「絶対の悪」も「絶対の正義」もない

平和な時代が続いてきた世界ですが、この2〜3年、急速にきな臭くなってきました。

そんな中で私たちは「善悪」の判断をしなければなりません。
では、どんな基準で考えればいいのでしょうか?

哲学者ユヴァル・ハラリは、その指針を示しています。彼は世界的ベストセラー「サピエンス全史」「ホモ・デウス」の著者でもあります。この2冊のうち「サピエンス全史」は、拙著「教養書100冊」でも取り上げました。

「サピエンス全史」は10年前の2014年刊行。人類の未来を比較的楽観的に描いた1冊でしたが、現在のハラリはこう述べています。

『私はそういった言葉をまったく違う時代に書きました。平和を満喫していた時代のことです。それ以来、状況は本当に悪化しました。パンデミック、ウクライナ侵攻、そしてハマスの攻撃です』

そしてこう続けてます。

『広島と長崎以来、初めて核兵器が戦闘に使用されるかもしれないのです。なぜならこの地域には、核戦力を持つ国がいくつかあるからです。ある種の“ 絶対的正義” を求めてはなりません』

拙著「教養書100冊」では、「サピエンス全史」紹介の最後の一節でこのハラリの言葉を紹介しました。

このハラリの発言は、ANN「報道ステーション」が2023年10月21日に行ったインタビューに基づいています。拙著刊行の1ヶ月前というギリギリのタイミングで掲載できました。

実はハラリは、このインタビューで実に様々なことを語っています。残念ながら拙著では、ページ数の制約でごく一部しか掲載できませんでした。

そこでここで割愛した部分を紹介したいと思いますが、その前に、まず一度情報を整理しておきたいと思います。

・ハラリはユダヤ人であり、故郷はイスラエルです。イスラエルは、歴史的に見て、実に様々な紆余曲折を抱えてきました。

・過去の歴史をザックリ端折って、第二次世界大戦の頃からの話をすると、ナチス・ドイツのユダヤ人迫害により、多くのユダヤ人がパレスチナ人が住んでいた中東のパレスチナ地域(いまのイスラエルがある場所)に逃げてきました。このパレスチナ地域は、かつてユダヤ人の故郷だったからです。2000年前、ユダヤ人はこの故郷を追われ、世界で2000年間もの間、流浪の民として生きてきました。

・その後、第二次世界大戦の戦勝国が話し合い、「パレスチナ地域を、パレスチナ人とユダヤ人で分けよう」と合意しました。そして1948年、ユダヤ人によって、このパレスチナ地域に現在のイスラエルが建国されました。

・しかし中東にいるアラブ人からすると、いきなりユダヤ人が中東にやって来て、突然イスラエルという国家が建国されたわけです。しかもパレスチナ人から見ると、住んでいたパレスチナの地をユダヤ人に奪われました。当然ながらモメます。「中東戦争」と呼ばれる戦争が何回も起こりました。

・そんな中でも、イスラエル国家内でもユダヤ人とパレスチナ人の争いが激化しました。一時は米国が仲介したりして和平ムードがあったものの、結局は破綻。その後、パレスチナを主導するハマスが台頭し、イスラエル側も強硬派が政権を取り、お互いにテロや内戦の混乱が激化していく状況が現在まで続いています。

・2023年10月、ハマスがイスラエルにミサイル数千発を撃ち込み、さらに戦闘員が侵入してユダヤ人住民を惨殺したのは、こんな状況下で起こったわけです。そしてイスラエル軍が、ハマスを一掃すべくパレスチナ自治区に侵攻しているわけです。

こうして歴史的な経緯を考えると、ユダヤ人であるハラリは、当事者でもあることがおわかりになると思います。実際にハラリも、ハマスに知人を何人も殺されています。

ハラリはインタビューで、正直に『現時点で私は客観的になることはできません』と言った上で、このように率直に述べています。

『痛みについて語るにしても、イスラエルのことでなければ頭にくるんです。「私たちが感じている激しい痛みを知らずになぜパレスチナなのか」と』

その上で、『絶対的な悪も正義もない』と言っています。
なぜなら、ほとんどの場合、被害者と加害者が同じだからです。

これは、先に述べたイスラエルの歴史を振り返ると、よくわかります。

ユダヤ人は2000年前に故郷を追われ、さらにナチス・ドイツによるユダヤ人600万の大量虐殺を経て、ユダヤ人国家「イスラエル」を建国しました。そして突然のハマスの空襲で数千人が亡くなっています。そんなパレスチナの民を主導する立場になったのが、ハマスです。そしていま、パレスチナ自治区のガザでは、イスラエル軍の侵攻で何万人もの犠牲者が出ています。

まさに「絶対な悪も、絶対な正義もない」。実は「お互い様」なのです。でも、双方が、どうしようもない状況まで追い込まれているのです。

こんな話を聞くと、「私たち日本人は、こんな平和にノホホーンとしていていいのか?」と思ってしまいますが、ハラリはこうも言っています。

『だから本当に重要なのは平和のための”スペース”をとっておくこと。平和のための余地を守るために最も重要なことかもしれません。なぜなら申し上げたように、イスラエル人の心もパレスチナ人の心も、今や完全に苦痛のみになっているからです。』

『こういった状況では平和のための”スペース”は生まれません。苦難の海に浸りきりの私たちでは、心に平和のための”余地”(スペース)がありません。だから皆さんで大切にしてください。』

いまのところ当事者として巻き込まれていない私たちだからこそ、できることがある、ということです。

今年、私たち個人も、当事者として様々な状況に巻き込まれるかもしれません。時として自分を見失ってしまい、冷静さをなかなか維持できないこともあるかもしれません。

そんな時、「絶対な悪も、絶対な正義もない」ということを頭の片隅に置いておくと、状況をエスカレートさせない歯止めになるかもしれません。

※ インタビューは下記を参照しました。「ANNnewsCH――歴史学者・ハラリ氏緊急インタビュー『イスラエル人もパレスチナ人も“苦痛の海”にいるからこそ』(2023年10月21日公開」(https://youtu.be/eVhGKMmqikY)

   

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日本地図をよく見直ると、全く気付かなかったことが見える

上の図は、皆さんよくご存じの日本地図です。

お隣の大陸には、北(地図の上)から、北海道の西側にはロシア、中国、北朝鮮、韓国があります。こうして見ると、日本はまさにアジアの端にあることがわかりますね。

では、大陸側の国からは、日本はどのように見えているのでしょうか?

これが下の「逆さ地図」です。

中国やロシアから見ると、日本列島は北海道から沖縄列島まで大きな弧を描き、彼らの太平洋への出入り口にスッポリと覆い被さる位置にあることがわかります。さらに沖縄列島の先には台湾があります。

こうして逆さに地図を見ると、色々なことがわかります。

現在、北海道の北側にある北方領土はロシアが支配しています。しかし北方領土は冬は氷に覆われて、船舶の出入りができません。ロシアの悲願は不凍港の確保です。120年前の日露戦争も、ロシアが不凍港を確保すべく朝鮮半島に進出してきたことがきっかけでした。

ロシアにとって不凍港の確保は最重要課題です。ちなみに太平洋戦争の終盤、日本の分割統治を米国などの連合国と議論していた際に「北海道はロシア(当時のソ連)が統治する」という合意の直前で日本が降伏し、ロシアの北海道進出を免れることができました。(詳細は拙著「教養書100冊」のBook61「昭和史1926-1945」参照)

また中国は「台湾は我が国の領土だ」という主張を断固として撤回しません。これもこの「逆さ地図」を見れば、台湾の確保が、中国にとって地政学的に重大な意味を持つことがわかります。最近の中国は、沖縄に対しても「沖縄はかつては琉球王国として中国との交流があった」という発言も始めて、ゆさぶりをかけてきています。

さらにこの図を見ると、この大きな弧を結んでいる日本・韓国・台湾の緊密な連携が安全保障上の観点でも、とても重要であることも、よくわかります。逆に中国とロシアから見ると、この弧を破るべく、日韓台の連携を崩す様々な工作を仕掛ける戦術が有効になります。

ちなみに東京市ヶ谷にある防衛省庁内には、「大陸側から日本がどう映るか」を理解するために、この「逆さ地図」があちこちにあるそうです。(出典:『【Deep Insight】日韓に迫る「同時危機」説』日本経済新聞 2023.11.23掲載)

このようにいままで当たり前に見ていたことでも、相手の視点で見直すことで、まったく異なる景色が見えてくるのです。

   

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朝活永井塾 第75回 『日本組織の特徴は何か? 中根千枝「タテ社会の人間関係」』を行いました

5月10日は、第75回の朝活・永井塾。テーマは『日本組織の特徴な何か? 中根千枝「タテ社会の人間関係」』でした。

「日本人って、やっぱり○○○だよね」

私たちはつい、こう口走ってしまいます。では日本人と海外の人は何が具体的にどう違うか、説明できるでしょうか?

もし答えに詰まるようなら、本書『タテ社会の人間関係』(中根千枝著)がおすすめです。1967年に刊行された、116万部超の超ロングセラーです。

著者の中根氏は、社会人類学者の草分けです。中根氏はインド、英国、イタリアに長期滞在し、現地で社会学の研究をした後、日本に戻り、こう思いました。「そういえば日本の集団構造って、どこも同じよね」。

日本社会は近代化しましたが、基本的な人同士のやり取りは変わっていません。たとえば年功序列。学生時代は先輩・後輩の上下関係が明確。国会議員は当選回数が重要。海外では年齢にかかわらず、能力があれば若くても抜擢されます。なぜ、こんな違いがあるのでしょうか?

そこで、中根氏がホテルにこもり、2週間で書き上げた論文が本書の元です。本書は半世紀を経ても色あせません。

最近はジョブ型雇用なども始まり、「古い慣習は変えよう」という機運も高まり、日本の組織は大きく変わり始めています。しかし日本の組織には日本の組織ならではの個性があります。日本組織の個性を理解することで、より日本にあった形の変革がスムーズにできるようになります。

そこで今回の朝活永井塾では、下記の本を使って、日本の組織について学んでいきました。

『タテ社会の人間関係』(中根千枝著)
『タテ社会の力学』(中根千枝著)

日本組織の特性をちゃんと理解した上で手を打つことが、ビジネス戦略実行の成否を握ることも多いのです。

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分】

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回6月7日(水)の朝活勉強会「永井塾」のテーマは『和を以て貴しはウソ? 山岸俊男「日本の「安心」はなぜ消えたのか」』です。日本人論が続きますね。申込みはこちらからどうぞ。

人と人との直接の関わりが貴重な世の中に変わっていく

新型コロナで、人と人の接触がすっかり少なくなりました。
この状況は続きそうです。

こんな中、2007年に出版された「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」を再読中です。

改めて思ったのは、人と人との関わりの大切さ。
スタバは広告を出しません。広告を出すお金があれば、店舗で顧客がより心地よく過ごせることに投資したり、無料のテイスティングサービスで新商品を知ってもらうことに投資します。店舗での顧客と従業員のふれあいが何よりも大切だ、と考えているからです。

いま、「ソーシャルディスタンス」で人との接触を避けることが最優先になっています。こんな時こそ、人同士の直接の関わりが、貴重な価値を獲得しつつあるように思います。

人同士の関わりやリアルの体験はデジタルでは代替できない、ということが、この世界的な自粛ムードで多くの人たちが実体験しています。

コロナ禍が一段落した後は、人同士が直接関わり合ったり、リアルな体験の価値が以前よりもずっと高くなる世の中に変わっていくようになるのではないでしょうか?

 

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2020-04-28 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

人生100年時代!辛い?楽しい?

「人生100年時代」と言われます。
60歳定年でも、残り40年。年金も繰り上げ支給になりました。

「昔はよかった。定年後は年金支給で悠々自適だった。今は年金も頼れない」

本当にそうでしょうか?

 

国民皆年金が実現した1960年頃の平均寿命は、男性65歳、女性70歳。
60歳定年で引退し、仕事をせずに悠々自適な生活ができましたが、その期間はあまり長くはありませんでした。

 

いまは60歳で定年後、人生100年として残り40年もあります。一方で現在の40代・50代は「年金には頼れないかも」という漠然とした不安があります。60歳で定年を迎えても、仕事は続けざるを得ないわけです。

これを「辛い」と感じるか、「楽しい」と感じるか、です。

「仕事が苦痛」と感じる人にとっては、辛いですよね。

しかし「やりたい仕事をやっている」という人にとっては、こんなに「楽しい」ことはありません。
80歳まで仕事を続けるとしたら、プラス20年も楽しめるわけです。

そのために大切なのは、「自分という商品づくり」を常に考えること。

そして自分の商品価値の賞味期限が切れないように常に磨き続けることだと思います。

私はいま56歳ですが、まだ最低30〜40年は仕事を続けたいと思っています。今の仕事が大好きなので、とてもワクワクしています。

 

せっかく与えられた「人生100年時代」、大いに楽しみたいですね。

 

 

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「忖度」が、日本企業を「集団無責任」にする

「忖度」(そんたく)という言葉。最近よく目にしますよね。
広辞苑によると「他人の心中をおしはかること。推察」とあります。
日本人は他人の考えにとても敏感です。これは私たち日本人の「資質」でもあります。

しかし私は、「忖度」は日本企業を滅ぼしかねないと思っています。

実は私たちも知らない間に忖度をして、色々なトラブルを起こしています。他人の問題ではなく、自分たちの問題なのです。

 

私のささやかな経験を2つご紹介します。

ある社会人合唱団で、事務局を担当していました。
合唱団では集合練習が必須です。毎週末、GW期間中もお盆休みも、皆で集まり練習していました。平日の仕事もあり、毎週末の練習は体力的にもきついので、「たまには休みたいなぁ」と思うこともありました。

合唱団は複数のパートで構成され、各パートにリーダーがいます。リーダーの集まりで「GW期間やお盆休みくらいは、休みませんか?」と提案したところ、リーダーの一人であるAさんが、こう言いました。

「困ります。みんな毎週やりたいと言っています」

全員が集まった会議で「毎週やりたいですか?」と挙手をお願いすると、真っ先に手を上げるAさんに続き、ぱらぱらとほぼ全員が手を上げます。

「全員が希望するのなら、毎週やりましょう」と、毎週末の練習を続けていました。

ある日、AさんからBさんにリーダーが変わりました。Bさんから、こう言われたました。

「みんな『たまには休みたいよね』って言ってますよ。Aさんからは、永井さんの方針で毎週やっていると聞きました。検討していただけないでしょうか」

(え?そんなことになっていたのか!)と驚きました。

実は私も含めた全員が、Aさんの「何としても毎週練習したい!」という強い気持ちを忖度していたのです。

 

こんなこともありました。随分前、これも仕事から離れて、写真関係のネット会議室の運営を担当していました。ある日、Cさんというシニアな方から、こう言われました。

「永井さんが会議室に投稿したあの内容、Dさんに対して失礼だ。謝罪しなさい」

(ああ、気遣いが足りなかったな)と思い、お詫びの言葉とともに、改めて投稿したところ、Cさんは再度こう言ってきました。

「永井さんは、まだわかっていない。Dさん、傷ついていますよ」

後日、Dさんと会った際に話してみると、不思議そうにこうおっしゃいました。

「はぁ?ゼンゼン気にしていないんだけど。Cさん、どうしちゃったの?」

 

2つのケースとも、他の人のことを「忖度」(そんたく)しています。
この「忖度」がいい面で出ると、「相手への気遣い」や「思いやり」になります。
しかし「忖度」が悪い面で出ると、相手に振り回されたり、振り回したりして、そもそも何をしたいのかわからなくなることもあります。

仕事でも、社内で「〇〇社長のご意向だ」「××専務のご方針だ」というかけ声でプロジェクトが進むことがよくあります。
しかし実際には社内政治に長けた人が、〇〇社長や××専務に言質を取った上で、〇〇社長や××専務のご威光を使い、Aさんのように自分に利していることも多いのです。

 

先に挙げた2つのケースは、身近でささやかなものです。

一方で最近の日本の組織では、大きな問題が起こり、なかなか解決できないケースが増えてきました。一時期のシャープの経営危機、東芝の問題、福島第一原発の問題…。

どの問題も不思議と共通するのは、「誰が問題の責任者なのかが、よくわからない」という点。組織の中で「忖度」を続け、責任から逃れ続けることで、誰が責任者なのかわからないまま、モノゴトが進んでしまったことも、大きな要因だと思います。

 

「忖度」の問題は、自分が主語になっていないことです。

「私はこう考えている。だからやる」ではなく、
「〇〇さんがこう言っている。だからやる」となっているのです。

 

「〇〇さんがこう言っている。だからやる」というのは、一見、気遣いがある美しい言葉ですが、実は無責任です。もし間違っていても、自分で責任を取らずに済むからです。

「私はこう考えている。だからやる」というのは、一見すると自己中心的で身勝手な言葉ですが、実は責任を伴います。もし間違っていたら、自分の責任が問われます。

「集団責任」という美しい言葉は、容易に「集団責任」になります。
「〇〇さんが言っている。だからやろう」と思っている瞬間に、思考が停止し、他人にコントロールされているのです。

忖度して何も自分で決められないのが、今の日本です。
どこか戦前の日本と似た、危うい感じがします。

まず、あなたは、どうしたいか?
その上で、他の人のことを、どう考えるか?

すべてはそこから始まるのです。

 

 

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「破壊的イノベーション」トランプは新たな顧客を生み出したが…

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2016年11月の大統領選挙で、大方の予想を覆し、ドナルド・トランプがヒラリー・クリントンを破って、大統領に選ばれました。

当初は誰もが泡沫候補と思っていたトランプが大統領に選ばれるのは、とても意外なことに思えます。かく言う私も、まさかトランプが大統領に選ばれるとは思いませんでした。

 

さて市場では、私たちの大多数が、…

「こんなのまがい物だ」
「売れるはずがない。誰が買うんだ?」

…と思っていた商品が、いつの間にか新しい顧客を掴み、大きく成長し、主流製品になることがよくあります。マーケティングの世界ではこのような現象を、「イノベーションのジレンマ」と呼んでいます。

 

たとえば50−60年前。ラジオの世界では、真空管ラジオが全盛期でした。大きくて重いものの、音質はいいので、米国では居間に置いて家族で聞いていました。

その頃、ソニーはトランジスタラジオを発売しました。小さく軽く、電池で動きますが、音質はよくありません。当時、真空管ラジオを聴いていた誰もが「こんなのオモチャだ。誰が買うんだ?」と思っていました。

しかし知らないところで、トランジスタラジオを買っていた人たちがいたのです。 当時、ロックンロールが大流行。エルビス・プレスリーが大人気で若者の心を掴んでいました。しかし親の世代は「ロックは不良の音楽」と言って、居間の真空管ラジオで聴くのを許しませんでした。そこで若者は、トランジスタラジオを買って家の外で聴き、仲間と一緒にロックを踊っていたのです。

真空管ラジオメーカーにとって、怖いのはその後です。技術は進歩します。トランジスタラジオは性能を急速に向上させて、真空管ラジオに追いつきました。こうなると真空管ラジオは重いだけ。真空管ラジオは、急速にトランジスタラジオに代替されていきました。

かつて真空管ラジオもイノベーションであり、「居間で真空管ラジオを聴く」という顧客を生み出しました。しかしその顧客を大切にするあまり、「外でトランジスタラジオを聴く」という新たな顧客が生み出されていることに気がつかなかったのです。そしていつの間にか破壊的イノベーションであるトランジスタラジオが進化して主流になり、真空管ラジオは主流から外れてしまうのです。

 

極めて単純化すると、真空管ラジオがヒラリー、トランジスタラジオがトランプと考えると、なぜトランプが当選したのかがわかるのではないかと思います。

ヒラリーは、ビル・クリントンやオバマといった民主党主流派の流れをくみ、「既に米国は偉大だし、これからも偉大であり続ける」と言いました。 「今の米国のままであって欲しい」という人たちは、ヒラリーを支持しました。

一方でトランプは、「米国は弱くなった。仕事がなくなったのは移民のせいだ。メキシコ国境に壁を作り、米国を再び偉大な国にする」と言いました。

ヒラリーを支持する人たちからすると、トランプが言うことは事実に基づいていないし支離滅裂です。しかしロックが大好きな若者がトランジスタラジオを買ったのと同じく、「今の米国を変えて欲しい」と考える人たちの心は掴んでいました。そして親の世代がトランジスタラジオが流行っているのを知らなかったように、ヒラリーを支持する人たちも今の政治への不満がこんなにも溜まっていたことに気がつかなかったのです。

その結果、こうなりました。赤がトランプ、青がヒラリー。州の各地区での支持率です。特に中部ではトランプ圧勝です。

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米国人の識者たちは「自分の周りにはトランプに投票したいという人は一人もいない。何で選ばれたのかまったく不可解だ」と一様に口を揃えて言っています。米国外にいる私たちも、「誰がトランプに投票するんだ?」と思っていました。加えて直前の世論調査ではヒラリー優勢でした。

しかし、内心トランプを支持する有権者に、世論調査で「トランプを支持するか?」と聞いても、リベラリストからは責められてしまう状況もあり、その場では「支持しない」と答えながら、実際にはトランプに投票した人が多かったようです。

 

同じことは、企業に対しても起こりえます。「絶好調、大丈夫」と思っていても、「こんなのまがいもの。オモチャ」と思っていたライバルが、知らない間に新しい顧客を獲得している。そういうことが静かに起こっているかもしれないのです。

常に顧客は変わり続けていると考えて、顧客も気がつかないような、隠れた顧客の課題を見つけ出す。そして解決策を作る。その上で、実際の商品を見せて、本当にお金を出して買うかどうかを見るしかないのです。仮説検証の繰り返しです。

 

さて、トランプ次期大統領の課題は、憎悪を煽って当選したことでしょう。これによる今後の影響は計り知れません。

望むらくは、音質が悪かったトランジスタラジオが急速に性能向上して真空管ラジオの性能を追い越したように、トランプも急速に進化して、既存の政治家よりも高い能力を獲得することを願いたいところです。

 

 

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マーケティング思考欠如とその無自覚が、日本経済低迷を招いている

悩み

日銀の「異次元金融緩和」が続いてますが、物価は上がらず、株価も低迷したまま。

一方で米国の株価は最高値を伺う展開です。

とはいっても、多くの人たちはどこか、「それは日銀と政府の仕事でしょ。自分は目の前の仕事で忙しいし」と思っているようです。

かなりヤバイ状況だと思います。

私は、物価が下がるのも、株価が低迷するのも、ビジネスパーソンのマーケティング思考欠如と、それを自覚していないことが、大きな原因だと思います。

 

「いいものを作っていれば売れたモノづくりの時代」、日本からは世界ヒット商品が続々生まれていました。

しかし今の日本からほとんど生まれていません。Pokémon GOのように新しい価値を生み出して頑張っている日本の企業(任天堂・株式会社ポケモン・米国ナイアンティックの3社)もありますが、極めて少数です。

 

「体験を求めるコトづくりの時代」になったのに、気がついていない。

だから、お客さんが心から「欲しい」と思うようなワクワクする商品やサービスが生まれない。

「お客様が買う理由」を創り出していないのが、大きな問題なのです。

 

その代わりにやっているのが、ムダを省く生産性向上です。

これも大切ですが、生産性向上だけでは需要は増えません。(政府は公共投資で需要を増やそうとしていますが、財源が必要なので限界もあります)

需要を増やさずに、生産性を向上させて供給力を増やせば、需要と供給の関係で、逆に価格は下がります。そしてデフレも進みます。

 

本来需要を増やすために必要なのは、「お客様が買う理由」を創り出すことです。

これは日銀や政府の仕事ではありません。

ビジネスパーソンが自分の仕事を通じて、「お客さんが買いたくなるような」価値を創り出すことを考え抜き、それを実現するしかありません。主役は私たちビジネスパーソンです。

では、どうすればよいでしょうか?

 

厳しい指摘をしている方がいます。一橋大院商学研究科のクリスティーナ・アメージャン教授です。

インタビュー記事で、日本のマネジメントのビジネス知識について「幼稚園レベル」と厳しいご指摘をしておられます。

十分なビジネスの基礎知識、ビジネスナレッジを備えた人材が足りないのです。社外取締役に限らず、日本の経営者、マネジメント層は基本的なMBA(経営学修士)の知識が不足しています。ハイレベルな知識を求めているのではありません。最も基礎的な知識を欠いているのです。厳しいようですが、幼稚園レベルです。

 

経営者も含めた私たちビジネスパーソン一人一人が、仕事で役立つ実践的で最低限のマーケティング思考を身につけ、日々の仕事を通じて「お客様が買う理由」を創り出していくことが必要だと思います。

 

 

 

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技術的な卓見性を兼ね備えた戦略を立てて、愚直に実行するイーロン・マスクの凄さ

イーロン・マスクについては、当ブログでも何回かご紹介してきました。

宇宙ビジネス・電気自動車・太陽エネルギーに挑戦するイーロン・マスクの実像。「モノゴトに魔法はない。志を持って実行するのみ」

火星移住に向けて着実に宇宙ロケット技術を進化させているイーロン・マスク

 

このイーロン・マスクの取り組みからは、実に色々なことを学ばされます。

その一つが、

①最初にぶれない戦略を立てること
②そして、それを愚直に実行すること

 

たとえばスペースX社では、このように考えました。

SpaceX_logo.svg

現状:既存のロケットは特注品であり、材料コストは2%。一方、民生品でたとえばパソコンは材料コストは90%。しかもロケットは再利用せず使い捨て
戦略:ロケットの総コストは1/100程度に引き下げることは可能。民生品を使用し、再利用する。
実行:3回の失敗を重ね、創業8年目に独自開発の宇宙ロケットを軌道投入して回収。民間の宇宙船としては史上初。さらにロケット回収技術も試行錯誤を繰り返しながら開発中。

 

電気自動車を開発販売するテスラでは、このように考えました。

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現状:電気自動車はコストが高く、エコカーとしてなかなか普及が進まない。
戦略:まずプレミアムカーとして10万ドルを超える高級車を発売。次に5万ドル程度のミドルクラスの4ドアセダン。最後は大衆の手に届く2万ドルクラスのエントリー車を大量に生産。
実行:レーシングカーの名門・英国ロータス社と共同開発契約を締結。納期遅れとコスト増で苦しみ顧客の前払い金を私財で保証までしながら電気自動車を開発。その経験に基づき蓄積した技術を活かして、ミドルクラスに広げる。量産効果でエントリー車を量産。

 

そのテスラで最近発表したTesla Energyブランドの蓄積型バッテリーユニットでは、このように考えました。

現状:原子力発電と比較して太陽光発電が劣るのは、発電の安定性。昼間の太陽が照る時間しか発電できない。
戦略:高信頼性があり、スケーラブルなバッテリーを低コストで量産すれば、太陽光エネルギーの不安定性を補える。これを20億台展開できれば、全人類のエネルギーを太陽光発電で代替できる。現在世界で20億台の自動車があるので実現不可能な数字ではない。
実行:テスラーの電気自動車で試行錯誤しながらバッテリーを実装。

 

イーロン・マスクはある雑誌のインタビューでこのように語っています。

「革命的なブレークスルーによってではなく、コツコツと地道な努力を積み重ねることで成し遂げたんだ」

技術的な卓見性を兼ね備えた戦略性に、日本企業のお家芸でもあった愚直な仮説検証の積み重ねが加わったイーロン・マスク。

今後も目が離せません。

経験から得られる暗黙知が大事な理由

書物やネットから得る知識と、経験で得る知識。

前者の「書物やネットから得る知識」は、幅広く色々なものを手っ取り早く仕入れることができます。このような知識は「形式知」と呼ばれます。

私もついスマホばかり見てしまうことも多いのですが、ネット上には色々な面白い情報がころがっています。ともすると、一日中スマホなどを長めながら、そのような情報を見て学んだつもりになってしまうことも、なきにしもあらずです。

Couple not talking to each other typing on mobile phones

後者の経験で得る知識は、そうはいきません。限られた時間でありとあらゆるものを経験できることはできませんので、得られる知識は限定的です。

しかし決定的に異なる点があります。経験で得られる知識は、言葉にできないことが得られるのです。このような知識は「暗黙知」と呼ばれます。

 

たとえば組織のリーダーとしての役割を担う場合。

人間の集団である組織は、生き物です。ともすると参加メンバーのエゴがぶつかり合ったり、メンバーのメンタル面のきめ細かいフォローをしたり、あるいは志をともにして素晴らしい何かを目指したりと、リーダーの立場でなければ得られない経験と学びがあります。楽しいことばかりではなく、苦しいことも多いのです。

このような学びは時間はかかります。しかしネットや書物に書かれているリーダーシップ論を学ぶよりも、はるかに大きなことを学ぶことができます。

 

では、この「経験で得られる知識」を得るためには、どうすればよいのでしょうか?
答えは字の通り、「経験を重ねること」。
つまり、「実際に行動すること」、言い換えれば「行ずること」に尽きると思います。

 

ネット社会になり、一見面白おかしい形式知が氾濫する現代だからこそ、実際に行動することと、その経験から生まれる「暗黙知」がますます大切になってきています。

 

では形式知を軽視していいかというと、これはまた行きすぎです。
自宅にいながら、ネットで大量の形式知が得られる時代は、かつてありませんでした。この利便性は享受すべきでしょう。

 

形式知が大量に得られる時代ですが、形式知だけは不十分。
暗黙知は経験から得られますが、経験論だけでも不十分。

結局、両者のバランスが必要であることを認識することが必要なのだと思います。

 

 

「朝シフト」が、低い労働生産性に悩む日本企業を救う

これまで日本企業は残業を減らす努力を十分にしてきたとは言えませんでした。

2008年2月にgooリサーチ(現・NTTコムリサーチ)が行った「残業と仕事の効率化に関する意識調査」という調査によると、「どのようなツールを用いて仕事の効率化を実現しているか」という質問に対して、66%が「特に何もしていない」と回答しています。

 

そして2週間前に当ブログで書いた「良くなってきた景気に、残業時間増で対応している日本企業」で紹介したように、「好景気で仕事が増えると残業で対応」、「不景気で仕事が減ると残業が減る」、というパターンを繰り返してきました。

景気判断の指標となる日銀短観上の景気の山と谷は、残業時間の山と谷と、このように見事に一致しています。

残業時間推移

「景気が良くなると残業が増える」というのは、雇用慣習を含めて、日本企業の構造的な問題でもあります。

 

しかし一方で、労働生産性が国際的に大きく見劣りするというデータもあります。

2015/4/9に日本経済新聞に掲載された記事「労働生産性 仕事の効率、世界に見劣り」によると、2013年の1時間あたりの労働生産性は日本は41.3ドル。OECD(経済協力開発機構)加盟34ヶ国中20位。トップのノルウェイ87ドルの半分以下、4位の米国66ドルの2/3以下です。

 

雇用慣習はなかなか変えられませんが、生産性向上の余地はまだまだ大きいですし、努力はすべきですよね。

 

最近になって、取り組む日本企業も増えてきました。

3週間前に当ブログで書いたエントリー『「残業=カッコいい」から、「残業=カッコ悪い」の時代へ』で紹介したように、システム開発大手のSCSKでは、残業時間を短くした人の方が得をする人事制度を7月に導入します。

また、2015/4/9の日本経済新聞の記事「残業削減へ朝型勤務 東ソー、早朝は割増金 東京海上、17時半に退社 政府が助成金検討」では、このような各社事例を紹介しています。

東ソー:早朝勤務に対し割増金の支給を開始。さらに一部職場を除き午後8時以降の残業を原則禁止

コニカミノルタ:午後8時以降の残業は申請を求める

サトーホールディングス:「完全フレックスタイム制」開始。午後8時以降の残業は原則禁止。導入後の昨年12月の総残業時間は例年より3割減。

東京海上日動火災保険:若手・中堅社員を対象に週1回の頻度で午後5時半の退社を求める制度を導入。

伊藤忠商事:午後8時以降の残業を原則禁止し、早朝の時間外手当割増率を25%から50%に。

ユニ・チャーム:始業・就業時間を1時間繰り上げ (通年サマータイム)

 

このように、生産性向上が必要と認識している企業は、既に取り組みを始めています。

そして労働生産性を向上するヒントの1つが、朝シフトです。

上記の企業の多くが、「夜に残業する」という常識を「朝に残業する」という常識に変える挑戦を行っておられるのも、偶然ではありません。上記記事でも、政府が経団連や日本商工会議所、全国中小企業団体中央会に取り組みを要請する方針であることを紹介しています。

日本企業の労働時間が長い1つの要因が、「付き合い残業」。企業としては「付き合い残業は止めましょう」と言うだけでなく、それを抑制し具体的に生産性を上げる施策が必要です。

 

4年前に出版した拙著「残業3時間を朝30分で片づける仕事術」でも、朝シフトを提唱し、個人で出来る具体的な取り組みをご紹介しました。

私自身も、2年前に会社員を卒業しましたが、今も変わらず朝シフトを続けており、その生産性の高さは実感しています。

本書が出版されてから4年が経った今も、朝シフトや時間管理に関する取材を数多くいただくのも、企業の問題意識を反映していると思います。

 

 

個人の生産性向上は、企業の競争力強化に繋がり、その結果、企業は成長していく筈です。

今後、このような取り組みを始める企業が増えることを願っています。

 

東村アキコ「かくかくしかじか」……ひたすら行ずることの大切さ

東村アキコさんはとても好きな漫画家の一人です。

その東村アキコさんが「かくかくしかじか」という作品でマンガ大賞2015を受賞したとのことで、早速Kindle版で第1巻をダウンロード。2日間で一気に全5巻を読了しました。(第5巻のみまだKindle化されておらず、紙の本で読みました)

かくかくしかじか5

 

話は東村アキコさんが宮崎の高校生だった時代から始まります。スパルタ美術教室の日高先生と出会い、美大に入り、社会人となり、漫画家になるまでの日高先生との8年間を描いた実話です。

厳しい日高先生は、常に「描け」と言います。とにかく手を動かして描く。描く意味や、自分が何を描きたいかなどは考えず、ひたすら目の前のものを描く。

日高先生の最後の言葉も、「描け」でした。

そして真剣に生きる。

 

ひたすら目の前の課題に対して行ずる大切さ。

行じた意味は、あとから付いてくるかもしれない。(しかし、ついてこないかもしれない)

これは絵に限らずに、生きることすべてに共通な、大切なことだと思います。

それがなかなか出来ないのも、人間の弱さ。

東村アキコさんは、その自分の姿も、本作品でありのまま描いています。

 

このように書くとシリアスなストーリーに思われるかもしれませんが、基本は東村アキコさんのいつもの作品通り、コメディ路線です。

 

「たまにはビジネス書から離れた本を読んでみたい」という方にはお勧めです。

 

三十数年ぶりに読んだ夏目漱石「こころ」は、実はまったく違う本だった

最初に夏目漱石「こころ」を読んだのは高校生の頃。現代国語の授業でした。この時、私は文庫本も買って、夢中になって読みました。

若かった当時の私は、単純に物語として楽しんでいたように記憶しています。

ただなぜ表題が「こころ」なのか、本書のテーマであるエゴイズムとは何なのか、なぜ先生が死を選ばざるを得なかったのか、十分に理解できませんでした。

 

先日、Kindle版で三十数年ぶりに読む機会がありました。読み始めると一気に引き込まれ、1日で読み終えてしまいました。

深夜に読み終えた後、自分の心に重く黒いものがドッシリとのしかかってきて頭を支配し、なかなか寝付けませんでした。

 

本書は三部構成。第一部と第二部の語り手は「私」、第三部の語り手は「先生」です。

第三部で自分の若いころを振り返り語っている「先生」は、信頼している人に騙されて人間不信に陥りますが、「奥さん」と「お嬢さん」に出会って人間への信頼を取り戻し始めます。そして数少ない友人であるkを助けようとしますが、結局このkを裏切ることになり、kは自殺。先生はその重荷を誰にも言えずに背負って生き続けています。

 

一貫して「先生」が語っているのは、「人間のエゴ」。

しかしエゴというのはとても厄介なものです。

「自己保身能力」としてのエゴを獲得したおかげで、生物は誕生してから数十億年間、生き長らえてきました。そのエゴをなくすということは、死を選ぶこと。エゴはなくそうとしても、本来なくならないようになっています。

だから厄介です。

そしてエゴは巧妙です。私たちは、他人のエゴはすぐに気づきますが、自分のエゴにはなかなか気がつきません。

エゴは、人の心の奥底に気がつかないように様々な形で潜み、そしてあるとき密かに現れて、時としてあたかも善の形も取りながら、知らない間に他人を攻撃するのです。

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「自己保身能力」としてのエゴをなくすために、「先生」は死を選ばざるをえなかったのかもしれません。

読了して、本書の表題が「こころ」であることに深く納得しました。

 

三十数年、人生で多少の経験をしてきたおかげで、本書で夏目漱石が伝えたかったことが、少しわかったように感じました。

 

なお、本書はAmazon Kindleで無料で購入できます。

良くなってきた景気に、残業時間増で対応している日本企業

国内景気も、だいぶ良くなってきました。

しかし一方で、景気改善には、長時間労働で対応しているのが現実のようです。

 

2015年3月23日の日本経済新聞に「なぜ減らない、長時間労働 昨年、正社員の残業最長に 長く働けば昇進? 意識改革進まず」という記事が掲載されています。

—(以下、引用)—

日本人の長時間労働が減らない。2014年のデータを見ると残業時間は年173時間で前年より7時間、20年前より36時間増え、統計をさかのぼれる1993年以来、最長になった。

—(以上、引用)—

記事では、長時間労働の理由の一つに、終身雇用を挙げ、受注の増減で社員を増減する米国企業と異なり、「今いる社員の労働時間を増やしたり減らしたりして対応するのが一般的」な日本企業の考え方を挙げています。

確かに労働流動性の問題は根深いですね。

 

試しに、記事中にあった1994年から2014年までの年間残業時間と、景気との関連性を見るために、日銀短観と重ねてみました。

結果はこの通り。

残業時間推移

山と谷が見事なほど重なっていて、「景気が良くなれば、残業時間を増やして対応する」という仮説を裏付ける結果となっています。

 

また、「働く時間が長い人を評価する企業風土」も挙げています。

—(以下、引用)—

山本勲・慶大教授の調査によると、長く働く人ほど、出世する傾向があった。課長の手前の大卒社員を継続調査したところ、週の労働時間が10時間延びるごとに、翌年に課長に昇進する確率が3%上がるという結果が出た。

—(以上、引用)—

 

「より短い時間で、高い生産性を」と提唱してまいりましたが、道のりはまだまだ遠く、「景気改善→残業増で対応」「景気悪化→仕事量減量で対応」という考え方を改める必要がありそうです。

 

記事では、「朝残業」を取り入れて効率性を高めて、残業を減らした伊藤忠の例も紹介しています。

また先日のブログで紹介したように、残業しない方が時間単位給与が上がる仕組みを取り入れたSCSKのような事例も出てきています。

 

まだ統計の数字には出ないレベルで、ゆっくりとではありますが、日本企業も変わっていこうとしているのではないかと思います。

 

 

近藤麻理恵さん著「人生がときめく 片づけの魔法」は、凄い本だった

遅ればせながら、あの140万部を突破したミリオンセラー、近藤麻理恵さん著「人生がときめく 片づけの魔法」を読みました。

本書は発売丸4年が経過しているにも関わらず、なんとアマゾンで100位前後をキープしています。

 

読んで実感しましたが、凄い本です。

何が凄いかというと、その圧倒的な説得力。

 

実は私、モノが捨てられない性格です。

昨晩本書を夢中で読んでいたらあっという間に1時間が経過、風呂に入る時間になりました。

風呂に入る前に無性に片付けがしたくなり、衣類の片づけを始め、5分間でビニール袋1袋分のゴミが出ました。

「モノを片づけたい」という強烈な動機付けをしてくれる上に、その具体的な方法論もとてもわかりやすく書かれています。

自分の行動や習慣を変えるという意味では、近年読んだ本の中では最強の本でした。

 

どこが凄いのか、改めて考えてみました。

 

まず、効果が明確です。

アマゾンの紹介文は、シンプルに一行だけです。

リバウンド率ゼロ。一度習えば、二度と散らからない、「こんまり流ときめき整理収納法」

 

方法論も明確でシンプルです。

片づけでやるべきことは2つだけ。「モノを捨てるかどうか見極める」「モノの定位置を決める」

モノを選ぶ基準は、「触ったときに、ときめくか」 ときめかないものは捨てる。

 

さらに、片づけノウハウが網羅的です。たとえば、片づけるモノについては、…

・衣類の片づけ

・本の片づけ

・書類の片づけ

・小物の片づけ

・思い出品の片づけ

・写真の片づけ

「モレなく、ダブりなく」(MICE)になっていますね。

それぞれについても、極めて具体的に方法論が書かれています。

 

また文体がユーモアあふれ、かつとてもわかりやすく、説得力があります。たとえば、

「謎のコード類は永遠に謎のままです。…謎のコード類は捨ててしまいましょう」

「途中まで読んだ本も最後まで読みきる必要はありません。その本の役割は途中まで読むことだったのです」

 

くわえて、「捨てるときは、モノに感謝する」という優しさがうかがえるお人柄。

 

「どうしても、モノが捨てられない」という方に、モノを捨てる強いモチベーションを与えてくれる本です。私も、片づけに励もうと思います。

 

こういう本、素晴らしいですね。

 

ブルーボトルの秘密は、日米の強みの融合にあった

ついにブルーボトルコーヒーの海外初出店となる店舗が、清澄白河にオープンしました。このタイミングで、創業者のジェームス・フリーマンCEOも来日されました。

そのフリーマンさんに、Business Media誠が取材した記事が掲載されています。

ブルーボトルコーヒー創業者が語る、日本進出が必須だった理由

これまでのコーヒーのサードウェイブ本で紹介されていたフリーマンさん。本記事は最新メッセージでとても参考になりましたので、ご紹介したいと思います。

 

—(以下、引用)—

米国での事業を海外に拡大するのがゴールだったわけではなく、サービス精神やホスピタリティの高い日本に進出することでBlue Bottle Coffeeのビジネスが発展すると考えていました。つまり、Blue Bottle Coffeeにとっては日本ありきだったのです。その日本という国がたまたま海外だったわけで、海外戦略のために日本に進出してきたということではありません。

—(以上、引用)—

フリーマンさんが日本に古くからある喫茶文化に大きく影響されてブルーボトルを始めた、という話しは有名です。

このフリーマンさんの言葉からも、日本の喫茶文化は、ブルーボトルのアイデンティティの一部であることがうかがえます。

 

—(以下、引用)—

温度、酸味、焙煎や抽出などに関する細かなデータを取っています。こうしたデータに基づき、一杯一杯コーヒーをおいしく入れるのにこだわった仕組みを次々と店舗に導入しています。日本でここまで厳密にやっているコーヒーショップはまだ少ないので、サンフランシスコの文化を持つBlue Bottle Coffeeの良さを広めていきたいです。

—(以上、引用)—

ここ(特に太字)を読んで「なるほど!」と思いました。

ブルーボトルは、コーヒーのサードウェイブという流れを象徴する店です。

コーヒーのサードウェイブとは何か?

コーヒー豆は農産物です。他の農産物同様に、産地・種類・栽培方法などによって色々な個性があります。しかしともすると、これまではそのような個性はあまり重視されず、むしろ味を一定品質に保つために複数の豆をブレンドしたり、深煎りして豆の個性を消していました。

そこでコーヒー豆の個性を重視し、「シングルオリジン」というコーヒー豆単品の個性を活かしたコーヒーを提供していこう、という考え方が、コーヒーのサードウェイブです。「サードウェイブ=浅煎り」とも言われますが、豆の個性を活かした味わいにするために浅煎りになるのですね。

様々な個性のコーヒー豆があり、焙煎や抽出も様々な方法があるので、組合せは千差万別になります。

そこでデータを取ることが必要になります。かつてコンピューターが普及していなかった時代は、恐らくこのような情報を職人が感覚的に身につけたり、メモに取っていたのでしょう。しかしこの方法では、網羅できるコーヒー豆の種類は限定的です。

シングルオリジンでデータ量が爆発的に増えるので、必然的に細かにデータを取り、それを共有しあうことになります。言い換えると、コーヒーのサードウェイブはITが支えている、という見方もできます。

 

—(以下、引用)—

スペースが空いているから出店するのではなく、その環境がBlue Bottle Coffeeらしさを表現できるかどうかが重要です。厳選して検討していきたいです。

……ビジネスありきで始めたわけではありません。自分が本当に好きなコーヒーを飲みたいと思って、店を開業しました。

—(以上、引用)—

拙著『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』でも、「お客様に価値を提供するには、自分らしさを徹底的に考えることが必要」ということをご提案していますが、まさにフリーマンさんもそうおっしゃっています。

  

—(以下、引用)—

日本は伝統的な職人気質があり、コーヒーに対するオリジナルの技法やナレッジをその人だけが知っているという特徴があります。一方で、米国は直接農園に出向いてコーヒー豆を買い付けてくるといった調達の面で進んでいます。また、焙煎の温度やコーヒー一杯あたりの重さ、量など細かい数値データを蓄積、分析している点も優れています。この両者の良いところを合わせ持ったのがBlue Bottle Coffeeだと考えています。

—(以上、引用)—

この部分も新たな気づきでした。

日本の強み:日本は伝統的な職人気質

米国の強み:コーヒー農園からの直接調達+データ蓄積&分析

ブルーボトルの強み=日本の強み+米国の強み

ということですね。

 

新たな価値は、異なる複数のモノが融合することで生まれるのだ、という1つの事例が、ブルーボトルなのではないかと思いました。

 

『「イスラム国」でなく、ISILのように、誤解が生じない表現を検討して欲しい』というトルコ大使館の提案。そこで早速、私の過去ブログも修正しました

トルコ大使館が、在京報道各社にこんなお知らせを2月6日に出しています。(最近SNSをあまり見ていないこともあり、寡聞にして昨日知りました)

Büyükelçilik Duyurusu (大使館のお知らせ)

 

一部抜粋します。

—(以下、抜粋)—

平和を重んじるイスラム教の宗教名を汚すこの「イスラム国」という表記を、卑劣なテロ行為を繰り返す一集団の組織名としてどうか使用されないよう切に願います。世界の他の国々において「イスラム国」ではなく、DAESH、ISIL等の表現を用いる例があるように、このテロ組織に関する報道で誤解が生じない表現の仕方について是非検討いただき、イスラム教徒=悪人を連想させるようなことがないよう配慮いただきたいところす。

—(以上、抜粋)—

確かにまったくおっしゃる通りですね。

そこで自分の過去ブログを読み直すと、下記3件のエントリーで「イスラム国」という表記がありました。

2015/1/27 「イスラム過激派とは何か」を理解するために

2015/2/02 日本人の成熟さが問われるとき

2015/2/03 「イスラム国の大義名分は何か?」 歴史から学ぶ大切さ

「これはいけないなぁ」と考え、変更履歴を付けて修正しました。

 

マスコミは、ビジネスの構造上、顧客が求めるものを提供しなければ存続できないという宿命を持っています。

ですので、一般大衆である私たちが変わることで、一般大衆を収益源である顧客とするマスコミも変わっていくのではないかと思います。

ということで、まず我々の行動から、変えていきたいですね。

2015-02-11 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

「ISILの大義名分は何か?」 歴史から学ぶ大切さ

中東地域各国の国境の一部は、なぜか直線になっています。

ISILイスラム国が活動しているシリアとイラクの国境も、直線です。

国境が直線というのは、ちょっと不自然ですね。「そう言えば、不思議だな」と思った方も多いのではないでしょうか?

 

イスラム王朝であるオスマン帝国は、17世紀には地中海一帯を支配するまでに拡大しました。1529年と1683年にはウィーンを包囲するなど、西欧キリスト教社会にとって大きな脅威でした。このようなこともあって、特に欧州の人たちには、「オスマンの脅威」はトラウマになっていると言われています。

当ブログでよくご紹介するコーヒーも、この時期、イスラム世界で育まれ、欧州に伝わりました。

オスマン帝国は17世紀末から急速に衰退し、第一次世界大戦の敗退で解体されました。

このオスマン帝国領の国境分割を合意した密約が、1916年に連合国のフランス・英国・ロシアにより合意された「サイクス・ピコ協定」。

現在の中東地域の国境の原点は、この国境分割に端を発しています。

 

多くのイスラム過激派がISILイスラム国を支持する背景に、ISILイスラム国が「100年前のサイクス・ピコ協定を破壊する」という大義名分を掲げて、その象徴であるイラク・シリア国境で活動していることにあります。(イラク・シリア国境は、不自然に一直線です)

 

2015/2/2の日本経済新聞朝刊で、池上彰さんが「池上彰の大岡山通信」で、ISILイスラム国に殺害された後藤さんに触れて、次のようにおっしゃっています。

—(以下、引用)—

 こうした悲劇を防ぐには、どうすればいいのか。即効薬はありませんが、いまこそ求められるのは歴史観ではないのか。人間の愚かさと知恵の詰まった歴史を学ぶ中から、次の悲劇を防止する仕組みを構想する。

 そのために、若い人たちに、今回の悲劇を歴史の中に位置づける視点を伝えていきたい。さらに後藤さんの遺志を若い世代に伝える。

 私には、これしかできないという無力感の中で決意しています。

—(以上、引用)—

 

何らかの行動をするひとには、必ずその理由があります。

人を殺害することは決して許されませんが、一方で、ISILイスラム国であのような非道な活動をしている人たちにも、彼らなりの理由があるはずです。では、ISILイスラム国のような過激派がなぜ生まれたのか?

その歴史から何を学び、今後人類はどのようにそのようなことを防ぐべきなのか?

「歴史観」というものは、大切なのだということを、この歳になって改めて感じます。

 

人類は少しずつ進化してきました。私たちも今、歴史と現実に学びながら、新たな進化が求められているのではないかと思います。

 

ちなみに、サイクス・ピコ協定を締結させた当時フランスの首相兼外相だったアリスティード・ブリアンは、1926年にノーベル平和賞を受賞しました。これもまた、歴史の真実です。

 

【2015/2/10 13:00変更】

(1).タイトルを『「イスラム国の大義名分は何か?」 歴史から学ぶ大切さ』から、『「ISILの大義名分は何か?」 歴史から学ぶ大切さ』に変更しました。

(2).本文中の「イスラム国」の記述を、全て「ISIL」に変更しました。

2015-02-03 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

日本人の成熟さが問われるとき

ISILイスラム国により後藤さんが殺害されました。

私も動画を見ましたが、残忍な方法で殺害されており、正視に耐えうるものではありません。

同じ日本人として、というよりも同じ人間として、とても悲しく思います。ご家族や後藤さんと親交があった方々の苦痛を思うと、やり切れない思いです。

 

一方で、このような時期こそ、私たち日本人の成熟さが問われているのではないかと思います。

 

朝日新聞DIGITALの記事によると、民主党の代表に就任された岡田さんが、このように発言されています。

—(以下、引用)—

中東地域への安定のため、我が国がしっかり貢献しなければならない。今回の(人質事件の)事案に関連して、イスラム教徒への偏見のようなものが生まれないことを強く希望したい。多くの平和を愛するイスラム教徒とは、今回の事案は無縁のものだ。…(以下、略)

—(以上、引用)—

 

これはとても大切なご提言だと思います。

イスラム過激派が台頭した一つの要因が、貧富の格差拡大であると言われています。一見遠回りですが、中東地域の経済的基盤を支援することは、中東地域の安定に繋がり、ひいてはそれが世界の人たちが平和に暮らす社会に繋がっていきます。

そして、日本にも多くおられるイスラム教徒は、優しい平和を愛する人たちです。彼らが偏見の目に晒されないようにしていくことは、とても大切なことです。

 

世論が過度に感情的にならないことが必要。そして世論は、私たち一人一人が創り出しています。

半年前に当ブログで、『かつて「反戦」だった日本国民は、次第に戦争に「熱狂」し、そして戦争を始めた』というエントリーを書きました。

これは佐々木俊尚さんの下記Tweetに賛否両論の反応があったのを見て、書いたものです。

Togetter: 佐々木俊尚さん sasakitoshinaoの「国民が大喜びで戦争を求めたからです。」

1941年年頭の世論調査では「日米開戦は避けられる」という意見が60%ありました。しかし1941年12月、英米との交渉に弱腰な政府に対して、首相官邸に「日米開戦すべし!」という強硬な投書が3,000通殺到し、1941年12月8日日本は米国に宣戦布告しました。

いったん世論が感情的になってしまうと、時としてその代償は計り知れないものになります。

 

このような時期こそ、感情に流されるままに、ナショナリズムで高揚したり、他民族への偏見に陥らないように、戒めたいものです。

 

【2015/2/10 13:00変更】

(1).本文中の「イスラム国」の記述を、全て「ISIL」に変更しました。

 

2015-02-02 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

この40年間で、消費者の価値観が大きく変わりつつあることを示すデータ

私は講演の冒頭で、参加されている皆様に、「最近、どうしても欲しいと思って買ったモノと、買った決め手を教えて下さい」とお聴きするようにしています。

とても興味深いのは、「機能が豊富だから」と答える人と、「安かったから」と答える人が、ほとんどいないこと。

多くの人は「どうしても欲しい」と思ってモノを買う場合は、「価値観」「利便性」「お気に入り」といったことが理由になっています。この3つの理由は「個人の嗜好」です。

「どうしても欲しいと思って買うモノは、個人が好きなモノ」という、言われてみれば当たり前の結果ですが、昔はちょっと違っていたのではないかと思って色々と調べてみたら、これを裏付けるデータがありました。

 

内閣府「国民生活に関する世論調査」(リンク先はこの調査を引用している環境白書)によると、「今後の生活で重視するのは?」に対する答えは、この40年間でこのように変わってきています。

      1972年 2012年
心の豊かさ 37.3% 64.0%
物の豊かさ 40.0% 30.1%

 
心の豊かさ:物質的にある程度豊かになったので、これからは心の豊かさやゆとりのある生活をすることに重きをおきたい

物の豊かさ:まだまだ物質的な面で生活を豊かにすることに重きをおきたい

 

「個人の嗜好」=「心の豊かさ」と考えると、この40年間で時代が大きく変わったことがよくわかります。

40年前の「物の豊かさ」が大切だった時代は、大量生産・大量販売で、多機能で廉価な商品が受けていました。

しかし現代の「心の豊かさ」が大切な時代は、全体の5%の顧客ニーズに絞って「少々高くても、是非欲しい」という商品を提供することが必要です。

当ブログでも何回か書いている「ニーズの断捨離」の大切さは、こんなデータからも読み取ることができます。

「答えの有る問い」に迅速に回答できる人工知能の時代だからこそ、大切なこと

人工知能が大きな話題になっています。

医療診断など、判断の際に膨大なデータを必要とする分野での応用が期待されています。

NHKスペシャル『NEXT WORLD 私たちの未来 第1回 未来はどこまで予測できるのか』でも描かれていましたが、意外と有望とされているのが、人事評価のように主観的な判断を排除しなければならない分野である、と言われています。

人間が判断する際、好き嫌いの感情が入ってくる場合があります。

人事評価でも、自分に好意的な部下の評価を高くしたり、逆に成果を挙げていても自分と仲がよくない部下の評価を低くする、ということが起こりがちです。

つまり客観的な事実よりも、主観的な感覚が優先されて、判断される可能性があります。

「客観的な人事データがすべて揃い、人事評価基準が明確である」という前提条件さえクリアできれば、人工知能の方が、人間よりも客観的な人事評価ができる可能性がある、と言われています。

人工知能に人事評価されるのは、感情的に受け容れられない人たちも多いと思いますが、一方で「答えの有る問い」に迅速に回答できる技術が急速に進化しつつあることは事実です。

 

こんな時代、人間はどうあるべきなのでしょうか?

   

田坂広志著『知性を磨く 「スーパージェネラリスト」の時代』に、こんな言葉があります。

—(以下、p.15より引用)—

「知能」とは、「答えの有る問い」に対して、早く正しい答えを見出す能力。
「知性」とは、「答えの無い問い」に対して、その問いを、問い続ける能力。

—(以上、引用)—

 

考えてみると、人事評価とは、自分の経験でも「答えが無い問い」の世界です。

仮に客観的な人事データがすべて揃っていて、かつ人事評価基準が明確にあったとしても、「本当にこの評価ででよいのか?」と考え始めると、なかなか答えが出ません。

一見客観的な人事データに見えても、実は必ずしも人事評価に必要なすべての要素を100%網羅しているとは限りませんし、ルール上の人事評価基準以外にも大切な要素があることを、意識しているからです。

それが本当に客観的なものなの、主観ではないのか、判断に迷いながら、人事評価をしていくことが、実は大切なことなのではないかと思います。

 

このように考えると、「答えの有る問い」に迅速に回答できる人工知能の進化は、「答えが有る問いとは、何か?」、「答えが無い問いとは、何か?」を、改めて人間に問いかけているのかもしれません。

そして、「答えの無い問い」を問い続ける人間の知性を、改めて人間に深く問う時代に入りつつあるのではないかと思います。

2015-01-30 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

「イスラム過激派とは何か」を理解するために

今、ISILイスラム国のテロが大きな問題になっています。

 

ISILイスラム国とは、全世界で16億人いると言われているイスラム教徒の中でも、ごく少数派であるイスラム過激派の一集団。

法を遵守する大多数のイスラム教徒とは異なる集団です。

 

本日2015/1/27の日本経済新聞に、東京大学の池内恵准教授が、『経済教室 イスラム過激派の脅威 「テロ思想」強まる拡散懸念』という論文を寄稿しておられます。

ジハード(聖戦)やイスラム法の考え方、異民族・異教徒との歴史的な関わり方、ソ連のアフガニスタン侵攻に対抗する義勇兵として結集し、イスラム過激派が生まれ、拡がっていった経緯などがまとまっています。

イスラム過激派が生まれた歴史的な経緯を押さえることで、現状を理解し、今後を展望する上で役立ちます。

日経新聞がお手元にある方は、一読されると頭が整理されると思います。

 

【2015/2/10 13:00変更】

(1).本文中の「イスラム国」の記述を、全て「ISIL」に変更しました。

2015-01-27 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

ゆるキャラから考える地方創世:あなたはいくつのゆるキャラがわかりますか?

いきなりですが、質問です。

ここに10体のゆるキャラがあります。

あなたはいくつご存じでしょうか?

ゆるキャラ1.jpg

 

 

「ちょっとマイナー過ぎるんじゃないの?」

「一つもわからない」

という方が多いのではないかと思います。

 

実は、この10体は、「2014年 ゆるキャラ グランプリ」の1位〜10位にランキングされたゆるキャラです。

答えは、こうなっています。

ゆるキャラ2.jpg

 

ちなみに、この「2014年 ゆるキャラグランプリ」の応募総数は1699体。その中からの選りすぐりが、この10体です。

いわば「甲子園組」とも言えるゆるキャラです。

でも、意外と知られていないのが現実なのですね。

 

では、なぜ地方自治体がこぞってゆるキャラに力を入れているかというと、恐らくこの方の影響が大きいのではないかと思います。

ゆるキャラ3.jpg

 

1244億円の経済効果って、スゴイですよね。ちなみに日銀熊本支店の試算だそうです。→詳しくはこちら

興味があったので、内訳を調べてみました。

1244億円のうち、物品販売効果は1232億円だそうです。実に99%です。商品としての「くまモン」は大成功ということですね。

一方で、観光消費効果は12億円。全体の1%。熊本県内観光地のアプリダウンロード数(14万)と、くまモン誕生祭来場者数(4.5万人)から試算したそうです。

あくまで試算なので、実際には12億円よりも多いかも知れませんし、実はそれよりも少ないかもしれませんね。

 

あの大成功したくまモンでも、観光集客効果は限定的です。

考えてみたら、「くまモンがあるから、熊本に行ってみた」という人は、それほど多くないのではないでしょうか?

私も試しに回りの人たちに聞いてみましたが、そういう方はいらっしゃいませんでした。

 

観光振興の一環でゆるキャラに力を入れている自治体が多いのですが、ゆるキャラグランプリへ1699件応募があったという話を聞いたりすると、つい「同じお金と時間、手間をかけるのならば、もっと大事なことがあるのではないかな」「ゆるキャラが有名になれば、地域振興ができると短絡的に考えておられるのでは…?」と心配してしまいます。

本来、ゆるキャラは「地域の魅力を高める一つの手段」に過ぎないのであって、目的ではないはずです。

 

いま、「地方創世」が日本で大きなテーマになっていますが、もっと地方自治体が、「自分たちの地域らしさは何か?」を考えるようになれば、日本の地方ももっと元気になるのではないかと思います。

知らない間に、スマホに行動が記録されていた件

昨年末、同期会で友人に教えてもらったことです。

まったく知らなかったのですが、自分の歩いた歩数が過去に遡って自動的に記録されているということを知って、驚きました。

確認方法は簡単で、iPhoneで「ヘルスケア」というハートのマークのアイコンをクリックするだけです。

これですね。

ヘルスケア.png

 

すると、こんな感じで歩いた歩数を確認できます。

IMG_3675.PNG

 

アンドロイドにも同様の機能があるとか。

知っている方にとっては当たり前の機能だと思いますが、知らなかったので驚いた次第です。

  

スマホは、コンパクトデジカメ、デジタルビデオ、音楽プレイヤー、ゲームプレイヤー、地図、電子手帳といったあらゆる携帯機器の機能を呑み込み、成長していますが、万歩計もいつの間にか呑み込まれていたのですね。

あらためてスマホ経済圏の勢いを感じました。

 

さて、この万歩計の機能ですが、よく考えてみると、自分の健康状態を把握する上でとても有益なので、オフにせずに使い続けることにしました。

ジョギングの際にも、ポケットに入れておくと距離と歩数が記録されるので、便利ですね。

2015-01-23 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

気がつくと、Mac、iPhone、iPadをスムーズに連携させて使うようになっていた

気がつくと、Mac、iPhone、iPadをかなりスムーズに連携させて使っていることに気がつきます。

EvernoteとDropboxで、データに関してはかなりシームレスに連携が取れるようになりました。iPhone一台持って出歩けば、連携させているデータについてはどこでも見ることができます。

メールも、Gmailを使ってどれでも受信・発信できます。こちらに書きましたように、Gmail以外のドメインのメールも、Gmailで受発信できます。

本は、今はまずKindle版がないかを調べてから買うようになりました。Kindleは主にiPadで、電車の中ではiPhoneで読んでいますが、現在読んでいる場所は自動的に連携してくれます。また読書中にラインを引いたりコメントをつけた箇所は、KidnleのWebサイトからMacのEvernoteに取り込むこともできます。

Facebook、Twitterも、どれを使っていても違いを意識することはありません。

 

思い返せば、iPhone (3GS)を初めて買ったのは2009年6月で5年半前。
Macを初めて買ったのは、2011年8月で3年半前。

ガラケーとThinkPadを主に使っていたほんの数年前は、こうなることは予想できませんでしたね。

 

自分がこういう状況なので、アクセスする人たちのことを考えると、自分のホームページもスマホ対応は必須なのは自明のことなのかなと思います。

幸い、今のホームページビルダーで作ればちゃんとスマホ対応できるので、ありがたいです。

火星移住に向けて着実に宇宙ロケット技術を進化させているイーロン・マスク

半年前に当ブログでもご紹介したイーロン・マスクのSpaceX社について、本日付のWIREDでこんな記事が出ていました。

SpaceXの「再利用」ロケット、着地実験に惜しくも失敗

宇宙船「Dragon」を国際宇宙ステーションとのランデヴー軌道に投入することは成功したものの、その後のロケット再利用テストには惜しくも失敗、ということです。

具体的には、一段ロケットをフロリダ沖約322kmにある全長約90m、幅約50mの海上プラットフォーム「自律スペースポートドローン船」に着陸させようとしたのです。

困難なプロジェクトではありますが、記事を拝読すると、次回は成功を期待させてくれそうです。

宇宙ロケットを再利用する理由は、宇宙ロケットの打ち上げコストを1/100程度までに下げる目標を持っているからです。

イーロンがロケットに使われているアルミ合金・チタン・銅・炭素繊維などの市場価格を調べたところ、これらの材料コストはロケット全体のコストのわずか2%でした。一方、パソコンであれば90%程度。

イーロンにとって、この2%の数字が意味するものは、「ロケットの総コストは大幅に引き下げることが可能だ」ということ。

コスト削減の大きな一環として、ロケット再利用に取り組んでいるのです。

ちなみに、ロケットを1000mまで上昇させ、そのまま着地させて回収する、という実験も成功させています。

イーロンの原動力は、「このまま地球環境破壊が続けば、いずれ人類は地球以外の惑星に住まなくてはいけなくなる。そこで2020年代に人類を8万人火星に移住させる」という問題意識です。

このためには、宇宙ロケットの打ち上げコストを劇的に下げる必要があったわけです。(参考までに、地球環境の破壊を抑えるためにテスラモーター社と太陽光発電のソーラーシティ社という会社も経営しています)

確かなビジョンを持ち、それを実現する戦略を作り、さらにその戦略を実行し、失敗から学びながら、着実に進化させていくイーロン・マスクの取り組みは、今後、ますます目が離せません。

2015-01-13 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

一本足打法は、簡単には生まれなかった

昨日のブログで、日本経済新聞「私の履歴書」で連載が始まっている王貞治さんのことを書きました。

本日(2015/1/12)は、一本足打法が誕生する瞬間のことを描いています。

年初から荒川博さんと一緒に打法改善に取り組み、一本足打法のアイデアが出たのが2月12日。しかし当初はイメージトレーニングの域に留まっていて、シーズンは二本足打法で始まりました。

しかしこのシーズンも成績が思わしくなく、苦しみます。あの王さんも弱音をはいている様子が描かれています。

7月1日に荒川さんが「一本足打法で行くぞ」。

その日、今まであり得なかった打球が上がります。

 

王さんの手記を読んでいて感じるのは、偉大な記録を残したのは、当たり前なのかもしれませんが、日々の小さな努力の積み重ねと、執念深さだということ。

我々も見習うべきですね。

2015-01-12 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

入団3年目までパッとしなかった、投手から転向したある打者の話

これは、入団時に大きく期待された、あるプロ野球選手の成績です。

1年目 打率0.161 本塁打 7 打点25
2年目 打率0.270 本塁打 17 打点71
3年目 打率0.253 本塁打 13 打点53

悪くはないものの、大きく期待された割には「今ひとつ」という印象ではないでしょうか?

これは現在、日本経済新聞「私の履歴書」で連載が始まっている王貞治さんの成績です。

本日1月11日の記事では、当時三振を繰り返して「王、王、三振王」とやじられた様子が描かれています。

そして3年目を終えて、王さんが中学2年の時に右打ちを左打ちに変えるようにアドバイスした荒川博さんが、打撃コーチとして巨人に入団するところで、本日の記事は終わっています。

 

その後、一本足打法を習得してからの活躍は、皆さんもご存じの通りです。

4年目 打率0.272 本塁打 38(*) 打点85(*)
5年目 打率0.305 本塁打 40(*) 打点106
6年目 打率0.320 本塁打 55(*) 打点119(*)
(注 (*) …打撃タイトル獲得)

 

私が物心をついた時から大活躍し、一人の大人としての立ち居ぶるまいも素晴らしい王貞治さんを、私はとても尊敬しています。

王さんの手記を拝読すると、執念深さと、運命に必要以上に抗わず流れに身を任せるあっさりした諦めの良さ(投手から打者への転向など)が同居している印象を受けます。

明日からの連載も楽しみにしています。

2015-01-11 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

同期入社の仲間たち

私が新社会人として日本IBMに入社したのは、1984年。もう31年前ですね。

同期入社は約670名でした。当時はIT業界が成長していた時期。日本IBMは翌年の1985年から5年ほど続けて1000〜2000人の新卒を採用しました。日本IBM大量採用の最初の世代です。

 

昨年末から今年年始にかけて、そんな同期が集まる同窓会がいくつかありました。

今はなき参宮橋・オリンピックセンターで一緒に新卒研修を受けた、初々しかった同期の仲間も、31年も経つと、様々な場に活動を移しています。

経営者もいれば、現役IBM社員として頑張っている人、同業他社で切磋琢磨している人、専業主婦になった人、事業売却でかつてのライバル会社で活躍している人、まったく別業界に移った人。立場もポジションも業界も色々です。

 

しかし同期同士で集まると、不思議と一瞬で31年前に戻り、タメ口になります。

 

「同期の仲間がいる」ということは、本当に恵まれていることだ、と実感します。大切にしたいと思います。

2015-01-09 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

2015年を迎えて…ビジネスとアートの融合へ

皆様、よいお年をお迎えのことと思います。

  
昨年2014年の後半、「今後、ビジネスとアートがますます融合していく」ということを感じました。

 

さまざまな企業様にお伺いすると、ロジックを追求する世界から、さらに一段進化して、人間らしさや美の追究とビジネスの両立を模索されていることを感じました。

 
巷では、「2045年にはコンピューターの性能が人間の脳を超える」というシンギュラリティ(技術的特異点)も大きな話題になっています。

機械的な仕事が技術の進化で急速にITに代替されていく中、「人間らしさとは何か」を問い続ける大切さは、ますます大きくなっています。

そして経営を担っている皆様も、このことに気づいておられるように感じます。

  

企業様に対する経営変革のご支援を続けながら、今年から、新たにこのテーマについても試行錯誤していきたいと考えております。

今年もよろしくお願いいたします。

「幻のコーヒー」ブルボンポワントゥを淹れてみました

お世話になっている方々から、たいへん有り難いことに「幻のコーヒー」と言われるブルボンポワントゥをいただきました。→ブルボンポワントゥ専用サイト

1年に一度だけという限定販売品の貴重品。ブルボンポワントゥについて詳しいお話しはこちらにあります。
 

早速、飲んでみました。

こんな豪華な箱に入っています。右にあるのは説明書です。

ブルボンポワントゥ箱.jpg

箱を空けると、さらに豪華な陶製の容器に入っています。

ブルボンポワントゥ容器.jpg

コーヒー豆の袋は、この中に入っています。

ブルボンポワントゥ容器2.jpg

この陶製の容器の蓋にはゴムが付いていて密閉性があるので、この貴重なコーヒー豆の酸化を遅らせることができます。

ブルボンポワントゥ容器3.jpg

一人分15g。二人分30gをきっちり計ります。

ブルボンポワントゥ計量.jpg

並行してカップとコーヒープレスを温めておきます。

ブルボンポワントゥカップの温め.jpg

コーヒーはHARIOの手動式コーヒーミルで挽きます。

ブルボンポワントゥミル.jpg

今回はコーヒープレスで淹れることもあって粗挽きにします。粗挽きにするには、このコーヒーミルのネジを一方向に回して締めてから、逆の緩む方向に12回カチッと言うまで回します。

ブルボンポワントゥミル2.jpg

コーヒーミルに豆を入れます。

ブルボンポワントゥミルにコーヒー豆.jpg

ミルにハンドルをつけて回すと、コーヒー豆を挽くことができます。

ブルボンポワントゥミルで回す.jpg

挽き終えたところ。粗挽きのコーヒー豆が下に溜まります。

ブルボンポワントゥミルで挽き終え.jpg

お湯は一人あたり160cc。二人なので320ccですね。

コーヒープレスに挽いた豆を入れ、熱い95度のお湯を80ccを注ぎ、30秒間蒸らします。(お湯が挽いたコーヒー豆で跳ねて、プレスの壁面が汚くなってしまったのは、ご愛敬)

ブルボンポワントゥコーヒープレス1.jpg

その後、残りのお湯240ccを注ぎます。

ブルボンポワントゥお湯を全て注ぐ.jpg

蓋をして、3分待ちます。

ブルボンポワントゥ蓋をする.jpg

3分経ったら、ゆっくりレバーを押し下げます。

下にコーヒー豆が溜まり、上に抽出したコーヒーが出来上がります。

ブルボンポワントゥレバー押し下げ.jpg

カップに注いで出来上がりです。

ブルボンポワントゥカップに注ぐ.jpg

コーヒープレスだと、紙フィルターのようにコーヒー豆の油が吸収されることがないので、表面にちゃんと油も浮いています。

ブルボンポワントゥ・カップ.jpg

飲んでみると、渋みのない澄みきったピュアな味わいで、爽やかな酸味もあります。絶品です。

入っているのは100gなので、6−7杯しか飲めない貴重品。

有り難く大切に、感謝しながら飲みたいと思います。

表参道・青山でオススメ。お洒落で、浅煎りコーヒーが美味しいカフェ

『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』を書いたこともあり、カフェ巡りが好きなのですが、先日、いいお店を紹介いただきました。

上島珈琲 青山店

表参道駅を出て、国道246号を外苑前駅方面に5分程度歩くと、左側の道沿いにあります。以前は中華料理「糖朝」が入っていた場所です。

 

店内全体の雰囲気は、とても落ち着いています。

ソファやテーブル、椅子も高級感があり、店内にお客さんの視線がお互いに合わないように絶妙に配置されています。

一人用の席はこんな感じ。コンセントも付いています。

上島珈琲青山店1-20141228.jpg

 

浅煎りで絶妙に美味しいコーヒーを堪能できます。

スタバなどでは深煎りコーヒーを飲むことが多いと思いますが、浅煎りコーヒーも美味しいものです。

上島珈琲青山店2-20141228.jpg

 

分煙が徹底されていて、禁煙エリアの店内では、喫煙室からのタバコの臭いは一切しないのは、タバコが苦手な自分にとって嬉しいですね。

喫煙室には入りませんでしたが、そちらもお洒落な感じでした。喫煙者も満足できるのではないでしょうか?

全面禁煙のカフェが増えていますが、「禁煙か?喫煙か?」という二者択一ではなく、「禁煙も、喫煙も」というカフェの一つのあり方を示していると思います。

 

表参道・青山界隈でいいカフェを探している方には、オススメです。

2014-12-28 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

2014年の振り返り:年初の抱負は、達成できたか?

今年もそろそろ終わりです。

振り返ってみれば、今年は1月1日に当ブログで「2014年を迎えて、本年の抱負」を書いた際、大きく2つの抱負を持っていました。

1.新しい本を出版する
昨年、大好評だった「100円のコーラを1000円で売る方法」の第三部を書き上げ、「コーラシリーズ」は無事一段落しました。

「コーラシリーズの次に、何を書くか」が、実は自分にとって、とても大きなチャレンジでした。

そこで「コーラシリーズ越え」を目指し、1月1日にまっさらな企画段階だった新シリーズ『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』を9月11日に出版しました。

今回は「コーラシリーズ」の宮前久美や与田誠、井上クンとはまったく違った登場人物(新町さくら、町田南、永田兆司、藤岡雅治、玉川一郎)を設定、舞台もコーヒー会社に一新して書きました。

多くの方々のご支援で、おかげさまで現時点で7刷まで増刷。

アマゾンのコメントや、各書評サイトを見ても、好意的な多くのご感想をいただいております。有り難うございました。

今後も、難しい経営戦略のエッセンスを、誰もがわかりやすく理解できるような本を書き続けていきたいと思っています。

 

2.クライアント企業様の経営変革ご支援を拡大していく

おかげさまで多くの講演のご依頼をいただき、実施しました。(公開ご承諾分はこちら)

また、ユーカリが丘を開発する民間デベロッパーである山万様をはじめ、ITサービス企業様、大手旅行代理店様、食品メーカー様など、様々な業界の経営者様から研修のご依頼をいただき、各業界でお客様のバリュープロポジションはどうあるべきかをご一緒に考える貴重な機会をいただきました。

 

今年も、多くのことを学ぶことができた1年間でした。

貴重なご縁をいただいた皆様に、厚く感謝申し上げます。

 

来年も、活動をより拡げていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

高城 剛著「2035年の世界」 今後20年間に何が起こるか、ポイントを押さえて概観できます

高城 剛著「2035年の世界」を読了しました。

高城さんが書かれたので、当初は技術面が中心だと思っていたのですが、実際には社会や人間のあり方までが書かれていて、とても参考になりました。

以下のセクションで構成されています。

セクション1:身体科学

セクション2:科学

セクション3:移動

セクション4:スタイル

セクション5:リスク

セクション6:政治

セクション7:経済

セクション8:環境

 

ここ1-2週間話題になっている「指数関数的に進化する人工知能は、人類にとって脅威になるのではないか」という点についても、高城さんとしての回答を出しておられます。

コンパクトな本ですが、今後20年間に起こる可能性がある事象についてポイントを押さえて幅広く概観できます。

今後の社会動向を考えて戦略の打ち手を考える立場にある方には、ご一読をお勧めします。

麻生川静男著『本当に残酷な中国史 大著「資治通鑑」を読み解く』ー中国ビジネスに関わる人は、ご一読をお勧めします

前職の日本IBMに勤務していた頃は、中国の人たちと一緒に仕事をする機会を多くいただきました。

深い教養を感じさせる方が多い一方で、日本人の私からするとなかなか理解できない割り切りのよさや交渉の駆け引き、相手と自分の力関係を巧みに読み取り態度を変えるしたたかさに、「とても真似できないなぁ」と感じることが多くありました。

また一方で、大紀元のような中国政府とは独立している海外の中国メディアでは、中国共産党が日本国内で報道されない様々な蛮行を行っていることも報道されています。

自分の中では、一見両極端なこれらのことは、なかなか理解できませんでした。

 

このことについて、櫻井よしこさんが週刊東洋経済2014/11/08号のコラム「オピニオン縦横無尽 深い教養と残虐さを持つ中国人 対中外交で押さえるべき基本」で、次のように書いておられます。

—(以下、引用)—

……このように素晴らしい教養人を育んだ中国には、同時に幾千万の国民を死に追いやった毛沢東のような非道の人物が少なくない。習近平体制下で進行中の数々の蛮行、徹底した言論と情報の統制、表現の自由の規制、不条理な反日など、前述の深い教養がいかにして同じ漢民族の中に存在するのか、私には理解しにくかった。

 しかし『本当に残酷な中国史 大著「資治通鑑」を読み解く』(麻生川静男、角川SSC新書)で多くの疑問が氷解した。資治通鑑は紀元前500年から紀元後1000年の約1500年の中国の歴史を、北宋の学者であり政治家だった司馬光がまとめたものだ。…

—(以上、引用)—

 

早速、『本当に残酷な中国史 大著「資治通鑑」を読み解く』(麻生川静男、角川SSC新書)を読んで、櫻井さんが「多くの疑問が氷解した」と書いておられるのと同じことを感じました。

 

本書の冒頭、著者の麻生川さんは、資治通鑑の重要さについて次のように書いておられます。

–(以下、引用)—

■私たちにとって、資治通鑑を読むというのは…(中略)…、中国の隠された政治力学を読み取るという目的がふさわしい。中国の政治や社会は表面だけをみて、近代民主主義的な価値観から判断しても正しく理解できない。中国の政治や社会を動かしている根本理念は彼らの伝統的な価値観であるのだ。

■中国の本質を知ろうと思えば、悪の面だけ見たのでは一面的すぎる。中国には善(徳・仁・義)の実現をめざし、命がけの行動を起こした人が数多く存在する。その人たちの信念の強さやしぶとさは、ある面では日本人を遥かに凌駕する。言い換えれば、日本人は善悪のレンジが狭いのに対し、中国人はとんでもない極悪人から、ウルトラ善人まで、善悪のレンジが極めて広い。中国の悪だけでなく善のパターンが、それも極端な場合も含め、全て網羅されている資治通鑑という長編ドキュメンタリーはこの意味でも中国社会の実相を知るのに非常に有益な書であるのだ。

—(以上、引用)—

本書では多くの衝撃的な記述があります。

一例を挙げると、人が人を食うケースがしばしば書かれています。そのパターンは大きく分けて5種類。①美味・珍味として食べる。  ②罰として罪人の身内を殺して食べさせる。  ③薬として食べる。  ④憎い相手を食って鬱憤をはらす。  ⑤飢饉のとき、人を食べる。

人肉を家畜の肉同様の扱いをしているケースもあります。

 

また一方で、ビジネス面では次のような記述もあります。

—(以下、引用)—

■平和な時代にこつこつと富をためていざというときに備える、というような堅実思考は中国人には希薄だ。資治通鑑を通観してみると中国はどんなに荒廃していても、30年間、大きな天災がなく平和が続くと例外なく殷富(リッチ)になっている。そうすると、これまた判で押したように決まって贅沢モードに突入していく。…(中略)….つまり、現在の中国に蔓延している贅沢は何も鄧小平が始めた「社会主義的市場経済」下の改革開放運動の結果でなく、単に昔からの伝統に忠実に従っているにすぎないのだ。「資治通鑑を読まずして中国は語れない、そして、中国人を理解することも不可能である」というのはこういったことを指す。

■中国では法律や常識は身を守る役にたたない。各人が状況を把握し、理屈は二の次として、とにかく自分で判断し、行動することが求められる。

■現在、中国には数多くの日本企業が進出しているが頻発するトラブルに苦労していると聞く。その原因を考えるに、日本流の誠心誠意が中国人にも分かってもらえるはずと楽観的に考えている節が見える。トラブルの多くは日本人には思いもつかないような中国人の策略にある。その意味で予備的にでも中国人の策略を一通りは知っておく必要があ

■策略のパターン:  ①互いの妬みや怨みを利用する  ②高位者を利用して報復する  ③味方をも欺く  ④おだてて自滅を待つ  ⑤表では友好を装い、裏では陥れる策を練る  ⑥奸計で無実の人を陥れる  ⑦面子を守るためには、不正・不義も断行する  ⑧権道──義を貫くためには汚い手段も辞さない。

—(以上、引用)—

 

当ブログでは割愛しますが、こんな中でも自分の命を顧みずに徳を重んじた人たちの話も出てきます。

 

とは言え、グローバル化が進んでこれまでの中国のやり方は国際社会で通用しなくなりつつあります。今後、中国はどうなっていくのでしょうか?

そのことを考える上で、ライフネット生命CEOの出口治明さんが、著書『仕事に効く教養としての「世界史」』で、書いておられることがヒントになりそうです。

—(以下、引用)—

少し大胆なことを言えば、中国という国は、少なくともこれまでの歴史のうえでは、じつはあまり対外的には侵略的ではないのです。朝鮮やベトナムなど、地続きのところに対しては、始皇帝の時代から自分たちの庭だと思っていますから、かなり無遠慮です。しかし中国の本来的な強さは、むしろ侵略者を全部飲み込んでしまうところにある。飲み込んで自分の腸の中で吸収してしまう強さなので、……これまた、中国史のおもしろいところです。

—(以上、引用)—

 

このように、これまで中国は、周りの文化を飲み込んでいった歴史があります。

このような歴史を踏まえると、これから数十年から数百年間のレンジで考えると、中国はグローバル社会と積極的に関わりながらも、そのエッセンスを次第に呑み込み、さらに洗練化され、強くなっていく、ということも考えられます。

 

中国ビジネスに関わる立場にある方が歴史の視点で中国を理解する上で、本書はとても役立つと思います。


カフェインは、人を積極的に覚醒させるわけではないらしい

朝、仕事で気合いを入れるために、コーヒーを飲む人は多いのではないでしょうか?

かく言う私もそうです。

中には、夜の仕事で眠気覚ましのためにコーヒーを飲む人もいるでしょう。

「コーヒーに含まれるカフェインは、覚醒効果がある」と思っていたのですが、「コーヒーの歴史」(マーク・ペンダーグラスト著)を読んで、微妙に違っていることがわかりました。

—(以下、p.498より引用)—-

…アデノシンは脳の電気的な活動を低下させ、他の神経伝達物質の放出を抑える働きを持つ。言い換えれば、脳の活動を低下させる物質で、人間が休息したり、おそらく一日に一回睡眠をとることにも関係していると思われる。

ところが、カフェインが先に受容体(レセプター)に到達してしまうと、アデノシンが働きたくても働けなくなる。したがって、カフェインは積極的な意味で人間を覚醒させるのではなく、ただ人を眠くさせるアデノシンの働きを妨げ、自然に備わった脳のブレーキを利かなくしているだけなのだ。

—(以上、引用)—

結果として「覚醒させる」効果はあるものの、より正確に言えば「疲れて、眠くなる物質が溜まっている状態でも、眠くなるのを妨げている」ということなのですね。

確かに、ハードな仕事をいつもより多量のコーヒーを飲んで乗り切った日の夜、身体は疲れているものの目が妙に冴えてしまって眠れないという経験、よくあります。

疲れて休みたい時には、コーヒーを飲んで頑張るのは避けて、休めるならば眠ってしまうのが一番だ、と改めて思いました。

 

2014-11-06 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

沖縄出張講演でお話しした、「沖縄へのご提言」

昨日のブログで、沖縄政経懇話会21様で講演したことを書きました。

講演の最後にお話しした「沖縄へのご提言」をまとめたいと思います。

エッセンスは、観光業の振興です。

 

世界全体で見ると、国際観光は成長産業です。

下記は2014年度観光白書から引用した、国際観光旅行客の推移です。

Photo  

では、世界の中でどこが増えているのか、というと、アジア地域です。

世界全体の国際観光客受入数の中でアジア太平洋地域が占めるシェアは、2003年から2013年の10年間で、17%から23%に増えています。

Photo_2  

このように特にアジア地域で国際観光客数が急増している中、日本の国際観光客数は、世界33位です。

Photo_3 

・1位のフランスは、8302万人。日本の10倍。
・12位の香港は、2377万人。面積ではるかに小さいのに、日本の3倍。
・23位の韓国は、1114万人。人口と国土面積が半分なのに、日本の1.5倍。

高度成長期までの日本は、国内旅行客需要が大きかったですし、アジアも豊かでなかったので大きな問題はありませんでした。しかし今後、人口減少で国内旅行客からの需要は減少します。

日本にとって、国際観光客の受入はまだまだ伸びしろがありますし、国内市場縮小の観点でも取り組まなければならない課題なのです。

 

このような状況で、沖縄の強みはどこにあるのか?

地理的に、世界の中でも国際観光客が急増している東アジアの中心に位置していることです。

那覇を中心とした1500Kmの同心円内に、ソウル、台北、マニラ、上海、香港、東京が入ります。(下記の図は首相官邸より)

006  

円安の追い風もあって、ここ数年間、日本への観光客が急増しています。日本の「おもてなし」文化はアジア各国からも注目されているのです。

日本人からすると当たり前になっていますが、日本の旅行はとても安心です。

海外を旅行したことがある方はおわかりだと思いますが、なかなか安心して旅行できる国はありません。ある欧州の国に行ったときは、店の勘定が合っているか必ず確認しました。人数をごまかされて過大請求されることが頻繁にあるからですが、日本ではまずこういうことはありません。夜中に安心して歩ける国も、多くはありません。

「日本人は優しい」「日本が好きになった」ということは、日本に観光に来た海外旅行客がよくおっしゃることです。

アジア各国からすぐ近くにある沖縄に、この日本文化があることは、大きな強みでもあります。

2年前に繁華街である国際通りに行った時は、ほとんど日本人観光客でした。今は中国人観光客で賑わっています。中国人観光客のビザを緩和したことによるものだそうです。

つまり、沖縄は「アジアと日本の架け橋」になれるポテンシャルがあるのです。

 

さらに2020年の東京オリンピックで、国を挙げて国際観光客誘致に取り組んでいます。

「それって、2020年までの一過性な需要ではないか?」と思われるかも知れません。

実際には、過去オリンピックを開催した国では、様々な施策を行うことで、オリンピック以降も観光需要が成長しています。(2014年度観光白書から引用)

Photo_4  

オリンピック開催は、外国人旅行客のインバウンド観光にとって追い風になるのです。

 

「天の時、地の利、人の和」という言葉があります。

天の時:アジアの国際観光客数が急増している。加えて日本政府も、東京オリンピック開催で2020年まで国を挙げて観光業振興に本腰を入れる

地の利:東アジアの中心地であり、アジア各国からすると、東京まで行かなくても、身近に日本のおもてなし文化を体験できる。

人の和:沖縄全体で、いかに沖縄の産業を振興させるかを考えている

このように考えると、沖縄の立ち位置を活かして、当面の目標を2020年オリンピック開催に置いて、アジアの観光需要取り込みを図るにはベストなタイミングではないかと思います。

沖縄の半分の面積しかない香港に、日本の3倍もの国際観光客が集まっていることを考えると、市場の潜在規模は極めて高いはずです。

 

そのためには、沖縄の強みを活かして、観光客が「是非沖縄に行ってみたい」と思う「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)を創り出すことが必要です。

そして沖縄におられる様々な人たちが自分の強みを徹底的に考えて、様々なターゲット顧客に対して、「是非沖縄に行ってみたい」という理由を数多く創り出していくのです。

たとえば、琉球古武術のことを知れば、少ないながらも「是非学び、体験したい」という人がいるでしょう。

あるいは、リゾートとしての沖縄に魅力を感じる人もいるでしょう。

琉球文化も、素晴らしい観光資源です。

現在検討されているカジノ構想で、是非沖縄に来たいという人もいるでしょう。

そのようなターゲット顧客とニーズを絞込み、「お客様が是非買いたいという理由」を創り上げていく。

それらを数多く作り、情報発信していくことが、沖縄の振興に繋がっていくのではないかと思います。

 

沖縄のますますのご発展を願っております。

  

池井戸潤著「下町ロケット」

恐らく多くの方々同様、私が始めて池井戸潤さんの作品に触れたのは、テレビドラマ「半沢直樹」でした。

普段は滅多にドラマを見ないのですが、当時話題になっていた半沢直樹シリーズの第3-4回目あたりの予告編をYouTubeで見る機会があり、「面白そうだな」と興味を持ち、その週から見始めると、毎週放送されるのが楽しみになりました。

ちなみに「半沢直樹」の前に夢中になったのは、「冬のソナタ」なので、私がテレビドラマを見るのは10年に一度くらいのペースです。

 

そんな池井戸潤さんの作品ですが、このたび遅ればせながら、初めてご著書を読みました。直木賞を受賞した「下町ロケット」です。昨年末に文庫本になっています。

調べてみると、「下町ロケット」が週刊誌に連載された後に出版されたのは2010年。一方で半沢直樹の1作目である「オレたちバブル入行組」の出版は2004年。「下町ロケット」の方が後なのですね。

文庫本にして500ページの大作です。

「まぁ、読み終えるまでに最低2-3日はかかるだろうなぁ」と思いながら、昨晩、つい何の気なしに読み始めたのですが、40ページ目を越えたあたりから読むのが止まらなくなりました。

理不尽な状況に追い込まれて苦しめられる主人公が最後には勝つ、まさに「半沢直樹」シリーズと同じく勧善懲悪で爽快なストーリー。

結局、目が冴えてしまって次から次へとページをめくり、気がついたら明け方近くまでかかって読了してしまいました。

読み終えて、とても元気が沸いてきました。

 

「下町ロケット」は、恐らく池井戸潤さんが書かれた数多くの作品の中でも代表作の一つでしょう。

作家の代表作を読むのはいいものだ、と改めて思いました。

よい作品に出会えるのは、幸せですね。

 

ただ、寝る前に読み始めると、寝るタイミングを逸してしまうので、要注意ですね。

 

 

2014-10-15 | カテゴリー : 社会 | 投稿者 : takahisanagaicom

積極的休養は大事だと実感

考えてみたら、あまり休んでいません。

仕事をしながら、会社から離れた時間は「100円のコーラ」シリーズを書いていた会社員の最後の3年間は、完全休養日は合計数日間程度。

昨年7月に独立してからは、ウィークディはお客様と会ったり講演したりモノを書いたりしつつ、土日も作業。

いずれにしてもやりたいことをやっているので、楽しいのですが、まったく何もせずに休むことはあまりありませんでした。

 

そこで仕事の合間でちょっと余裕ができ、「疲れも溜まったかな」と感じた先週後半から週末まで4日間、完全休養してみました。

まず近所の温泉で骨休め。

ここで身体の緊張状態がリセットされたようで、いくらでも寝られるようになってしまいました。

メールの返事やブログ書きなどの最小限のことをする以外は、極力なにもしないようにしました。

15−16時間の睡眠を3日間続けて取ったのは久しぶりです。

どこか緊張していた身体と心も、心なしか楽になりました。

 

たまには積極的休養を取ることは、とても大切ですね。

 

自然体でありたい

「常に自然体でありたい」と思うようになったのは、20年くらい前からです。

しかし、ともすると虚勢を張ってしまいがちです。

「もっと自分を大きく見せたい」とか。

「舐められてはいけない」とか。

そう思うことで成長に繋がることもあります。だからそう考えることでよい面もあります。一方で、ともすると自分が気がつかないうちにエゴが芽生えてしまい、他人を知らずに傷付けてしまうこともあります。

 

私は自分を虚飾せず、あるがままの自分でいたい。

それでもし周りから評価されなければ、何が自分に足りないのかを謙虚に学び続けて、成長すればいい。

それでもし周りから評価いただけるようなことがあれば、それは有り難いことだし、それを土台にして、さらに成長すればいい。

 

他人と比較し始めた途端に、苦しくなります。

与えられた状況の中で、虚飾せず、卑下することもなく、自然体のまま、周囲のご縁に感謝し、淡々と自己研鑽を積んでいきたい。

 

50代前半になって、ますます「自然体でありたい」と思っています。

とは言え、気がつかないうちにエゴが忍び寄っている。

なかなか難しいことではあります。