日経ビジネスオンラインに、米ニューヨーク州立大学バッファロー校の入山章栄助教授が「MBAの本は、なぜ進歩がないのか 経営学に貢献すべきは学者ではなくビジネスパーソンだ」という記事が掲載されています。
この記事で、多くのビジネスパーソンが意外に思われるであろう点は、「『ハーバード・ビジネス・レビュー』は、米国の経営学では学術誌とは認められていない」ということ。
いわゆる学術誌では、(1)理論分析→(2)統計分析による実証研究をまとめた論文が投稿され、審査員が認めれば学術論文として掲載されます。
しかしこれだけではビジネスになかなか役立ちません。
経営学は実学だからです。だから学術論文に掲載された理論を、ビジネスパーソンが実務で使えるように「分析ツール」として落とし込む必要があります。
「分析ツール」とは、例えば、多角化戦略で活用される「BCGマトリックス」や、ポーター教授の「5つの力分析」のようなものです。
このような実務論文をまとめて、経営学者とビジネスパーソンの橋渡し役をしているのが『ハーバード・ビジネス・レビュー』。
学術論文誌ではなく、実務論文誌なのですね。
一方で記事では、「学術分野では、経営学はこの20年でめざましい進歩を遂げたが枝葉のものが多く、実践で役立つ『幹』の部分はたとえば競争戦略ではいまだにポーター教授の理論が主体になっている等、あまり変わっていない」としています。
そして以下のようにまとめています。
—(以下、引用)—
「学術的な成果を背景にした経営分析ツールを開発する」分野は、実はかなりのポテンシャルがあるはずです。
そしてこの意味で私が期待しているのは、学術論文を書くことに忙しい学者ではなく、こういったことに問題意識のある実務家やコンサルタントです。こういった方々が、たとえば拙著で紹介したような学術論文を読まれて、そこから自身の実務的な知見をもとにビジネスで使える分析ツールを開発するという分野が発展するなら、それはとても素晴らしいことではないでしょうか。
(中略)
私は、ぜひ意欲のあるコンサルタントや実務家の方々に、もっと世界の経営学のフロンティアの学術論文を読んでいただいて、そこから得られる知見からツールを生み出してもらえないだろうか、と期待しています。欧州経営大学院(INSEAD)のチャン・キム教授風に言えば、これは、まさに「ブルー・オーシャン」の分野なのかもしれません.
—(以上、引用)—
このように考えると、経営学の学術論文は、ビジネスパーソンにとって、実はダイヤモンドの原石なのかもしれません。