6月22日の日本経済新聞「経済教室」で、早稲田大学の服部暢達客員教授が、「日本のM&A『買い』に偏り 価値創出に綿密な計画を」という論文を書かれています。
最近、企業のM&Aは、ビジネスパーソンにとって身近なテーマだと思います。
私自身、所属しているIBMのソフトウェア事業が数年間で50件以上のソフトウェア会社の買収を手がけていることもあり、身近な話題なので、興味を持って拝読しました。
長い論文なのですが、大変勉強になりましたので、サマリーを掲載させていただきます。
—(以下、引用)—
・日本企業は「買い手」になるM&Aは好きだが、「売り手」になるのは大嫌い
・しかし、M&Aの世界では、売り手の方が買い手よりもはるかにリスクが低いというのが一般常識
・M&Aでは平均して時価総額の+30-40%の買収プレミアムを支払う。
・つまり売り手にとってはプレミアムを受領して事業に対する投資を終了し、投資利回り(IRR)が決まる。リスクは基本的にゼロ
・買い手から見ると、プレミアムを支払ってから投資を開始するので実際に儲かるかどうかはM&A後の経営次第。しかもプレミアムを上回る価値の創出をしないと投資利回りはマイナス
・買い手側から見て、M&Aを成功させるためにはポイントが4つある。
・まず、買い手側は成功確立は5割程度の高リスク戦略であり、負けから始める勝負だと理解すること。これが全ての出発点
・第二は、プレミアムを上回る価値創出のための綿密な行動プランを持っていること
・第三は、実行する権力が必要なので、買収するなら原則として過半数の株式を取得して経営権を持つこと
・第四は、経営権を持っていても、実際に経営する能力がないと意味がない。優秀な経営者を留任させるのは問題ないが、任せるのは最高執行責任者(COO)だけ。シナジーを活かすためには大きな経営方針は自分で決めて指示することが必要なので、最高経営責任者(CEO)を任せてはいけない
・最後に飴(報酬)と鞭(リプレイサビリティ)を使い分ける。
・以上5点の必要条件を慎重に自問、自信がなければ決して勢いだけで実行してはいけない。どうしてもM&Aが必要なら、まず売り手として経験を積み能力を高めてから挑戦すべき。例えば、得意な国内で不採算事業を交渉がタフな外国人を相手に売却し、M&Aを低リスクで経験してみる
—(以上、引用)—
あくまで経営視点での話ですが、参考になります。
(従業員の視点ではまた色々と状況が変わってくるかと思います)