この三日間、当ブログで、ライフネット生命保険社長・出口治明さんとのインタビューをお送りしました。
■ライフネット生命社長・出口治明さんインタビュー(その1) 「『書きたいから、書く』のが一番です」
■ライフネット生命社長・出口治明さんインタビュー(その2)「情報は、発信すればするほど、集まってくる」
■ライフネット生命社長・出口治明さんインタビュー(その3)「個人の出版は、日本の将来のためにもよいことです」
このインタビューを行ったのは、今年3月。
その4ヶ月後、今年7月に出口さんは3冊目のご本「『思考軸』をつくれ」を出版されています。
ここ数日、この新著を拝読しました。
今年3月に私が出口さんとの1時間半のインタビューでお聞きした内容が、新著を読むことで、さらに頭の中で繋がり、感慨深いものがありました。
本の最後に、「『思考軸』をつくれ」で出口さんに取材をされたライターの山口さんの手記が掲載されています。
戦後の60有余年は、人間の歴史を考えればわずかな瞬間に過ぎない。
日本という国のなかだけで通用することに普遍性があると考えるのは無理がある。「歴史と世界をみれば、何が正しいかは自ずとわかる」というのが出口氏の一貫した姿勢なのである。
私が行ったインタビューでは、出口さんの物事の本質を捉えた様々なお考えに圧倒されました。
インタビュー記事第1回目にも書きましたように、出口さんは「歴史オタク」を自称され、「小説5000年史」という本も既に下書きを終えられています。
新著を拝読し、出口さんの思想の背景には、圧倒的な読書量に裏打ちされた出口さんの歴史観があること、そして真の意味での「教養」を持つことの大切さが、よく分かりました。
ここで言うところの教養とは、単なる「豊富な知識」という意味に留まりません。
吸収した圧倒的な知識量で、人間社会がどのように動き、現在起こっていることがどのような意味を持つのかを判断をする「思考軸」を確立し、それが人格を形成すること、ということなのでしょう。
圧倒的な知識の吸収量が、教養という質を生む、ということでしょうか?
まさに本書のタイトル「『思考軸』をつくれ」に、このことが集約されていると思います。
旅が大好きで今まで訪れた都市は1000以上、基本的に人から誘われたら断らないという出口さん。
実際、講演会で名刺交換をしただけの私からのメールに対して気軽にご返事を下さり、2度目のメールで「取材させてください」と申し出たところ、すぐにご快諾の返事がありました。
また、Twitterやメールご返事の速さは驚異的です。
全く本書に書かれている通りの方です。
この良い意味での腰の軽さと、あくことなき好奇心も、出口さんの思考軸を形作っているのかもしれません。
本書では、日本が戦後に驚異的な復興を果たしたのは、「日本人が優秀で勤勉だったから」という従来の見方を排し、「三つの神風が吹いたから」と分析されています。
そして江戸時代に最低の評価を下し、江戸時代以前には多くの日本人がグローバルで活躍しており、日本は昔から海洋国家であったと述べておられます。
本書の巻末に「『軸づくり』に役立つ本一覧(歴史を中心にした20冊)」がまとめられています。
「小説5000年史」という大著を、頭に入っている知識だけで下書きされる程の出口さんが選んだ、珠玉の20冊。
恥ずかしながら、一冊も読んだことがありませんでした。
まずは「昭和史 1926-1945」(半藤一利著、平凡社)を注文しました。
一冊ずつ読んでいきたいと思います。
本書の取材をされた山口さんも、私が出口さんとインタビューを行ったあの半蔵門にあるライフネット生命保険の質素な社長室で、毎週のように取材を繰り返されたそうです。
この本との不思議なご縁も感じました。
本書との出会いに感謝。
読書は、このような本との出会いがあるから、楽しいのですね。