厳しい状況の中で、「そこを、なんとかお願い!」とか、
相手にロジカルに突っ込まれると、「まぁ、色々あるんですよ」とか、
私たちは言いがちです。
ところが「そこを、なんとかお願い!」とか「まぁ、色々あるんですよ」に相当する英語はないようです。
実はこれ、非常に高度でハイコンテキストなコミュニケーションなのですよね。
このようなコミュニケーション・スタイルは当事者同士でお互いに状況を深く理解し合っていることが前提になります。日本人特有なものでもなく、東アジア各国で多く見られるようです。
このようなコミュニケーションに慣れた日本人が、お互いを理解し合えていないことが前提となるグローバルコミュニケーションで同じことをやっても、相手に全く通じません。
そして「外国人にはなかなか話が通じない」と思うことになります。
私もグローバルコミュニケーションで色々と悩みました。
しかし最近は、欧米系のグローバルコミュニケーションは実はとてもシンプルなのだと感じています。
ただシンプルですが、難しい。日本人にとっては慣れが必要なのかもしれません。
それは4年半前に当ブログ「なぜ、日本人の議論と米国人の議論が噛み合わないのか?」で書いたことと同じです。
欧米人は、
前提に同意でき、
議論のロジックに同意できれば、
結論に同意せざるをえない
のです。これを認めないと自分の中で論理破綻するからです。
だから私たちは、ロジックを積み上げることで彼らの同意が得られるのです。
ロジックと言ってもそんなに難しいものではありません。例えばこんな感じです。
前提:この100ccの水には塩が5g入っている
ロジック:5%の濃度の塩水は、しょっぱい
結論:だから、この水はしょっぱい
これは誰でも賛同する、当たり前なロジックですよね。
彼らは賛同するのは、こんなロジックです。
しかし私たちは、往々にしてこんな論理展開をしがちです。
前提:この100ccの水には塩が5g入っている
ロジック:砂糖水は甘い
結論:だから、この水はしょっぱい
日本人の場合、ロジックをすっ飛ばしても結論は正しいので、「ロジックはちょっと微妙だけど」と思いながらも、多くの場合は同意します。しかし欧米人の場合、ロジック展開が同意できないので結論にも同意できません。
この砂糖水は極端なケースですが、実際にありがちなのはこんなケースです。
前提:当社は前期、御社に対してプロジェクトAを実施しました
ロジック:プロジェクトAは、御社のビジネスに大きく貢献しています
結論:ですので、今期もプロジェクト継続をお願いします
つまりプロジェクトAを実行したという実績をアピールし、継続をお願いしています。
しかし前提で言っているのは、あくまでプロジェクトAを実行した事実だけ。ビジネスにどのように貢献したのかは示していません。もしかしたらビジネスの生産性を逆に低下させているかもしれません。その場合は中止もあり得ます。
ですので、欧米人はこのロジックではなかなか同意しません。
これだといかがでしょうか?
前提:当社は前期、御社に対してプロジェクトAを実施し、生産性を10%改善した結果、御社は10%多い案件をこなしました
ロジック:この事実から、プロジェクトAは御社の前期売上10%増に貢献していると考えられます
結論:ですので、今期もプロジェクト継続をお願いします。
前提データを検証してその事実に同意できれば、結論にも同意する可能性は極めて高いはずです。(「予算が厳しい」等の他変動要因は除外します)
このように前提→ロジック→結論を整合性を持たせて積み上げることで、グローバルコミュニケーションは動いています。
高度なハイコンテキスト・コミュニケーションに慣れた私たちにとって、ロジックを地道に積み重ねるのは面倒な作業で、なかなか難しいかもしれません。
しかし慣れてしまえば、実は意外にすごく単純でシンプルなのですよね。