思わず見入ってしまいました。
Bloomberg TVに、ソフトバンク社長・孫正義さんの30分インタビュー番組が掲載されています。肩書きはSprint CEO。米国ではそのように認識されているのですね。
→番組へのリンク
英語で、しかも海千山千の熟練インタビュアーを相手に、明快に持論を展開されています。
「モバイルLTEでは、米国は世界16カ国中15位。16位はフィリピンだ。米国はこれでいいのか?」
「米国を責めているのではない。自分も解決する責任を持っているということだ。」
「上位2社は価格を下げずに潤沢なキャッシュフローを楽しんでいる。価格を下げる必要がないからだ。我々は最新技術を持っているが、SprintもT-Mobileもモスキート級だ。個別では上位2社とは戦えない。だから私は、T-Mobile買収で上位2社と戦えるヘビー級になり、価格勝負したい。」
「そうだ。ナンバーワンになりたい。そうすると米国の皆さんも最新技術が使えるようになるし、通信料金も下がる。皆さんに役立ちたいんだ」
という、相手が興味を持つ導入部分から話に入っています。
さらに、
「前からモバイルインターネットの将来を確信していた。そこでiPhone発売の2年前に、スティーブ(ジョブス)にiPodに携帯をくっつけた絵を見せて『これを作ってくれ。日本で俺が売るから』と言ったんだ。スティーブは『マサ、そんなこと言ってきたのはお前が初めてだ。でもさ、お前、携帯事業やってないじゃん』。それで2兆円出してVodafoneを買った」
という話で笑わせたり。
ビル・ゲイツの話も出てくきます。
「ソフトバンクは、情報革命のインフラを作る。あらゆる人たちのイノベーションの花を咲かせるためのインフラを提供する。我々は一つの製品、ビジネスモデル、ブランドに依存しない。ソフトバンクグループ自体が、シリコンバレーのような生態系になる」
という話もあります。
当然ながらインタビュアーも、孫さんの日本での言動をチェックしており、巧みに突っ込んできます。
しかし孫さんが話しているのは、すべて日本で話している内容と同じです。
「原発については?」
「反対だ。3年前の大震災で日本は大変な目にあった。電力がないとネットワークは使えない。だから太陽光発電や風力発電に投資している」
という孫さんの答えに対して、
「安倍首相について、同意できないことは?」
という厳しい質問もありました。しかし、
「変なことを言うと日本に帰ってから大騒ぎになるんだから。勘弁してよ」
と満面の笑顔でかわしながらも、安倍首相に対してもちゃんと言うべきことは言っています。
このように日本の経営者が明確に発言する場面は、最近なかなか見ることがありません。
・首尾一貫した明確なビジョン
・自分のすべての行動を、明快に説明できる。(=アカウンタビリティ)
・あらゆる個人をリスペクトする誠実さ
これらすべてが備わって、はじめて出来ることです。
30分の番組ですが、色々と勉強になります。グローバルコミュニケーションの題材としても参考になります。お勧めです。
思うに数十年前は、ソニーの盛田さんなども、こんな感じで日本を代表して発言しておられたのでしょうね。