本日2014/4/8の日本経済新聞のコラム「一目均衡」で、編集委員の西條都夫が「供給過剰時代の終焉」というコラムを書いておられます。
内容をサマリーすると、1990年代初頭のバブル崩壊後に、雇用・設備・債務の「3つの過剰」が流行語になったのを皮切りに、過去四半世紀の日本の課題は「供給過剰」にどう対処するかでした。それがここに来て、状況が大きく変わっている、という話です。
「雇用」は、幅広い業種で人手不足が深刻。
「設備」も、再編やリストラによる調整が進行。鉄鋼業界は大手2社に集約され、4年前には月産100万台を超えていたテレビの国内生産も5万台程度まで急激に縮小。
「債務」も、むしろ日本企業の「現金ため込み体質」が批判されようになりました。
先日の当ブログで、「需要をいかに科学して「お客様が買う理由」を作り上げるか?」というエントリーを書きました。
このエントリーでCCC社長・増田宗昭さんの「今は需要と供給は逆転、供給が圧倒的に大きい。今の日本に一番欠けているのは、需要を科学し、需要力を上げること」とおっしゃった発言を引用させていただきました。
供給が需要を下回ったのであれば、「それじゃぁ、問題解決じゃん。よかったぁ!」と思いがちです。
しかし、当コラムでは、西條さんは次のように締め括っておられます。
—(以下、引用)—
企業経営者にとっては別の課題が浮上する。過剰を削り、身を縮めることが経営の主軸だった時代が終わり、新しい価値の創造がこれまで以上に求められることになる。
—(以上、引用)—
需要が供給を上回ったのに、なぜ「新しい価値の創造」が必要なのでしょうか?
その一つのヒントが、本日2014/4/8の日経記事「アマゾン、酒類を直販 6000品目スーパー並みに安く 」に書かれています。
即日配送で8割、翌日配送なら9割の地域をカバーできるアマゾンの流通網は、酒類小売店にとって脅威です。アマゾンは次々と事業領域を広げ、顧客需要を吸収し、成長し続けています。
このアマゾンに代表されるように、高い価値を提供する業者(特に海外のライバル)が次々と現れているので、供給不足の状況になっても、顧客は、従来業者ではなく、より高い価値を提供する新しいライバルへと、容易に流れてしまうのです。
消費者でもある自分自身の行動を振り返ってみると、よくわかるかも知れませんね。
「需要が供給を上回り始めた」ということは、「より高い価値を提供するライバルが成長するスピードが速まる=市場シェアを奪われる」ということでもあるのです。
過去の歴史を考えてみると、人類は常に新しい価値を創造し、進化し続けてきました。
たとえば、馬車で移動するのが当たり前だった時代がありました。しかし「需要が供給を上回っている」と考えて馬車のビジネスに安住していたら、蒸気機関車や自動車のイノベーションは生まれなかったでしょう。
需要が供給を上回るようになった今こそ、「新しい価値の創造」を考えることは、ますます大切になっていると思います。