1999年から発売されたキリンの缶コーヒー「FIRE」は、大ヒット商品になりました。
FIREの企画を考えて立ち上げたのは現在キリンビバレッジ社長の佐藤章さんですが、企画当初、当時の社長に「25歳から34歳向けの缶コーヒーをつくりたい,パッケージはシルバー、名前は「FIRE」、広告にはインディアンを出します」と経営会議で提案したところ、「絶対許さん」と言われ、総スカンだったそうです。
いわく、「ガソリンじゃないんだから、そんなネーミングはあり得ない」、「銀には色気がない」云々。
そこで佐藤さんは一計を案じ、「ネーミングは麒麟珈琲、色は青、広告キャラクターは日本の歌手」という案を出したところ、社長は「佐藤君、これだよ」と大喜び。
ここから、佐藤さんはあることを仕掛けました。ハーバードビジネスレビュー2014年10月号の付録小冊子「営業が強い会社はマーケティングもすごい!そして、マーケティングが優れた会社は営業もすごい!」で、佐藤さんがその様子をインタビューでお話ししていますので、ご紹介します。
—(以下、引用)—-
でも僕は言う通りにしませんでした。両方のプランをターゲットである25歳から34歳のモニターにぶつけて、支持が多かった方を商品化しましょう、と社長に掛け合ったのです。なんと受けて立ってくれました。ですが、結果は8対2で、僕のプランが圧勝。………
—-(以上、引用)—
佐藤さんが行ったことは、リアルな顧客への仮説検証です。
仮説を考えた上でA案・B案を作り、実際にリアルな顧客にその仮説を検証することで、答えが見つかります。
会社員として仕事をしていると、自信を持ってつくった企画がマネジメントに認められないことが多いと思います。ただここで文句を言うのではなく、佐藤さんのように前向きに捉えて対案を作った上で、顧客が支持していることを事実として示して、上司を納得させる方法はとても参考になるのではないでしょうか?
正しい答えは、会社のマネジメントではなく、顧客が持っているのです。
最後に佐藤さんはこのようにおっしゃっています。
—(以下、引用)—-
ですから、ぐっとこらえて、決して諦めないことです。そのためにも、開発から発売まで、全てのプロセスに関わり、全てに責任を負うべきなんです。そこまで踏み込めば、そう簡単には諦められなくなりますからね。
—-(以上、引用)––
自分の仕事が「やらされ仕事」だと、「諦めるな」と言われると、結構辛いものがあると思います。
それは責任分担の問題かもしれません。たとえば先のFIREで顧客モニター調査をする際に、「企画は自分で立てるけど、検証は営業に任せて、結果をもらう」というようにすると、営業は忙しいので優先度が高い自分の仕事の合間に検証せざるを得ず、思うような結果が得られません。
思い切って「全部自分でやる」と宣言してしまうと、最初はちょっと大変かもしれませんが、自分で仕事をコントロールでき、仕事も面白くなり、いい結果が出るようになります。