日経ITproの記事『日本人は「決める」のが苦手?』で、佐藤 治夫さんがインドのソフトウェア開発会社の経営者と話し合ったときのことを書かれています。
日本企業のユーザーでは、いったん定義した要件がひっくり返ったり要件が決まらないことがあまりにも多いので、このインドのソフトウェア開発会社経営者は、日本の仕事はやめたそうです。
単価が最も高い日本企業の仕事をやめる理由は、「要件が途中で何度も変更・追加されて、結局は一番儲からないからだ」
佐藤さんは、
決めなければならないことを決めずに先延ばしすると状況が悪化するという点でも、(日本の)システム開発と政治は似ています。
とおっしゃっています。その対策は、
1.論点を明確にする
2.捨てるべきものを明確にする
ことである、とした上で、
ユーザーに対して過剰な遠慮をせず、論点と捨てるべきものを明確にして、言うべきことをずばり言えるようにならなければ、ダメな“システム屋”で終わってしまうことでしょう。
と述べておられます。
このことは、実感します。
たとえば、論点に対して解決の選択肢が3つあり、それぞれの選択肢では捨てるものがA、B、Cの3種類あったとします。
この選択肢に対して、「3つとも大事だ。関係者に負担を強いることになるし、一つとして捨てるべきではない。たとえ難しくても、知恵を絞って、一つも失わない方法を探すべきだ」という強い意見が出される場合があります。
確かに、これは一般的には耳ざわりのよい言葉ではあります。
しかし、これでは論点は解決できません。貴重な時間が空費されます。場合によっては、「3つ以外に方法はない」ということを証明するために、時間を使うケースすらあります。
そしてその間に、課題はより大きくふくれあがり、さらに大切なものが失われていきます。(年金問題などは、その最たる例でしょう)
このことは、実際に責任者として様々な課題と格闘している人には、よくお分かりになるのではないでしょうか?
しかしながらこのような状況、私たちの身の回りのあらゆるところで起こっているように思います。
・リーダーシップ不在を嘆く一方、痛みを伴う変革には猛反対する
・現実の課題を突き付けられると判断できない(決められない)
・競争激化で顧客の言いなりになり、競争激化で差別化できず、低収益に陥っている
このような状況をブレイクスルーするためには、新しいリーダーの出現を期待するのではなく、私たち一人一人が、「論点」と「捨てるもの」を自分なりの尺度で、明確にする覚悟が求められるのでしょう。
私たちが覚悟を持たずに、リーダーに失望して、新しいリーダーにすげ替えたとしても、次にまた同じことが起こり、時間が空費するだけですから。