林容子著「進化するアートマネージメント」を読んでいます。創作活動について、今まで私が持っていた問題意識が明確に書かれていて、大変興味深く読んでいます。
感じたことを引用しながらまとめてみました。
—(以下、引用)–
日本では「アーティストは好きな仕事をやっているのだから、貧乏でもしようがない」という声がよく聞かれる。…..つまり、アーティストという存在自体、アーティストの創作活動を「社会に不可欠の生産活動と見ていない」ということになる。
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ヨーロッパやアメリカではアーティストをtalented people (才能を与えられた人々)とみなし、尊敬の対象にしている。キリスト教的発想から、アーティストは才能(talent)を神より与えられた人であり、アーティストの存在を個人の問題ではなく、「人類の問題」として捉える歴史的視点である。欧米においてアートは個人の考えや個性を表現する重要な媒体であり、精神を解放し、自由にしていくものとしても捉えられている。
—(以上、引用)–
日本と欧米のアーティスト感の違いですが、これは痛感しています。
私の知り合いの写真家でも、日本では純粋な創作活動ができないため、海外で活動している人も多くいますし、国内で写真家を続けてきた人も「写真家になったのに、自分が本当に撮りたい写真が撮れない」ということで写真家を廃業した人も多くいます。
—(以下、引用)–
日本において、プロの芸術家あるいはプロのアーティストを定義しようとすると、それは「芸術創造活動で生計をたてている人」ということになろう。….それ以外のアーティストはアマチュアということになる。
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アメリアのニューヨーク市は1971年から「芸術家証明書」なり公文書をプロの芸術家に発行している。….証明書の申請資格を有するものは、次の三つであると規定している。
1.商業的芸術ではなく、純粋芸術-すなわち絵画、彫刻、振り付け、映画、作曲その他を含むものの創作を、不断に進行させている個人。
2.自己の表現形態に真剣かつ不断に傾倒してきたことを証明できる個人。
3.現時点でも、その表現形態に専心、従事している個人。—(以上、引用)–
欧米では、どれだけ真剣に創作活動に携わっているかが問われていて、創作活動に伴う収入は関係ない点がポイントですね。
—(以下、引用)–
最近の傾向として、作品を商品化せず、真に自分の創作活動を行いたいがために、あえて一般の職業に就き、作品の創作・発表をする人が増えてる。
—(以上、引用)–
これはまさに私が提唱してきた「プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファー」ですね。
このような生き方が、現在の日本では現実的なアーティストとしての生き方なのでしょうね。
上記の欧米との違いを考慮すると、日本独自の芸術感なのでしょうか?