『企業に広がる『SNS疲れ」』→ソーシャルメディアは魔法のツールではない。そこで考えたい、従来型メディアとの2つの違い


日経ビジネス2011/9/19号の記事『企業に広がる『SNS疲れ」』で、企業でソーシャルネットワーク疲れが広がっていることが書かれています。

—(以下、引用)—

…「メリットと比べて、リスクの方がはるかに大きい。ソーシャルメディアは企業のマーケティングに向かないと思っています」。A氏は自身の経験も踏まえて、こう明言する。

(中略)

….エイベック研究所の武田隆代表は「ソーシャルメディアがすごいすごいと発言している方は、その多くが(ソーシャルメディア自体を収益源とするなどの事業を担っているがゆえの)ポジショントークです」と断じる。「やり方を間違えれば、企業にとって逆効果しか生みません」

—(以上、引用)—

 

記事を読んで、これは「ソーシャルメディアに企業が何を期待しているか」、という認識の問題なのではないかと感じました。

 

もし「ソーシャルメディアを活用することで、魔法のようにマーケティングの効果が上がる」と考えて、ソーシャルメディアに取り組んだとしたら、おそらくその期待は裏切られると思います。

「ターゲット顧客をどのように定義し、自社のどのような価値を、具体的にどのように、そのターゲット顧客へ正しく伝えるか」というマーケティングの基本は、ソーシャルメディアでも従来型メディアでも、変わりはありません。

ですので、そのマーケティングの基本が出来ていれば、従来メディアでもソーシャルメディアでも、同様に効果は上がります。

しかし、この基本ができていなければ、ソーシャルメディアに取り組んでも効果は上がりません。

 

むしろ双方向メディアですので、炎上するリスクを抱えます。これはソーシャルメディア・リテラシーの問題だと思います。

記事で紹介されている"炎上"事件は、まさにソーシャルメディアを活用する方々のリテラシーの問題による「舌禍」事件が多いように感じました。

考えてみると従来型メディアでも、「広告ではこれは御法度」というような世界はある訳で、メディア毎に適切なリテラシーを持っていなければならない点も変わりはないと思います。

 

そのように考えていくと、おそらく従来型メディアとの違いは、

①社員一人一人が情報を発信できること

②従来の一方向のコミュニケーションではなく、共感を伝えることが出来る双方向コミュニケーションであること

の2点なのではないかと思います。

 

一つ目の一人一人が情報発信できることについては、ソーシャルメディア・リテラシーをいかに社員へ徹底していくかが、課題だと思います。

記事で紹介されている舌禍事件も、社員が個人で発信しているものが半数です。そして社員が個人でソーシャルメディアで情報発信することは止められません。ですのでいずれにしても、企業は社員のソーシャルメディアへのリテラシーを徹底することが必要です。

本記事では「ソーシャルメディア・ガイドライン」の内規を規定している会社の例を紹介しています。

ちなみに、何回かご紹介しておりますように、IBMも社員に対して『IBM ソーシャル・コンピューティングのガイドライン』を熟読するようにガイドしています。この内容はリンクにありますよう、社外に公開しています。

 

二つ目の双方向のコミュニケーションについては、知恵や意見が交換され、お互いのアイデアが創発することで、新しい価値が生まれる点は、実は企業にとって得られるものが大きいと思います。

Twitterで現在フォロワー130万人孫さんも、Twitterを「右脳、左脳以外に『外脳』がある感じ」とおっしゃっています。そして、Twitterで外部からの意見が入り、より的確な経営判断が行えるようになったと語っておられます。

記事を拝読し、ソーシャルメディアによる双方向のコミュニケーションで生まれる価値を、どのように企業として活かしていくか、ということを考えていくことが、重要なのではないか、と感じました。

 

ソーシャルメディアと言えども、魔法のマーケティングツールではないのですよね。