「達成しやすい目標しか設定しないので、学びが得られない」


私は講演で、いつも「仮説検証の学びの大切さ」をお伝えしていますが、ある企業様の講演で、質疑時間にこんなご質問をいただきました。

「毎期、定量的な結果が査定されるので、どうしても達成しやすい目標を設定しがちです。これだと仮説検証サイクルからの学びも得にくいように感じています。評価という点で、ご提言はあるでしょうか?」

ご質問をいただいた点は、まさにPDCAサイクルの課題です。PDCAサイクルでは、全社目標を細かく分けて、社員毎に個人目標を与え、達成度を把握します。多くの場合、この達成度と給与を連動させます。誰でも給与が下がるのはイヤなので、目標は低めに設定します。

つまりこの仕組みでは、誰も失敗のリスクを取らないようになってしまうのです。

しかし仮説検証の仕組みは、PDCAだけではありません。他にも様々な仕組みがあります。

そこでヒントになるのが、50年前にこの問題を考えたインテル創業メンバーのアンディ・グローブです。

グローブは「インテルを偉大な企業にしたい」と考えて経営理論を徹底的に学びましたが、当時の経営理論の主流派は徹底管理する方法が中心。まさに質問された方と同じ状況でした。

「従来の経営管理手法は、役立たない」と考えたグローブは、さらに当時登場したばかりの行動経済学や認知心理学まで学びました。そんな中で「自己実現の欲求」を提唱した心理学者マズローの考え方に出会い、心酔していました。

インテルの経営幹部だったグローブは、誰に言われなくても常に自分の能力ギリギリの限界に挑戦し、ベストの結果を出す人がいることに気がついていました。まさにマズローが提唱した「自己実現の欲求」を日々の仕事で実践する人たちです。一方でグローブは、普通の人々はそんなことはなかなかやろうとしないことも理解していました。

そこで「普通の人々から最大の成果を引き出すには、背伸びした目標が有効だ」と考えました。そうして編み出したのが、OKRという手法です。(Objective, Key Resultの略です)

OKRでは、PDCAにありがちな「達成しやすい目標設定して100%達成を目指す」のではなく、四半期毎に「背伸びした目標設定をして、50%程度の達成」を目指し、毎週進捗をチェックしていきます。さらに結果は給与と連動させません。

こうすれば、社員は自らストレッチした目標を設定して、背伸びして思う存分挑戦し、結果から学ぶようになります。

OKRは創業2年目のグーグルで全社導入され、その後は毎四半期実施されています。

さらにツイッター、リンクトイン、オラクルなどのシリコンバレー企業に留まらず、BMW、ディズニー、サムソン、エクソンなどの大企業でも活用されており、日本企業でも、花王などの大企業が本格導入を始めています。

私が読んだ限りでOKRの手法が一番まとまっているのは、『Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法OKR』(ジョン・ドーア著、日本経済新聞出版)です。ご興味ある方はぜひご一読ください。

ちなみに先月出版した拙著『世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた』では、15冊目に紹介しています。

   

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