世界経営者会議レポートの続きです。
二日目に、ティファニー・アンド・カンパニー マイケル・コワルスキー 会長兼CEOが登壇しました。創業177年という、米国では異例なほど長く経営されている老舗のトップが話す内容は、参考になるところも多いお話しでした。
【講演より】
自分は15年間CEOを務めた。間もなくCEOは後継者に譲る。
ティファニーのコアバリューは、5つである。
①まず、デザイン。情熱を盛ってデザインに注力する
②クラフトマンシップ。職人技だ。
③最上級の材料を使っていること。
④サービス。お客様は生涯に渡るお付き合いになる。そこで専門家がサービスを提供する。
⑤責任ある行動。社会からの信頼
これらを踏まえて、我々の戦略は、
①長期的価値にフォーカスすること。公開企業だが、あくまで長期の経営健全性のために投資する。
②妥協することなく成長する。つまり、性急な成長は目指さない。必ずコアバリューに合っているかを照らし合わせ、着実な成長を図る。
③特化した製品ラインを維持する。製品を特化することで、価値を磨き続ける。
④垂直統合したサプライチェーン。製品は全て自分たちで作る。
⑤自前店舗の展開
製品中心の企業であるが、常に顧客の価値(人生の節目の記念、など)にフォーカスし続けている。
実はティファニーは、10年前はグローバル企業ではなかった。売上の80%は米国と日本から稼いでいた。そこでグローバル化にあたって、戦略の進化を図った。
①まず、各地域への進出。
②グローバルマネジメントチームを創設。
③製品の品揃えの見直し。
④新興市場においてブランド知識を育成する。
⑤ブランディングをよりわかりやすくする。日本や米国のブランディング方法だと新興国にはわかりにくかった。
これまでのティファニーのコアバリュー、ビジネスモデルは有効である。今後も着実に進化させていく。
【質疑応答】
(「資本市場といかにつきあってきたのか」という質問に対して)
株主に長期的ビジネスを伝え続け、理解してもらえた。そういった人たちが株主になっていたということだ。
(「歴史を守るために変えなければならなかったもの。逆に守らなければならなかったものは、どんなものか?また事業継承のプログラムはあるのか?」という質問に対して)
当社は、経営陣刷新の真っ最中だ。5年間をかけて私の後継者に移行している。
基本的なティファニーの強みは変わらない。重要なのは進化だ。誰もが177年の歴史が持つ資産を理解するということだ。
一方で、新興市場から学べたのはマーケティングのメッセージをシンプルかつ明確にしなければならない、ということ。歴史に甘んじてはいけないのだ。
(「今後の消費社会をどう見ているか?」という質問に対して)
もっと経験を重視するようになっていくと見ている。たとえば結婚式を祝う際に、それをいかに人生の重要な一部とするか、だ。製品そのモノだけではなく、顧客はどのように製品が作られているのか、物語を気にするようになっている。顧客とは、作り方や考え方を共有する方向にある。
【所感】
マンハッタンの5番街にあるティファニーのお店は日本人にも人気ですし、日本にも多くの店がありますが、ティファニーが10年前までグローバル企業ではなかったというのは、意外でした。
しかし一方で、
■「コアバリュー→基本戦略→グローバル化戦略」、とステップを踏んで構造的に戦略を立てる考え方
■製品中心の企業ではあるものの、常に顧客の価値にフォーカスしていること
これらはまさに「不易と流行」の方法論でもあります。
同じくグローバル化を進める日本企業にとっても参考になるのではないかと思いました。
【世界経営者会議レポート】
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