DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2012/10号は「グローバル英語力」が特集です。
この中で、藤井清孝さんが『「人を動かす」リーダーの英語力』という論文を寄稿されています。
この論文では、海外グローバル企業の多くは公式語は英語であること、人材募集で「ドイツ語やフランス語が必須」とした途端に応募してくる人材が大きく偏ること、そして英語が公式語でない企業へは世界中で優秀な人材が応募してこなくなることを紹介している箇所があります。
各国現地法人ではほぼ100%現地の言語が使われているのですが、国をまたがる経営陣の会議では英語が100%となるのですね。
つまり昇進のためには英語が必須となり、強制されなくても英語習得熱が高まるということです。
では、日本企業ではなぜこの原理が働かないのでしょうか?
論文から紹介させていただきます。
—(以下、引用)—
….最大の理由は、日本市場が特殊で大きかったことである。….どうしても日本市場で戦力となる人材の育成が主眼となる。日本の商習慣やそのベースとなる人間関係は欧米と比べてキメ細かいので、日本で教育を受けた人材でないとほとんどついていけない。それゆえに外国人や帰国子女にとって、日本企業の環境は大変ハードルの高いものとなる。
日本市場のビジネスもでき、英語も流暢な人材は大変数が少ない。その結果、「仕事ができない英語屋」という表現に見られるように、日本では「仕事力」と「英語力」が別々の能力であり、時に二律背反するものとしてとらえられる世界でも稀な国となったのである。
—(以上、引用)—-
この20年間、世界経済の中で日本は急激に縮小しています。
日本の購買力平価換算のGDP(世界シェア率)は、1992年の10.2%をピークに、2012年は5.6%と実に半減しています。(出典:IMF – World Economic Outlook Databases 2012年10月版)
この数字の通り、藤井さんも論文で述べておられるように、日本市場をベースに企業を最適化するのはもはや時代にそぐわなくなっています。
しかしながら、「日本市場の世界シェアは10%」という感覚を持っているビジネスパーソンは、未だに意外に多いのではないでしょうか?
「グローバル・コミュニケーション力が大事」と言うと、「今更言われなくても….」と思われがちですが、このように考えると極めて優先度が高い課題なのではないかと思います。