今月、日本経済新聞に連載されていた渡辺淳一先生の「私の履歴書」が、本日完結しました。
経営者や学者の「私の履歴書」だと、1ヶ月連載の最後の5日間は一仕事を仕上げて引退後の活動を描くことが多いのですが、渡辺先生の場合は最後4日間になってもまだ30代、相変わらず華やかな女性遍歴を描いていました。
Twitterなどでも話題になっていましたが、私も「このまま終わるのか?」「どう終わるのか?」と思っていました。
本日の最終回では、冒頭から
—(以下、引用)—
ここまで、「私の履歴書」を書いてきたが、ここから先は、改めて書くまでもない。
なぜなら、これ以降のことは、このあと書いたわたしの作品を読んでもらえば、ほぼ分かるからである。その意味では、わたしは私小説作家であるのかもしれない。
—(以上、引用)—
で始まっています。
今回の「私の履歴書」自体、渡辺先生にとってある種の私小説だったのかもしれません。
数年前に作家である津本陽先生も「私の履歴書」を書いておられました。
この時も津本先生は、連載1ヶ月間の残り10日というタイミングで、まだ学生時代の戦争体験のことを丹念に書いておられました。この激しい戦争体験で得た死生観が、その後の執筆活動に大きく影響を与えたとのことです。
お二人に共通することは、ご自身の原体験を書いておられることです。
そしてその原体験が執筆活動の原動力になっている。
ご自身の深い体験に基づいて書いているから、説得力があるし、文章に言霊が宿っている。
私もプレゼンなどをする際に、人の言葉を借りて話してもなかなか説得力がないことを痛感しています。
しかし自分自身の経験を元に学んだことを話すと、不思議と相手に言葉にならないものが伝わるのですよね。
ビジネスパーソンが仕事の学びを本に書くことも同じで、自分自身が実体験した中からの学びを社会に伝えていくことが求められているのかな、と思いました。