書で会計ソフトの顧客として設定した経営者の悩みはそれなりに理解しています。顧客のことは分るので、会計ソフト市場の概略を把握すれば、なんとかなるのではないか、と考えました。
逆に、私が担当するミドルウェアのマーケティングについては、業務機密もあるので、あまり具体的に書けません。会計ソフトウェアを選んだのは結果的によかったように思います。
このようにほぼ方針は決めたものの、それでも執筆に踏み切れず、相変わらず色々と考えていました。