ついにブルーボトルコーヒーの海外初出店となる店舗が、清澄白河にオープンしました。このタイミングで、創業者のジェームス・フリーマンCEOも来日されました。
そのフリーマンさんに、Business Media誠が取材した記事が掲載されています。
これまでのコーヒーのサードウェイブ本で紹介されていたフリーマンさん。本記事は最新メッセージでとても参考になりましたので、ご紹介したいと思います。
—(以下、引用)—
米国での事業を海外に拡大するのがゴールだったわけではなく、サービス精神やホスピタリティの高い日本に進出することでBlue Bottle Coffeeのビジネスが発展すると考えていました。つまり、Blue Bottle Coffeeにとっては日本ありきだったのです。その日本という国がたまたま海外だったわけで、海外戦略のために日本に進出してきたということではありません。
—(以上、引用)—
フリーマンさんが日本に古くからある喫茶文化に大きく影響されてブルーボトルを始めた、という話しは有名です。
このフリーマンさんの言葉からも、日本の喫茶文化は、ブルーボトルのアイデンティティの一部であることがうかがえます。
—(以下、引用)—
温度、酸味、焙煎や抽出などに関する細かなデータを取っています。こうしたデータに基づき、一杯一杯コーヒーをおいしく入れるのにこだわった仕組みを次々と店舗に導入しています。日本でここまで厳密にやっているコーヒーショップはまだ少ないので、サンフランシスコの文化を持つBlue Bottle Coffeeの良さを広めていきたいです。
—(以上、引用)—
ここ(特に太字)を読んで「なるほど!」と思いました。
ブルーボトルは、コーヒーのサードウェイブという流れを象徴する店です。
コーヒーのサードウェイブとは何か?
コーヒー豆は農産物です。他の農産物同様に、産地・種類・栽培方法などによって色々な個性があります。しかしともすると、これまではそのような個性はあまり重視されず、むしろ味を一定品質に保つために複数の豆をブレンドしたり、深煎りして豆の個性を消していました。
そこでコーヒー豆の個性を重視し、「シングルオリジン」というコーヒー豆単品の個性を活かしたコーヒーを提供していこう、という考え方が、コーヒーのサードウェイブです。「サードウェイブ=浅煎り」とも言われますが、豆の個性を活かした味わいにするために浅煎りになるのですね。
様々な個性のコーヒー豆があり、焙煎や抽出も様々な方法があるので、組合せは千差万別になります。
そこでデータを取ることが必要になります。かつてコンピューターが普及していなかった時代は、恐らくこのような情報を職人が感覚的に身につけたり、メモに取っていたのでしょう。しかしこの方法では、網羅できるコーヒー豆の種類は限定的です。
シングルオリジンでデータ量が爆発的に増えるので、必然的に細かにデータを取り、それを共有しあうことになります。言い換えると、コーヒーのサードウェイブはITが支えている、という見方もできます。
—(以下、引用)—
スペースが空いているから出店するのではなく、その環境がBlue Bottle Coffeeらしさを表現できるかどうかが重要です。厳選して検討していきたいです。
……ビジネスありきで始めたわけではありません。自分が本当に好きなコーヒーを飲みたいと思って、店を開業しました。
—(以上、引用)—
拙著『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』でも、「お客様に価値を提供するには、自分らしさを徹底的に考えることが必要」ということをご提案していますが、まさにフリーマンさんもそうおっしゃっています。
—(以下、引用)—
日本は伝統的な職人気質があり、コーヒーに対するオリジナルの技法やナレッジをその人だけが知っているという特徴があります。一方で、米国は直接農園に出向いてコーヒー豆を買い付けてくるといった調達の面で進んでいます。また、焙煎の温度やコーヒー一杯あたりの重さ、量など細かい数値データを蓄積、分析している点も優れています。この両者の良いところを合わせ持ったのがBlue Bottle Coffeeだと考えています。
—(以上、引用)—
この部分も新たな気づきでした。
日本の強み:日本は伝統的な職人気質
米国の強み:コーヒー農園からの直接調達+データ蓄積&分析
ブルーボトルの強み=日本の強み+米国の強み
ということですね。
新たな価値は、異なる複数のモノが融合することで生まれるのだ、という1つの事例が、ブルーボトルなのではないかと思いました。