顧客が「少々高くても、是非欲しい」と思うようなマーケティング志向の製品を開発するにはどうすればよいか?
本格的な製品開発に入る前に、対象となる顧客とその課題、そしてどのような価値を提供するかを見極めて、さらに製品のプロトタイプ(試作品)で、それらの仮説が正しいかを検証することです。
しかし、このように考えるケースも多いのではないでしょうか?
『確かに一見もっともな意見だが、現実にはプロトタイプと言っても、開発には時間もお金もかかるので、無理』
しかし多くの場合、これは思い込みです。
プロトタイプで検証すべきなのは、仮説として考えた課題と解決策が、正しいか。
必ずしも完全な製品は必要ないからです。
たとえば以前に当ブログでご紹介したオンラインの靴販売サイト・ザッポスでは「靴をオンラインで買う顧客がいる」という仮説を立てました。
しかし巨額をかけてリアルなオンライン販売管理システムを構築することはありませんでした。
そのかわり、近所の靴屋で写真を撮ってサイトに並べ、注文の度に店で売値で買うようにしました。この方法なら、個人でも簡単にサイトを作れることが出来ます。
こうして仮説を検証し多くの学びを得て、ザッポスは成長を始めました。
また、あるまったく新しい鼻の外科手術器具の開発では、医療機器メーカー、外科医、デザイン会社で、構想を議論しました。
しかしまだ誰も見たことがない未発明の製品です。立場が異なる参加者はそれぞれ身振り手振りで説明するも、話は堂々巡りを続けます。
その会議の途中、若手エンジニアが席を立ち、5分後にあるモノを持ってきました。
ホワイトボード用マーカーの根元に、黒い写真フィルム容器をテープでぐるぐる巻きに括り付けて、さらにフィルム容器の端っこを洗濯ばさみで挟んだものでした。→ここにその写真があります。
制作時間にして5分。費用 数百円程度でしょうか?
身振り手振りを繰り返していた外科医は、「そう、まさにこれだよ!」
この製品は、業界スタンダードの電子メスになりました。
Ideo “Diego Powered Dissector System for Gyrus ACMI, ENT Division”より。
プロトタイプで検証すべきは、仮説と解決策。
絞り込んで考えると、色々なアイデアが出てくるはずです。
トム・ケリーやデイヴィッド ケリーが提唱する「デザイン思考」は、その方法論を提供してくれます。(出典: 「イノベーションの達人」 トム・ケリー著 p.53-55)