ビジネスでは、私たちはつい「価格を下げれば顧客は振り向いてくれるだろう」と思いがちです。
しかし消費者の私たちは、安いだけでは決してモノを買おうとしません。
私は講演で参加された方々に「どうしても欲しいと思ってモノを買った時、決め手は何でしたか?」とお尋ねします。ほとんどの場合、参加者からは「利便性」「価値観」「お気に入り」などが理由として挙げられます。
中には1/4ほど「価格が安かったから」を理由に挙げる方もおられます。しかしその際には必ず「利便性」「価値観」「お気に入り」といった理由と組み合わさっています。
つまり私たちは、自分が消費者としてお金を出す場合のことを振り返ると明らかな通り、満足できないものには、安くてもお金を出しません。
しかしビジネスの世界に戻ると、このことをつい忘れがちです。
2015/3/5の日本経済新聞の記事『安さにも「戦略」不可欠 好調組は付加価値で勝負』でも、同じことが書かれています。
—(以下、引用)—
単純な価格の見直しでは顧客は振り向いてくれない。戦略性のある「安さ」が求められている。
……その中で好調なのは鳥貴族だ。
主力メニューの焼き鳥の原材料には国産鶏を使用。串刺しなど店内調理を維持することでおいしさを守る。一方でメニューはできるだけ増やさず、お通しも出さない。この結果、料理だけでなく、「ザ・プレミアム・モルツ」(中)などメニューはすべて280円。「安くてうまい」という理由から若者から圧倒的な支持を集めている。
……集客増へ値下げは手っ取り早いが、需要の先食いという面もあり、質を伴わないと効果は続かない。低・中価格帯でも個性のない商品には消費者が振り向かないボリュームゾーン不況の時代、値下げにも不断のイノベーションが欠かせない。
—(以上、引用)—
価格勝負をする際にも、単に安いだけではなく、さらに付加価値も求められているのです。