企業は、顧客も気がつかない課題を先取りした解決策を提示して価値を訴求することで、価格勝負から抜けだして、成長することができます。
逆に、「顧客の言いなり」状態になってしまうと、どこも同じものを作ることになるので、差が付けられるのは「価格」だけ。そして価格勝負に陥ってしまうのです。もし業界全体がこのような状況に陥ると、全体の市場は徐々に縮小してしまいます。
…と、ここまではいつも私が講演でお話ししていることです。
しかし世の中には、価格がどこの会社も同じ業界があります。
例えば書籍は、指定再販商品として、定価販売されています。どの書店でも、同じ書籍は同じ価格です。
このように「値引き」の概念が存在しない業界が「顧客の言いなり」状態になった場合、どのような結果になるのでしょうか?
実はやはり同じ結果になります。全体の市場が徐々に縮小するのです。
顧客の選択肢は非常に多岐に渡ります。書店を例に考えても、顧客にとって代替となる選択肢は、ネット書店、電子書籍の他にも、スマホやネットのコンテンツ、ソーシャルメディア等、非常に幅広くあります。
このような状況で、「顧客の言いなり」になり、新しい価値を提供できないと、どうなるか?
顧客は、徐々に「楽しそうな」代替市場に流れていきます。そして市場全体が縮小するのです。
顧客は一気に流れません。時間をかけてゆっくりと移動します。例えばリアル書店で2-3日に1冊買っていたのが、次第に1週間に1冊になり、1ヶ月に1冊になり、そしてほとんど買わなくなります。
その代わりに、スマホのコンテンツを見たり、ネット書店で買い物をするようになるのですね。
そして全体の市場が徐々に収縮するのです。
これを回避するにはどうするか?
やはり、顧客の言いなりになるのではなく、顧客が「面白い」あるいは「まさにこれが欲しかった」と言うような、新たな価値を創造する必要があるのはないでしょうか?
値下げをしない業界であっても、「価値勝負」の重要性は変わらないと思います。