無肥料・無農薬のアイガモ農法から学ぶ、仕事の流儀


NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」は非常に多くのことが学べるので、ビデオを録ってまとめて見ています。

この週末に見たのは、7/24に放送したアイガモ農法を実践されている古野隆雄さんの特集でした。(今回の番組の概要はNHKのHPに掲載されています)

簡単にご紹介すると、アイガモ農法は、水田にアイガモを放ち、雑草のタネや虫を食べさせ、アイガモのふんを肥料とする無肥料・無農薬の米作りの農法です。

古野さんは、家業の農家を継ぐかどうか悩んでいた時に、有吉佐和子著「複合汚染」を読んでショックを受け、農薬と化学肥料を使わない農業を行うと決めました。しかし、最初の10年間は一日中雑草取りばかりに追われ、収穫も通常の1/3程度で、月収3万円という時期もあったそうです。

水田に鯉を放ってみたところ鳥に食べられてしまい、水嵩を高くしてみても効果がなかったり、と様々な試行錯誤はなかなか結果に結びつきませんでした。

ある時、アイガモ農法を知り、試したところ確かに草を食べることが分かりましたが、野犬にアイガモが食べられてしまいました。

その後、野犬から守るバリアを作ったり、アイガモの飼育をしたり、アイガモに突付かれても育つ強い稲に切り替えたり、と、さらに試行錯誤を行った結果、収量は通常の15-30%増になり、草取りの手間も省くことが出来るようになりました。

また、「百姓百作」を実践しており、実際に60種類以上の作物を作っています。

沢山の種類を作ることで、どれかが外れても影響を最小限に抑えることができ、リスク分散できます。

実際、日照りが続いてなかなか田植えが出来ない時期、一方では太陽の陽を沢山浴びて甘味が十分に乗ったいいジャガイモが収穫できました。これは一種のポートフォリオ戦略ですね。

このような姿を見ていると、番組の中の「なるにまかせる」という古野さんの言葉は非常に印象的です。

これは、「なにもせずに放っておく」という意味ではなく、自分で出来ることは出来るだけやった上で、あとは人間がコントロールできない大いなる力に任せる、という意味であると思います。

実際、古野さんは、「乾田直まき」という今までの米作りの方法を一新する全く新しい試みにも取り組んでいますが、アイガモが食べない雑草の「ヒエ」が大量に発生してしまい、現在のところ失敗の連続です。

しかし、古野さんはこのような失敗をチャンスとして捉えます。

「チャンスなんですよ。ヒエが生えるということは。自分の認識の世界にないところを体験することで、超えることができる」

膨大な試行錯誤の積み重ねの末に、大きなブレークスルーがあるということですね。

番組の中で、どんな時も微笑みを絶やさない古野さんの姿が、強く印象に残りました。

無肥料・無農薬を実践している人は他にも数人のお話を聴いたことがありますが、どなたも最初の10年間は全く収穫がなく、周りから様々な中傷や妨害を受けています。古野さんの微笑からは、このような中でも信念を貫き通した、人間としての芯の強さを感じます。

私達は現在の仕事のノルマを理由に、このような試行錯誤を避けがちですが、古野さん自身、自営農家として自分自身の生活がかかっている訳で、私達と環境は変わりません。むしろ厳しい環境かもしれません。

私達も学べるところが大いにあるのではないかと思います。

無肥料・無農薬のアイガモ農法から学ぶ、仕事の流儀」への2件のフィードバック

  1. 2006年12月7日放送で木村秋則さんのことが紹介されていました。
    http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/061207/index.html
    木村さんには2回ほどお会いしたことがあります。当時すでに有名人で、自然農法家のカリスマのように言われていましたが、ご本人は全く偉ぶらず、飄々とした風情で淡々と自然栽培についてお話してくださいました。1個500円以上もするりんごですが、木村さんのご努力を思うと決して高い金額ではないですね。そのりんご、ささっと布で拭いて
    ぱくっと一口食べたとき、その香があたり一面にあふれました。香もよいですが、その味の濃さ、単に甘ったるいのではなく野性味を残した甘さがあり、素晴らしいです。自然農法は農の芸術ではないでしょうか?

  2. こぶらーさん、
    コメントありがとうございます。
    木村さんもNHKのプロフェッショナルに出ていたのですね。
    偶然ですが、実は木村さんのリンゴ、私も何回か食べたことがあります。1個500円はとても高いですが、無肥料無農薬でそのまま皮ごと食べられますし、この上なく美味しいですね。今まで木村さん以上のリンコには出会ったことがありません。
    木村さんの壮絶な戦いの日々のことを思うと、このリンゴ自体が、まさに芸術品ですね。

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