「じっくり戦略を立てている時間がない!」という場合の処方箋


周到に戦略を立てることは非常に大切ですが、現実はなかなかそうはいきません。

まず、最近は、投資回収が求められる期間が短縮してきています。2-3ヶ月程度で成果を求められることも多くなっています。このような場合、戦略立案に1-2ヶ月もの時間をかけている余裕がありません。

また、世の中の変化が激しい昨今では、ますます複雑化していく環境の膨大な情報収集とその分析に時間をかけている間に、世の中そのものが変わってしまい、調査結果が過去のものとなってしまうこともよくあります。

従来の伝統的戦略手法では、

・市場を細かく定性的・定量的に分析し
・ターゲットとなるセグメントを決め
・そのセグメントのニーズをさらに細かく分析し
・競合他社を調査し
・自社のオファリングを定義し….
・……

というようなステップを踏んでいきます。

一つずつ順序だてて先に進めていくため、「演繹法的プロセス」ともいえます。

ただ、企業の現場での仕事を考えると、実際にはこのような手法が取れないのが現実です。

我々はどのようにすればよいのでしょうか?

 

当ブログでも何回か書きましたように(エントリーの一番最後にある参考リンク参照)、そのためには『仮説検証プロセス』が非常に有効です。

ITmediaエグゼクティブの記事『仕事の速い上司になる「仮説思考」のススメ』で、早稲田大学大学院商学研究科・内田和成教授の講演が紹介されています。

『仮説思考』を『仮説検証プロセス』と読み替えると、この記事は仮説検証で必要な勘所がよくまとまっていると思います。

特にキーとなる部分を引用します。

—(以下、引用)—

 「問題の答えを先に決めつけてしまえ」――内田氏は経営や仕事をスピードアップするコツとして「仮説思考」を勧める。問題を網羅的に解決しようとしたり、たくさんの情報を集めてから解決策を出すよりも、あらかじめ答えを決めて検証するやり方の方が仕事を効率的にできるという。

最初に答えを決めておいて、それに必要な部品を集めていけばいい。100を網羅的にやるより、もっともらしい2、3をやる。仮説思考は繰り返せば繰り返すほど経験がものをいうし、精度も上がる」

—(以上、引用)—

この記事にあるように、確かに、仕事が速くなるのは、ビジネスマンにとって非常に分かり易い、現実的な大きなメリットです。

一方で、仕事を速くするだけではなく、冒頭に紹介したビジネス上の課題を解決するという観点で、仮説検証プロセスを活用していきたいですね。

仮説検証プロセスは、冒頭で挙げた演繹法的プロセスではなく、帰納法的プロセスです。

帰納法とは、様々な事象から因果関係を導き出して、結論として原理を導き出す方法です。結論は推論ですので、必ずしも絶対真理を表すものではありません。

しかし、世の中が激しく変化している現代では、帰納法的手法(=仮説思考)は、近似解として非常に有効です。

内田教授が「繰り返せば精度も上がる」というのは、まさにその点を指しています。

 

仮説検証プロセスを行いPDCAサイクルを回しながら、本来の戦略的手法を適用していくとさらに効果的です。

むしろ、現在、世の中で事例として発表されている戦略的プロセスの成功事例は、仮説検証を通じて予め対象を絞って立案し、その後に戦略的手法で肉付けしているケースが非常に多いのではないでしょうか?

 

参考リンク
マーケティングの99.9%は仮説
山登りのパラダイム・波乗りのパラダイムと、仮説検証サイクル
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