テキサス大学サンアントニオ校のアソシエイトプロフェッサーである清水勝彦著「戦略の原点」(日経BP社)を読んでいます。
清水先生も冒頭で「経営の九九を教える」とおっしゃっている通り、非常に基本的な、しかしビジネスで実際に使える戦略の基本をまとめていて、とても共感しました。
本書の第三章「企業の外部環境分析」の中で、スイッチングコストについて触れています。
スイッチングコストとは、「顧客が商品あるいは売り手を替える際に発生するコスト」です。
たとえば賃貸。
引っ越しするのはお金も手間も時間もかかります。さらに契約関係や電気、水道、ガス、電話などの契約更新も面倒です。ですので、ちょっといい条件の賃貸があっても、引っ越すことなくそのまま住み続けることが多いのではないでしょうか?この引っ越しに伴うコストが、まさにスイッチングコストです。
本書でとても興味深かったのは、色々なことがスイッチングコストの視点を持って考える意味が見えてくることです。
特に気になったポイントを、箇条書きでまとめてみます。
■戦略の本でスイッチングコストについて深く言及しているものはまれだが、実はたいへん重要かつ本質的な概念である
■スイッチングコストは戦略作りに非常に重要な示唆を与えてくれる
■「顧客の囲い込み」と言われているのは、まさに顧客のスイッチングコストを上げることにほかならない
■スイッチングコストが低い場合、基本的な競争は価格だけになる
■スイッチングコストが高い業界では、初めてのユーザーを獲得することが非常に重要。成長中の業界や毎年新しい顧客が生まれる業界では、初めてのユーザーを獲得するために様々な施策が考案されている(10年ほど前にYahoo! BBでADSLモデムを無償で配ったのも同じ)
なるほど、と思いました。
本章の最後で、『「分析」は出発点であって、戦略では決してない』とあるのも、まさにそうだと思いました。
ともすると「分析したから後はよろしく」となってしまうケースがありますが、本来はその分析を元に何をするのかを考え、そして実行して初めて意味があるのですよね。
半分まで読みましたが、ビジネスパーソンにとって実用的な戦略本だと思います。