売上や利益だけを管理しても企業は成長しない。星野リゾートから学ぶ「ノウハウの数値化」と「顧客満足度の数値化と共有」


多くの企業は、売上や利益目標を設定し、日々邁進しています。

中には、今期の売上達成が危うくなると、今期売上に直結しないあらゆる社内活動を禁止し、セールス活動を最優先する企業もあります。

この是非を考える上で、ハーバードビジネスレビュー2015年2月号に、星野リゾート代表の星野佳路さんが寄稿された論文「数値で管理すべきは結果よりプロセスである」は、とても参考になります。

—(以下、引用)—

私は計画が嫌いである。

…予算を策定し、目標必達と言い始めるとやっかいなのだ。

…あらゆる場面で、物事が計画通りに進むことなどほとんどない。

…重要なことは、ある局面で計画通りにやることが本当に正しいのかどうか、判断できる能力を身につけることである。

…目標達成のための計画は「目安」に留め、走りながら変えていくことが大事になる。計画を進めながら、毎日でも変えていくことが理想である。思考停止に陥らず行動できれば、計画も意味を持つだろう。

—(以上、引用)—

 

「計画は、まず計画通りには進むことはない」ということは、多くの方々が経験されていると思います。

ではどうすればいいのか?

星野リゾートでは「ノウハウの数値化」を図っています。

—(以下、引用)—

…社員に、その日いつどこで何をやっていたかを入力してもらうことで、すべての施設に関するサービスチームのマルチタスクのレベルや効率が、レーダーチャートになって出てくる。ノウハウが年々進化していれば、たとえ売上や件数が伸びていなくても心配ない。件数や売上は、後からついてくるからだ。

—(以上、引用)—

 

星野リゾートで取り組むのは、ノウハウの数値化だけに留まりません。

顧客満足度の数値化と共有も図っています。

—(以下、引用)—

……スタッフはだれでも施設の端末から、不満に感じている点、評価されている点を、客観的なデータとして把握することができる。

…利益率などは毎月の決算報告で把握できるが、そこに満足度やノウハウの数字は出てこない。そのため、この部分の数値化は非常に大切だと感じている。

…ノウハウの進化こそ私たちが数値化し、目標設定しなければならない部分である。

—(以上、引用)—

 

ノウハウの進化は、顧客満足度向上に繋がります。そしてノウハウの進化は、社員一人一人が考え、実現しなければならないものです。

だから、社員一人一人が、自分たちのお客様の満足度を把握でき、自分のノウハウをいかに進化させるべきかを自分自身で考えるようにする。素晴らしい仕組みだと思います。

では、これは経営にはどのように繋がるのでしょうか?

星野さんは、その点についても言及しておられます。

—(以下、引用)—

 利益や売上は、競争力の結果である。そして、ノウハウの高さこそ競争力の源泉であろう。だからこそ、ノウハウを数値化し日々マネジメントしていくことが、企業の成長にとって必要なのだ。

 だとすれば、本来は売上や利益や件数などを目標にするのではなく、ノウハウを進化させて、競争力を高めることを目標にすべきだ。それを数値化し、目に見える目標として設定することが、企業の成長に繋がるのだ。

—(以上、引用)—

 

つまり、

(1)ノウハウ進化→(2)顧客満足度向上→(3)競争力向上→(4)売上/利益向上

と考えれば、最初の2つをキッチリ数値化して把握し、(1)のノウハウ進化をしっかり管理すればいい。

至極当たり前のことですよね。

ともすると、(1)と(2)を把握せずに、(4)の結果だけに集中している企業は、冒頭の例にあるように、短期志向に陥ってしまい、長期的に見ると低迷しがちです。

星野リゾート自身が、「リゾート運営の達人になる」というビジョンを掲げておられます。まさにノウハウ目標がビジョンになっています。

 

本論文を拝読し、改めて、私自身、企業の「ノウハウ進化」に貢献できるように、日々邁進したいと思いました。