「クイズ」と「脳トレ」、何が違う?


昨年から脳を鍛えるトレーニング、いわゆる「脳トレ」が流行っていますが、マーケティングの視点で見るととても興味深いですね。

「脳トレ」は、簡単なクイズや計算を楽しみながら解いて脳を活性化させる、というものですが、ある大学で実証実験を行ったところ、確かに効果があるそうです。

しかし、「脳トレ」のコンテンツ自体は、昔から世の中にあるクイズがベースになったものです。

マーケティング的な観点で見て「脳トレ」が新しいのは、昔ながらの「クイズ」というコンテンツに対して、「脳を活性化させる」という新しい価値を与えた点ではないでしょうか?

フランスの社会学者ジャン・ボードリヤールは、「消費される物になるためには、物は記号にならなくてはならない」と言いました。

この記号論的な観点で言えば、従来の「クイズ」という形態に対して、「脳を活性化させる」という新しい意味を与えて、「脳トレ」という新しい記号を作ることで、消費者が消費できる状況を作った、ということかもしれません。

考えてみればコンピュータの普及で、頭で暗算することが本当に少なくなりました。

私も学生の頃は、計算は暗算でやることが当たり前で、電卓はほとんど使いませんでした。(大学は工学部だったので、さすがに実験データの検証には関数電卓を使用しましたが)

しかし、Excel等の普及で、最近は細かい計算を暗算で行うことはほとんどなくなりました。

本来は細かい計算から開放された分、頭を創造的なことに使うようになればよいのですが、どうもそう単純にはいかないようです。

「頭を使うことが少なくなった」⇒「頭を鍛えるトレーニングが必要になってきた」

という見方が正しければ、もしかしたら、仕事で身体を使わなくなった現代人が、仕事帰りや休日にスポーツクラブに行くのと同じ構図かもしれません。

「脳トレ」は確かにマーケティング的にも成功しているようです。本日(8/3)の日本経済新聞の記事「電卓、遊び心も計算済み」によると、「脳トレ」機能を搭載した電卓は、基本機能だけの電卓よりも1000円程高いにも関わらず、売れゆきを伸ばしているとのことです。

ところで、ほぼ毎日ブログネタを考えて、文章にまとめて書くことは、もしかしたら何よりの脳トレになっているような気がします。よし、頑張ろうっと。

「クイズ」と「脳トレ」、何が違う?」への5件のフィードバック

  1. 単に、ネーミングの妙じゃないでしょうか?
    コンセプト自体は40年前に多胡教授が頭の体操で提示したことの焼き直しですし。(実は初版の第1刷持ってたりして)
    問題自体そっくりパクってたりするし。
    まぁ、頭の体操もマーチンガードナーの数学パズルなんかから持って来ていたりするので、オリジナルとは言い難い部分は有るのですけれど。
    脳力開発なんて誰でも思い付く駄洒落で古くから有りましたし、正直ナニをいまさらーな感が強いのですけれど。
    そう言えばドリル電卓なんかもむかーしあったぞ。
    値段も普通の電卓と大差無いか、業務用の10桁電卓よりはるかに安かったような。
    ブログは無かったけど、文章作成は知的生産の方法なんて言われてることも有るし、なによりも楽しみにしているので、毎日更新頑張ってくださいませ。
    ブログの毎日更新は是か非か問われたらこう答えます。
    『是非』と(^^ゞ。

  2. 販売側が巧みになったというのもあるでしょうが、やっぱり、数十年前と比べ「自分は最近頭を使っていないんじゃないか」「衰えているんじゃないか」という危機感を持つ人が増えているのかもしれません。使ってないわけはないと思うんですが、使い方が変わってきているのでしょうかね。PCなどの道具にしても、使っている、というより、使われている、という感覚とか。高齢者人口の増大というのも関係あるかもしれませんが。
    やっぱり、ブログで文章を公にされるなど、自発的に、かつ他者からの反応を意識する活動ってのが大切なような気がします。そういう意味では、与えられる問題に答えていくだけのドリルって、どれだけ意味があるのかな?(かく言う私は、ドリルすらやっていないわけですが。。。)

  3. あ、ドリルは、う~んう~んと考えて答えなくちゃならない物は余り効果が無く、脊髄反射で答えられるようなものの方がいいらしいですよ。
    う~んう~んと考える方は、長文読解や普通の(根性悪な)クイズでやる方が効果的だそうです、むか~しの記憶なんで、出典は覚えていませんが。
    ちなみに、私は、穴空ける方のドリルは大好きですが、計算ドリルは大嫌いです(^^ゞ。

  4. himatさん、
    コメントありがとうございました。
    確かに、要は「ネーミングの妙」なのです。これを科学したのが記号論の考え方のようです。
    ちなみに、星野 克美著「文化・記号のマーケティング」という本で、この辺りのことを詳しく書いています。
     
    >>なによりも楽しみにしているので、毎日更新頑張ってくださいませ。
    >>ブログの毎日更新は是か非か問われたらこう答えます。『是非』と(^^ゞ。
    ありがとうございます。
    必ずしも毎日更新を必須ノルマにしていないのですが(先月も4日書かない日がありました)、出来る限り頑張ります。(^_^)ゞ

  5. ぴぴさん、
    コメントありがとうございました。
    確かに、消費者も洗練されてきて、色々な方法論が生まれてきたために、販売する側が巧みになってきたという面はありますね。
    >>自発的に、かつ他者からの反応を意識する活動ってのが大切なような気がします。
    おっしゃる通り、これは実感しています。

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