ある講演でビジネススキルについてお話ししました。Q&Aタイムに、若い方からこんな質問をいただきました。
「仕事で企画や提案をしていく必要性は、よくわかりました。
しかし、日々の仕事が忙しく、企画提案する時間がないのが現実です。
何かアドバイスはありませんか?」
私も20代の頃は、実は全く同じことで悩んでいました。
とにかく仕事が忙しく、時間が足りないのですよね。
そこで当時の私は、「まず仕事のスピードを上げて、誰よりも早く仕上げられるようにしよう」と目標を立てて仕事をしていました。
とはいっても、大したことではありません。とても小さなことばかりです。
たとえばパソコンで文書作成をするために、ショートカットキーをいくつか覚えました。
コピペの作業で10秒かけて
「範囲選択→編集を選んでクリック→コピーを選んでクリック→カーソル移動→編集を選んでクリック→ペーストを選んでクリック」
とやるよりも、2秒で
「範囲選択→Ctrl-C→カーソル移動→Ctrl+V」
とやれば8秒の節約。
1つのメールでこの反復作業が8回あると1分の節約。
1日で20件のメールを書くと、1日で20分の節約。
結構大きな差になりますよね。
他にも仕事を速く進めるノウハウは沢山あります。小さなことであって、積み重ねると意外と大きな差になります。
数年間続けているうちに、周囲の人と比べると、たとえば資料を半分の時間で作れるようになりました。
このように仕事のスピードがあがると、より速く仕事を片づけることができ、余った時間を、企画に使うことができます。
他にも、小さな自分の締切を設定する方法もあります。2014/6/24の日本経済新聞の記事「締め切り、小刻みに設定 漫画家・弘兼憲史さんの時間管理術」で弘兼憲史さんがおっしゃっていたことが、参考になります。
—(以下、引用)—
当然、(原稿の)締め切りは守らなくてはならない。そこで僕は「小さな締め切り」を自分で決めるんです。
…例えば今3時で、取りかかっているページが1時間で終わりそうなら「4時」、次のページは「4時45分」、その次は「6時」、というように。自分で設けた締め切りを守るという目標に集中するのです。自分で締め切りを設定することで、ゲーム感覚が生まれ、やる気を高めることができる。
….こんな生活を続けるうちに何かしら経験が積み重なっていく。目の前のことを一生懸命やり続けることで経験値が積み上がり、仕事の質も高めていけるのではないかと思っています。
—(以上、引用)—-
「目の前の仕事をやり続ける」ことが積み重なって、仕事力が上がっていきます。
しかし私は30代中頃になってから、「仕事のスピードを上げるだけでは、どうも越えられない壁があるようだ」と感じてきました。
実は仕事には2種類あります。
「やるべき仕事」と「やらなくてもいい仕事」です。
「やらなくてもいい仕事」を一生懸命に速くこなしても意味はありません。
むしろ、たとえゆっくりであっても「やるべき仕事」だけに集中した方がいいことが多いのです。
これは仕事のスピードの問題ではないのですよね。
他人から言われたばかりをやっている状態に陥ると、このパターンになりがちです。
ですので、やはり自分で企画・提案していくことはとても大切なのです。
そこで私は30代中頃になってからは、意図的に「やるべき仕事」を考える時間を増やすようにしました。調べ物、人間関係作り、スキル向上等に時間を配分し、企画・提案に繋げていきました。しかしこのようなことができるのも、「仕事のスピードを上げる」ことが前提です。
ですので、
・まずは、目の前の仕事を速く仕上げるような、仕事力を付ける
・空いた時間を、企画・提案に使っていく
・そして「やるべき仕事」(自分がやりたい仕事)に徐々にシフトしていく
このように取り組むことが必要なのかな、と思います。