製品開発を顧客始点で考えるアイリスオーヤマ


昨日のブログでアイリスオーヤマの事例をご紹介しました。

別の本で、「アイリスオーヤマ 一目瞭然の経営術」(三田村 蕗子著)があります。この本も、アイリスオーヤマに綿密な取材を行い、その経営の秘密に迫っています。

 

本書の冒頭で、LED事業参入の様子が描かれています。当初、2009年2月にアイリスオーヤマの小野さんという社員の方が、社長にLED事業着手を提案しました。大山社長は大乗り気ではないものの、特に反対もありませんでした。

この時はLED電球を中国メーカーからOEM調達し、試験を重ねて、当時の市価の半額(4980円)で発売されました。ただ当初はあまり売れませんでした。

風が吹いたのは、この後です。

—(以下、引用)—

2009年11月末、LED事業にあまり関心を見せていなかった大山社長は、突然小野氏にこう命じた。

「内製して、4万時間持つLED電球を作り、いまの半分の値段で売れ」

—(以上、引用)—-

まさに晴天の霹靂。いきなり市価の1/4で、しかも内製です。

リーダーの小野さんは早急に対策を立てて「半年後の2010年5月なら発売できます」と回答しますが、社長にひどく怒られ、「何がなんでも2ヶ月縮めて3月発売にしろ」と指示されます。

そもそも大きなチャレンジ。しかも4ヶ月間しかありません。

しかし、なぜ3月なのでしょうか?

本書ではこのように書かれています。

—(以上、引用)—

電球の売れる時期は1年のうち、3月、4月と12月に集中している。とりわけ、人々が新生活に突入し、引っ越しが多く、電球を買い替える機会が爆発的に増える3月を逃す手はない。この時期を逸すれば、消費者は「もう電球は替えてしまったから」と考え、その後の買い替え行動は12月まで期待できない。

「だったら3月に発売時期を早めるしかないでしょう」

これが大山社長の論理だ。

—(以上、引用)—-

大きなチャレンジ。しかも他社は100人体制のところ、アイリスオーヤマはわずか6名。トラブル続きで開発プロジェクトを進め、解決したのは発売予定日の3週間前。

2010年3月26日、小売価格2300〜2500円のLED電球8種類が発売されました。

さらに2010年11月には実売価格1980円のエコルクスを発売。アイリスオーヤマのシェアはグンと上がりました。

2011年3月の大震災の影響で、省エネ製品の需要が高まり、さらに成長していくことになります。

 

私たちは、「現体制で、製品がいつ開発できるか?」「コストがいくらかかり、価格がいくらで作れるか?」と考えがちです。

しかしアイリスオーヤマの場合、「お客様はいつ製品を必要としているか?」「いくらなら買ってくれるか?」から逆算して製品を開発しています。

製品開発を顧客始点で考えているアイリスオーヤマの考え方は、参考になるのではないでしょうか?