現代では、「顧客満足の追究」が企業にとって最重要課題であることは言うまでもありません。
一方で、この当り前のことが繰り返し言われ続けているのは、それが実現できていないことの裏返しでもあります。
この顧客満足については、先日もご紹介した「ビューティフルカンパニー」(嶋口充輝著、ソフトバンククリエイティブ)で、下記の文章がありました。
—(以下、p.137-138から引用)—
以前、アメリカのある長老教授との雑談の折、「これまでマーケティングはいろいろな表現で時代を語ってきたが、結局、顧客が最も大切だと言い続けてきただけさ」といった言葉に強い印象を受けたことがある。
….
しかし、こんな簡単なことが今でも経営・マーケティング全体の最重要課題になるのは、一体なぜなのだろうか。
さまざまな理由の中で、特に大きいと思われる原因は、結局、目先の利潤に目を奪われ、顧客の喜びに向かってもっと正直に対応し続けないから、といえそうである。
—(以上、引用)—
しかし一方で、企業としては利益を生まなければ存続できません。
利益の追求と顧客満足の実現との関係は、どのように考えればよいのでしょうか?
2009年12月30日の日本経済新聞「経済教室」に掲載された、神戸大学教授・加護野先生が書かれた論文に、その回答がありました。
—(以下、引用)—
….利益が出ているということは(ステークホルダーへの)支払義務が果たせているということを意味する。利益が出ていないということは、この支払い義務が果たせないあるいは果たせなくなりそうだということである。この意味では利益は重要なのである。しかし、それは企業の目的ではない。われわれは呼吸をしていないと生きていけないが、呼吸をするのが人間の目的だろうか。
…..
利益よりも大きな目的とは何か?ドラッカー自身は「企業の目的は一つしかない。それは顧客の創造である」(『マネジメント・上』)とはっきりと述べている。この目的しかないかどうかについては議論の余地はあろう。しかし利益よりも大切な目的があるのは確かである。不思議なことに、利益よりも大切な目的があるといい続けた企業家・経営者ほど多くの利益を上げている。利益にとらわれてしまうと見えなくなってしまうものがあるからだ。….
—(以上、引用)—
企業を個人の人間にたとえると、
「利益が出ている状態」とは、「息ができ、食べたいものが食べられる状態」
「顧客満足の実現」とは、「生きている目的の実現」
と考えると、分りやすいかもしれません。
顧客満足を追究すると、利益はついてくる。
利益を追求すると、顧客満足は下がっていく。
前者を継続的に実現し続けるようにしたいものですね。
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