私が28年前に日本IBMに入社した際のTOEICは475点。当時の私は米国人と全く意思疎通ができませんでした。
それから2年間、寝ても起きても英語の勉強。TOEICも800点近くに届き、なんとか英語を使って仕事ができるようになりました。
この時の目標は、「ネイティブと同等レベルの英語が使えること」。
これは非常に高い目標で大変です。米国人が話していることはなかなか理解出来ませんでしたし、ネイティブ同士のくだけた日常会話になると全くお手上げでした。彼らも悪気はなく、「英語が理解出来ない」というこちらの状況が分からないのですよね。
一方で私は、入社4-5年後の1980年代後半から韓国・中国・台湾・香港・タイといった非ネイティブ系のIBM社員と一緒に仕事をするようになりました。
お互いに英語は非ネイティブ。使う英語も基本単語。
だから米国人のネイティブ英語のように「何を言っているか分からない」ということはなく、コミュニケーションは逆にとても円滑でした。
この私の体験、現代で「グロービッシュ」と呼ばれている動きを先取りしていたようです。
実はグロービッシュを提唱しているジャン=ポール・ネリエール氏は、フランス出身で非ネイティブ英語系のIBM社員でした。
ハーバードビジネスレビュー2012/10号の特集「グローバル英語力」に、ネリエール氏の論文「グロービッシュ:非ネイティブ英語は主役となるか?」が掲載されています。とても興味深い内容でした。
本論文では、1980年代後半当時、本社副社長でインターナショナル・マーケティング責任者だったネリエール氏が、米国人部下とともに日本IBMに来日した時のことが紹介されています。
一方的に英語でまくし立てる米国人と、黙ったままの日本人のコミュニケーションがすれ違う一方で、非ネイティブの自分と日本人は円滑にコミュニケーションできたこと。そしてこれがグロービッシュという概念が生まれるきっかけになったことが紹介されています。
ちょうど私がアジア系IBM社員とのコミュニケーションで実感したことを、ネリエール氏は同じ時期に同じ会社で、経営陣レベルで実感していたのは、面白いですね。
この論文に掲載されていた「グロービッシュ10の基本ルール」がとても参考になったので、ご紹介させていただきます。
—-(以下、p.128から引用)—
グロービッシュ10の基本ルール
1.話を理解してもらおうとするのは話し手・書き手の責任であり、聞き手・読み手の責任ではない
2.グロービッシュの基本単語1500語を使う
3.主に能動態を使う
4.文章を短くする(15語以内に)
5.発言の内容を繰り返して確認する
6.比喩や飾った表現・慣用句を避ける
7.「はい」を促す非定型の質問文を避ける
8.ユーモアの比喩表現を避ける
9.頭文字を避ける
10.身ぶりや視覚的な要素で補う
—-(以上、引用)—
最初の「話を理解してもらおうとするのは話し手・書き手の責任であり、聞き手・読み手の責任ではない」というのは、「英語学習の目的は、ネイティブレベルになること」だった私にとって大きなパラダイム転換でした。
しかしふり返ってみると、最近のグローバルチームとの電話会議では、相手側の米国人(他国の場合も)は、分かりやすい英語を話し、相手が理解したかを念入りにチェックしています。
「相手が英語を理解できない」ということを理解しはじめているようです。
20年前と比べると、米国人側もコミュニケーションする相手が多国に渡り、グロービッシュを使う必要性が増えてきているのですね。
グロービッシュ的なもの:団体職員編
実に半年振りの投稿です。その間にばんちょ~も居なくなって、いたたまれないです。本