従来の「事業開発モデル」は、こんな感じでした。
①開発、営業、企画が一緒になって、製品を企画する
②1年程度の期間をかけて開発する
③製品を発表、出荷し、販売する(この時点で顧客にお披露目)
高度成長期まではこの方法が通用していました。しかし現代では、このモデルで製品を開発してもなかなか売れません。顧客のニーズとかけ離れてしまうことが多いためです。
現在必要とされるのは、「顧客開発モデル」。
①少人数の顧客開発チームが、顧客の課題と解決策を仮説として作り、ターゲットとなる顧客に徹底的に検証する
②その過程で、バリュープロポジションをチューンアップする(つまりどんどん変えていく)
③一通り検証できたら、最終製品の開発に投資し、販売していく
この「顧客開発」という方法論は、「リーンスタートアップ」(エリック・リース著)や、「アントレプレナーの教科書」(スティーブン・G・ブランク著)にも紹介されている方法論です。
ハイアールの張瑞敏CEOも、製品開発者に「君は製品を開発しているわけではなく、市場を開拓しているのだ」と教えています。同じ考え方ですね。
ただ、多くの日本企業のお客様に接していて私が感じるのは、この「製品開発前に、リアルな顧客に検証すること」が、一つの心理的な壁になっていて、なかなか実行できない人が意外と多いということです。
それはなぜでしょうか?
これまで日本の多くの企業は「モノつくり」にこだわってきました。職人気質で、徹底的に技術にこだわり、製品を作り上げて、それを顧客に披露する、というやり方です。
それはまるで、自分の鋭敏な味覚を信じ、こだわり抜いた食材を選び、腕を振るって最高の日本料理を振る舞う寡黙な板前を連想させます。
しかし今、企業に求められているのは、この寡黙な板前の方法論を変革すること。つまり、顧客がどんな食材を求めているかを常に顧客と対話して理解し、時に一緒に食材を選び、顧客と対話しながら料理を作ることなのです。
つまり、これまでのモノつくりの基本的なアプローチを変えていくことが必要なのです。
しかしものは考えようです。これまでのモノつくりで身につけた技術は、そのまま活かせます。開発の手順を変えるだけなのです。
思考方法を柔軟に変えれば、この方法論は実践できるはず。
もし「製品の開発前には、顧客に会わない」と考えていたら、その考え方を変える、小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?