人工知能が大きな話題になっています。
医療診断など、判断の際に膨大なデータを必要とする分野での応用が期待されています。
NHKスペシャル『NEXT WORLD 私たちの未来 第1回 未来はどこまで予測できるのか』でも描かれていましたが、意外と有望とされているのが、人事評価のように主観的な判断を排除しなければならない分野である、と言われています。
人間が判断する際、好き嫌いの感情が入ってくる場合があります。
人事評価でも、自分に好意的な部下の評価を高くしたり、逆に成果を挙げていても自分と仲がよくない部下の評価を低くする、ということが起こりがちです。
つまり客観的な事実よりも、主観的な感覚が優先されて、判断される可能性があります。
「客観的な人事データがすべて揃い、人事評価基準が明確である」という前提条件さえクリアできれば、人工知能の方が、人間よりも客観的な人事評価ができる可能性がある、と言われています。
人工知能に人事評価されるのは、感情的に受け容れられない人たちも多いと思いますが、一方で「答えの有る問い」に迅速に回答できる技術が急速に進化しつつあることは事実です。
こんな時代、人間はどうあるべきなのでしょうか?
田坂広志著『知性を磨く 「スーパージェネラリスト」の時代』に、こんな言葉があります。
—(以下、p.15より引用)—
「知能」とは、「答えの有る問い」に対して、早く正しい答えを見出す能力。
「知性」とは、「答えの無い問い」に対して、その問いを、問い続ける能力。
—(以上、引用)—
考えてみると、人事評価とは、自分の経験でも「答えが無い問い」の世界です。
仮に客観的な人事データがすべて揃っていて、かつ人事評価基準が明確にあったとしても、「本当にこの評価ででよいのか?」と考え始めると、なかなか答えが出ません。
一見客観的な人事データに見えても、実は必ずしも人事評価に必要なすべての要素を100%網羅しているとは限りませんし、ルール上の人事評価基準以外にも大切な要素があることを、意識しているからです。
それが本当に客観的なものなの、主観ではないのか、判断に迷いながら、人事評価をしていくことが、実は大切なことなのではないかと思います。
このように考えると、「答えの有る問い」に迅速に回答できる人工知能の進化は、「答えが有る問いとは、何か?」、「答えが無い問いとは、何か?」を、改めて人間に問いかけているのかもしれません。
そして、「答えの無い問い」を問い続ける人間の知性を、改めて人間に深く問う時代に入りつつあるのではないかと思います。