今こそ、IT投資で差別化を図る絶好の機会 (3)


ITmediaエンタープライズに11月14日、「IDC、2009年のIT支出予測を下方修正――金融危機と消費支出減少が理由」という記事が掲載されました。

11月15日の日本経済新聞にも「世界のIT投資 2.6%増に鈍化、米IDC、来年予測引き下げ」という記事が掲載されていますので、ごらんになった方も多いと思います。

このような調査を見ると、「このような風潮なら、IT投資を控えようか?」という考え方も出てくるかもしれません。

しかし、この記事をよく見ると、「マイナス成長になる」とは言っていません。「伸び率が鈍化する」と言っています。

この点、とても重要です。

記事でも、

—(以下、引用)—

 …….同社の予測がわずかながらも成長を示しているという事実は、ほとんどすべての企業においてITがいかに重要になったかを示すものである。

 IDCのアナリスト、ジョン・ガンツ氏は報告書の中で、「既にITは多くの基幹業務に奥深く埋め込まれており、効率と生産性を向上する上で不可欠な要素となっている。このため、成長ペースは鈍化するものの、2009年もIT支出が引き続き増加するとIDCでは予想している」と記している。

—(以上、引用)—

としています。

このような考え方が生まれるのは、「IT投資はコスト削減・競争力向上のためには必須である」とのグローバルでの共通認識が背景にあります。

例えば同じ時期、同じく成長率が+2.3%から+1.0%に鈍化すると予測したメリルリンチは、以下のように言っています。

・投資を削減すると回答したCIOは12%。IT投資を増加すると回答したCIOは52%だった

・最優先投資は下記項目
– 資産やインフラ管理を改善するソフトウェア
– サーバー利用率を向上しコスト削減のための仮想化ソリューション
– 急増するデータ管理のためのストレッジ

この最優先投資分野は、まさにITを活用して大きなコスト削減効果が期待できる分野です。今、企業がお金をかけるべきは、この分野です。

この時期、米国をはじめとするグローバル企業は、多くの場合大きな負債を抱えながらも、重点分野を決めてIT投資を継続し、低コスト体質化と競争力強化を図っています。

一方で、欧米企業と比べると、日本企業は幸いながら負債はそれほど大きくはありません。

ある調査では、日本企業の自己資金は60兆円とも言われています。これは日本の年間IT投資額12兆円の実に5倍もの金額です。

仮に今回のように一時的に収益が悪化しても、自己資金を持っていれば、その資金で投資することで競争力を強化できます。

先日、「今こそ、IT投資で差別化を図る絶好の機会」で書きましたように、このような時こそ、一律にコスト削減するのではなく、どこに重点的にIT投資を行うかを明確にし、低コスト体質を作り上げて、企業としての競争力を強化することを考えるべき時期ではないかと思います。

IT業界に身を置く立場として、このようなメッセージを積極的に出していく責任を痛感しています。