現在、「日本は資源が少ない国」というのが定説になっています。
しかし、それを変えていこうという動きが、2月19日の日刊工業新聞の記事「海藻からバイオ燃料 資源大国ニッポン 2025年に」に掲載されています。
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三菱総合研究所は、海藻から天然資源を回収する構想「アポロ&ポセイドン構想2025」をまとめた。日本海で海藻を大量に養殖してバイオエタノールを得るとともに、海水に溶け込んだウランやレアメタルなども海藻に濃縮させて回収する。2025年に年間で2000万キロリットルのバイオエタノール、同1950トンのウランを得られると試算している。
—-(以上、引用)—
以下、記事の中からポイントを挙げてみました。
■二酸化炭素の吸収や海洋の浄化に繋がる
■原料は繁殖力の強い「ホンダワラ」で、トウモロコシのような食料用との競合もない
■バイオエタノール抽出は、既に実験室レベルで成功
■海藻の物質を濃縮して貯め込む能力を利用してウランを濃縮するように品種改良すれば、分解後の廃液から回収し吸着剤を使うことで天然ウラン鉱石と同等の0.1%程度に濃縮可能
■ちなみに、現在バイオエタノール生産トップのブラジルは年産1700万キロリットル
■年1950トンのウランは、原子力発電所で使用するウランの約40%に相当
■三菱総研では4月にコンソーシアムを発足予定。京都府立海洋センター、産業技術総合研究所、物質材料研究機構の研究者、大手機械、自動車、建設会社等が参加。
日本のエネルギー事情を根本から変革する、素晴らしい構想ですね。
このようなスケールの大きな夢のあるプロジェクト、日本ではここしばらくなかったように思います。
しかし、「プロジェクトX」にもあるように、高度経済成長期には、このような壮大なプロジェクトを成功させた例は数多くあったのですよね。
日本近海には世界最大規模のメタンハイドレートが埋蔵されているとも言われています。しかしこれも、酸素を消費して二酸化炭素を排出することには変わりはありません。
一方で、この「アポロ&ポセイドン構想2025」は二酸化炭素を吸収することで地球温暖化の抑制効果もあります。地球の環境保護に対する貢献度は非常に高いものです。
是非、日本の総力を挙げて技術開発を進めたいですね。
また、グローバルのスケールメリットを活かして展開してこそ、地球規模で温暖化を抑制する効果を期待できます。
日本だけに留めずに世界中で展開していただきたいですし、日本政府も、このような民間の取り組みを重点戦略分野として後押ししていただきたいところですね。
ただ問題は、このようなイノベーションに対して、グローバルの既存エネルギー大手資本と利害が衝突した場合に、どのように対処していくか、という点かもしれません。
この点でも、日本政府のリーダーシップを期待していきたいところです。
「資源小国」の日本ですが、実は過去、16世紀から17世紀にかけては、日本の石見銀山を中心とする銀産出量は、世界全体の1/3に達していました。ある意味では資源大国だった時期もあった訳です。
21世紀、天然埋蔵資源に頼らずに、知恵を活用することで日本が資源大国になるとすれば、これは大変素晴らしいことなのではないでしょうか?