連載6回目です。
【ありがちな勘違い】相手を立てようとすると、主張が通らない
海外の人と交渉する際、相手の質問や反論に、私たちは次のように答えがちです。
「おっしゃっていることは分かります」
「なるほど、そのとおりですね」
日本人同士ならば、相手の顔を立てようとして、あからさまな否定を避けるためにこのような言い方になりがちです。
しかし海外では、このような言い方だと、「一度同意したのに前言撤回するのか?」という話になったりします。
実際、私自も20代の頃に米国人と交渉していた際に、これを経験しました。
話がこじれてしまい、その後、上司経由で交渉しても、
「永井は一度、『agreeした』と言った。その前提で進めている」
と一蹴されたことがあります。
【どうしてそうなる?】agreeは注意して使う必要あり
“agree”は意外に強い意味を持っています。
相手の主張に同意していることを意味するのです。
私たちは「おっしゃっていることはよくわかりますが、…」というニュアンスの積もりで、”I agree what you said, but….”と言ってしまい勝ちです。しかしbutを付けていても、相手には「あなたのおっしゃっていることに同意します」と受け取られるのです。
agreeを使う場面は、注意が必要です。
【こうしましょう】「意見」と「相手の人格」は分けて考える
「意見」と「相手の人格」は分けて考えることが必要です。
一般に、私たち日本人は「意見の否定」=「人格の否定」と感じてしまがちです。そして意見を否定されると、人格否定されたように思い、落ち込んでしまいます。
しかし実際には、意見の否定=人格の否定ではありません。両者は区別して考えるべきなのです。
議論をする際には、何に同意しているかを常に明確にすることが重要です。
そして、もし相手の答えがこちらの期待とは違うのであれば、明確に言うことです。
たとえば、
“We were hoping for a different answer. I understand that you’ve tried to …, but…”
(私たちはそれとは別の答えが必要です。あなたが….をして下さっていることは理解しています。しかし…)
このように、最初に明確に別の答えを必要としていることを伝え、相手がこちらの問題解決に際して払ってくれた努力については、”I understand that…”で理解を示すことが必要です。
同意していないことを明確にすることは重要ですが、相手に対する敬意は忘れてはならないのです。
【参考までに】何ごとも、過ぎたりは及ばざるがごとし
中には、逆の例もあります。
「はっきりとYes/Noを主張しなければならない」と考えてしまい、逆に強く言い過ぎることです。
実は日本人がYes/Noを言い過ぎて、提案を全否定され、「意見と人格は別」とは言えども、人格も全否定されたように感じて、傷ついている米国人もいます。
米国人はYes/Noの意見ははっきり持ってはいますが、実際には、YesやNoをはっきりとストレートに言う人は、意外と少ないのです。
たとえば、意見に反対であっても、
「悪くないね。さらにこのようにできたら、もっとよくなると思う」
というような言い方で、相手の立場を尊重した言い方をします。
まさに「過ぎたるは及ばざるがごとし」ですね。
(もちろん、とってもきつく”Yes/No”をいう米国人も中にはいます。人それぞれです)
これについては、明日、ご紹介したいと思います。
【補足】
本記事は、日本IBM様が改善活動の成果物として公開している「テレコン英会話小冊子」に掲載されていたp.17-18の文例を参考に、その背景を掘り下げてご紹介しました。